この裁判は西雅基氏およびカクタスニシ株式会社(以下西氏らという)が、当会機関誌ハオルシア研究誌上に掲載された林雅彦の写真15点を西氏らのホームページ(品種名カタログ等)に無断で使用したとして、使用料相当額の損害賠償を求めて写真の撮影者である林雅彦により提起されたものである。
途中で裁判官が転勤で交代したり、コロナ騒動で裁判日程が延期されたことなどで、裁判開始からおよそ2年近くかかったが、著作物の使用に『相応の使用料』は支払われるべきだという裁判官の見解に沿って、著作権侵害があったことを前提とした和解交渉が進められた。
最終的に和解金50万円、和解内容の公表は自由にできるということで和解が成立した。またもちろん、これら写真は西氏らのホームページからすべて削除し、今後は一切使わないことがこの和解の前提となっている。
裁判開始当初は8枚が無断使用として見つかっていたが、その後精査していくとさらに7枚の無断使用が見つかり、合計15枚となった。西氏らは写真の周囲をトリミングして背景を除き、無断使用がわからないように細工しており、写真をよく見比べないとわからないものが多い。写真の細工は無断使用を意識していたと言わざるを得ない。
西氏らのホームページには「写真の無断使用を禁じる」と謳っているのに、自らは他人の写真を勝手に使っていたわけである。さらに当方の調査では西氏らがハオルシア研究誌だけでなく、海外サイトの写真まで自分のホームページに勝手に使っていたことが判明している。
これら15枚の写真は、栽培名人が最高の状態に育て上げた時点のものを、林雅彦が独自の知見と技術に基づき撮影したものであり、誰でも簡単に再現、撮影できるものではない。そうであるからこそ西氏らはこれら写真の良い代替写真を入手できず、ハオルシア研究誌の写真を無断で使ったものと考えられる。しかしこれら写真の著作権侵害があったことを前提とする和解が実現したので、この点については和解内容を評価している。
以上のように、かなりの金額の『相応な使用料』の支払いを受けることで決着したので、林の実質勝訴と言える。
なお、西氏らが林に支払う和解金は50万円であるが、西氏らはその他に代理人弁護士に着手金及び成功報酬を支払わなければならない。和解金と合わせると西氏らは少なくとも100万円以上の出費を余儀なくされたと推定される。