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November 2021


当会が所有する登録商標の無断使用などについては、このブログで何度も警告をし、一部の方にはヤフオク質問欄などから直接警告をしてきました。しかしいまだにこれら登録商標に対する商標権侵害や不正競争防止法違反をしている人がいます。

 

そこでこの度、その内の一人に対して内容証明郵便でこれら不法行為を直ちに停止することと当会の損害を賠償することを求めました。これは裁判の準備的手続きで、指定期限内に満足な回答がなければ裁判所に訴状を提出し、裁判が始まります。

 

この人が行った不法行為は3年間で約850件あり、その約半数は登録商標そのものか、極似商標を無断使用した商標権侵害ですから、裁判でも不法行為は間違いなく認定されるでしょう。内容証明では850件のうち、使用頻度の低い商標などを除いた700件余について当会の損害約300万円弱を請求しています。

 

3年分の販売画像データからこの人の違法販売を抽出し、商標毎にまとめる作業は非常に多くの手間と時間が掛かります。また700件ものデータを点検し、証拠にして訴状を作成する弁護士も同様です。したがって弁護士料も通常の裁判よりはるかに高額になります。

 

当会は損害賠償を求める側ですし、その半数以上は確実に勝訴できるものですが、被告側はたとえ全面勝訴しても当会から受け取る金品は全くありません。被告が弁護士を依頼するとしても、その弁護士も700件もの証拠をチェックするわけですから膨大な手間と時間が掛かります。その上勝訴しても相手からもらえる金員は全くないという状況ですから、当然相当高額な着手金を要求されることでしょう。

 

この種の事件で裁判になったら被告は違法販売で得た利益の何倍もの、とんでもない出費を強いられることを覚悟しなければなりません。その上悪質な場合には刑事告訴される可能性もあります。

 

なお、この内容証明郵便は相手が受け取らなかったために返送されていますが、裁判手続き上、相手が内容証明郵便を受け取らなくてもなんの支障もありません。むしろ受け取らなかったことで違法行為を認識していたとして、裁判上、大きな不利になります。また念のため、内容証明のコピーを特定記録郵便として出しており、こちらは相手に到着しています。

 

内容証明郵便が返送されたことで相手がこちらの要求に答える意思のないことが明確になったわけですから、訴状の準備に入り、早ければ年内にも裁判が始まります。

 

またこの人以外にも当会の登録商標に対して商標権侵害や不正競争を行った方が多数いますが、これらの方に対しても順次裁判をしていく予定です。


splendens moonga resized
 H. splendens 'Moonga' ゴリゴリで真っ赤なスプレンデンス


 多肉植物の販売は1960年代ころまではほとんどが専門業者の店頭販売かカタログ販売であった。それが次第に日本多肉植物の会など、愛好家団体の集会における交換会(セリ会)に移行し、専門業者ではなく、一般愛好家が売買の中心になってきた。

 

 これら一般愛好家の販売は一人当たりの販売額は小さいが、人数が多いので流通量()全体としてはおそらく専門業者のそれより大きいのではないかと推定される。

 

 さらに最近ではハオルシアを含む多肉植物の売買の大部分がヤフオクやメルカリなどのネットオ-クション、あるいはヤフーショッピングや楽天市場などに移行している。ここで売買しているのは大部分が一般の愛好家で、中には業者顔負けの量を販売するセミプロと呼ばれる人もいる。

 

 また多肉植物以外の一般的商品、バッグや小物、電化製品、パソコン関係の機器などでは海外、特に中国のアリババなどで格安に仕入れてアマゾンで売る、という商売が盛んであるが、ハオルシアではアリババで仕入れてヤフオクで売るというルートが中心である。

 

 ところがそのような人たちの大部分はハオルシアのことはほとんど知らないのに、単に儲かりそうだからという理由で参入した全くの素人達である。全くの素人なので園芸的な知識がほとんどなく、基本的な概念も学習していないので、とんでもない名前で売られる商品も多い。

 

 そこでここでは園芸におけるもっとも基本的な概念である「品種」について改めて解説する。

 

 品種(cultivar)とは種の園芸的な下位区分で、分類学的な区分ではおおむね"forma”に相当する。自然界に存在する変異個体群でも、園芸的に扱う時は品種として扱う。

 

品種とはどんなものかは世界的に共通の認識が確立している。すなわち品種とは何らかの特性を共有する種内変異群で、その特性が明瞭で、均一で、安定している集合とされる(国際栽培植物命名規約 2 定義 22.2)。

 

また日本の種苗法でも品種登録の要件として第3条で、

1 品種登録出願前に日本国内又は外国において公然知られた他の品種と特性の全部又は一部によって明確に区別されること(区別性 distinction)、

2 同一の繁殖の段階に属する植物体のすべてが特性の全部において十分に類似していること(均一性 uniformity)、

3 繰り返し繁殖させた後においても特性の全部が変化しないこと(安定性 stability)、 と規定している(DUS基準)

 

もう少し詳しく説明すると、

1 特性が明瞭とは類似の他の集合(品種)や個体と何らかの特性により明瞭に区別できることであり、区別できる基準は一般人である。つまり顕微鏡やDNA鑑定でしか区別できないものはこの基準に当てはまらない。

 

2 均一性とはその集団のすべての個体が上記1の特性において十分に類似していることである。

 

3 安定性とは繁殖後でも上記1の特性が維持されることである。斑入り品種において繁殖苗に斑抜け個体が出現しても、斑入り個体も繁殖可能ならこの要件は満たされる。

 

以上のように品種の要件として最も基本的なものは、類似の他品斑や他個体から明瞭に区別できるかという点である。そしてこの点に関してもっとも簡潔明瞭な基準はラベルなしでも区別(識別)できるかということである。

 

たとえば「阿房宮」と「光鳳」は非常によく似ているが、互いに交配できるので別個体である(ハオルシアは自家不和合性なので同一個体(クロン)間では交配できない)。しかし一般人には全く識別できないので品種的には同一品種である。この場合、「光鳳」はクロン名(個体名)となる。

 

クロン名は品種の下位区分名で品種内の遺伝的系統を示し、ランのグレックス“Grex”に似た概念である。組織培養ではさらに同一クロン内の細胞系統を示す〝Cell Line(細胞系)という概念もある。

 

また例えば「紫オブト」ではさまざまな名前が付けられているが、そのほとんどはラベルなしでは識別不能なので品種とは言えず、これらの名前もクロン名である。識別可能なのは大粒の「仏頭玉」や非常に大型の「天涯オブト」などの個体と、黒肌で硬質透明な窓の「恋紫」(金子特黒オブト)くらいである。

 

さらにオブト錦には様々な名前の商品が売られているが、「花水晶」など非常に特徴のある個体や、「白蛇伝」「白銀の露」などのノリ斑を除くとほとんどの商品はラベルなしでは区別がつかない。つまり様々な名前で売られているオブト錦は品種的にはほとんどが「オブト錦」という同一品種であり、現在売られている名前は品種名ではなくクロン名である。

 

クロン名は遺伝的系統を示すので交配時には有用であり、現在付けられている商品名(クロン名)を廃棄する必要はない。しかし販売時には「オブト錦」という一般人が区別できる品種名をクロン名に併記しないと消費者の誤認を招く可能性がある。

 

オブト錦では交配によりさまざまな斑入りが作出されており、識別が難しくなっている。クロンが少ないときは一定の特徴で識別できても、交配が進んで中間型が多数作られると識別不能となり、すべて「オブト錦」となってしまう。

 

例えばオブト類の斑入りが非常に少ない時に発表された「残雪オブト錦」はその時点では、類似個体がなかったので品種名であったが、その後非常に多くの類似のオブト錦が発表され、現在ではラベルなしでこれを他のオブト錦と識別することは不可能である。

 

つまり当初は品種名であっても類似個体が多数作出されてそれらと識別不可能となるとクロン名となってしまい、品種としては類似個体全体が「オブト錦」ということになる。

 

オブト錦の中で現時点で一般的な「オブト錦」と識別可能なのはマリンや京の花火(花火)など表皮が薄く、鋸歯の少ないグループと、安定した赤斑のグループで、それぞれ「マリン」、「オブト錦赤斑」と言う品種名が付けられる。他の大部分は品種としては単に「オブト錦」である。ただし「マリン」は今後さらに「オブト錦」と交配が進み、最終的には「オブト錦」に吸収されてしまうと見られる。

 

また「桜水晶錦」(エメラルドLED錦) と「翠雲錦」はともに葉や表皮が非常に薄く、鋸歯も多い点などから「オブト錦」とは識別可能で別品種と見られる。ただし「桜水晶錦」と「翠雲錦」は識別が難しく、同一品種の可能性がある。

 

先に述べたように一般人にはクロン名だけでは商品を識別することは不可能なので、販売時には一般人にも識別できる名前である品種名を併記しないと消費者が商品の品質を誤認する危険性がある。

 

例えば弁天錦(広瀬オブト錦、別系オブト錦)の場合は「オブト錦(弁天錦)」、あるいは 弁天錦「オブト錦」 などと表示すればこの商品が「オブト錦」の1型(クロン)であることが明示される。

 

品種名は本来一重引用符(‘)で前後を囲む規定だが、日本語では一重引用符はなじみが薄く、見落とし易いので代わりにカギ括弧で囲むことを推奨する。

 

品種名は類似他品種などと識別可能なので、それが併記してあればなじみのない、あるいは新しいクロン名の商品でも消費者はカギ括弧内の品種名を頼りに購入の是非を検討できる。逆にクロン名だけで販売すると不正競争防止法の誤認惹起に問われる可能性があるので注意していただきたい。


 

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