ハオルシアは葉の紋様や付属物(鋸歯や結節)が全植物中、もっとも多様な植物である。そして多くのグループでは葉先や葉の上面に窓と呼ばれる透明部分のあることも大きな特徴で、中には葉の半分以上が窓である様な個体もある。この透明な窓とそこに形成される紋様や付属物とが相まって、非常に多彩で美しい植物となっている。
一方、あまり認識されていないが、ハオルシアは多肉植物では非常に珍しい陰性植物で、室内などの弱光下でも栽培できる数少ない多肉植物である。多肉植物は一般に成長は遅いが丈夫で、旅行などでしばらく水をやらなくても全く心配ないなどの長所がある。非常に丈夫であまり手間がかからないという長所と、室内でも育てられるという長所を生かせば、セントポーリアをしのぐ室内園芸の女王となれる可能性があると見ている。
ただしハオルシアは陰性植物と言っても、グループや種により、その耐陰性(日陰に耐えて育つ能力)には大きな差があり、これをよく理解していないとうまく育てられない。
玉扇や万象、あるいはピクタやスプレンデンスなど、大部分のレツサ系はおおむね8,000 ~10,000ルクス、上限12,000ルクス程度の強度の光で栽培すると締まって形よく作れる。
例外はコレクタとスプリングで、コレクタはおおむね6,000~8,000ルクス程度が適当で、これ以上強い光ではよほど根が張っていないと日焼けを起こして成長が止まってしまう。
スプリングはさらに耐陰性が強く、4~5000ルクスもあれば十分育つ。4000ルクスと言えば明るい居室の明るさだから、室内でも十分育てられるはずである。反対に6000ルクス以上ではほとんど成長しないか、成長しても小型化してしまう。
オブト系とシンビ系は大部分のレツサ系と同じく、8000ルクスから10000ルクス程度の光が最も適しているようである。ただオブト系はシンビ系より耐陰性が強く、6000ルクスでもあまり徒長することなく育つが、宝草錦や京の花錦などシンビ系は6000ルクスでは徒長してだらしなくなってしまう。
その他大部分のレース系はおおむねやや弱光線の6000~8000ルクス程度が適しているようである。レース系は8000ルクス以上だと葉先が枯れて見苦しくなってしまう。さらにディモルファとかアグニス、ペールマニアエなどの難物は強光にすると弱って死んでしまうことが多いので、要注意である。
室内栽培できる多肉植物というのは、今後園芸界の大きな方向性として大いに注目されるのだが、陰性植物であるハオルシアでも一般的な明るい居室の明るさである4000ルクスというのは、結構厳しい条件である。丈夫でよく室内栽培される宝草錦や京の華錦、ミルキークラウドでも室内の弱光線下で徒長してしまい、だらしなくなった姿をしばしば見かける。
これを克服する方法の一つが、補助光源として照明スタンドなどの下に置くか、あるいは小型の照明付き室内温室があれば最適だが、あまり費用が掛かるようだと難しい。
室内栽培での徒長を克服するもう一つの方法が、より耐陰性が高い品種を育成することである。目標は一般的な明るい居室の4000ルクス程度の光条件でも徒長しない、あるいは見苦しくない形で育つ品種ということになるが、ここではこの目標に合致する、あるいはそれに近い品種をいくつか紹介する。
オブツーサ(H. obtuse)や紫オブト(H. vista)は一般に光条件の幅が広く、6000ルクスから10000ルクス程度までの幅広い環境で形よく作れる。誤ってクーペリー(H. cooperi)と呼ばれている植物はほとんどがオブツーサの尖り葉タイプの個体で、群落によって種が分けられているが、すべて同じような光条件でうまく作れる。ただしほとんどのオブト類は6000ルクス以下の環境では徒長して脊丈が直径より大きくなってしまう。
おそらくほとんど認識されていないが、薄紫の最大の特徴は、耐陰性が非常に高く、写真1のように4000ルクスでも全く徒長せずに作れることである。徒長しないどころか、かなりの弱光線下で栽培しても背丈が直径よりずっと低く、形よく扁平に作れる。またこの特徴は直径5~6cm程度の中苗でも発揮される。薄紫はクローン的には複数個体あると見られ、扁平さの程度には差があるが、どのクローンも弱光線下でも扁平に育つ点に変わりはない。
ただし薄紫のこの特徴はこの品種独特のもので、原種のH. boloniaでは大型個体でもこのようにはならず、大株になると丈高くなり、大量に仔吹して形が崩れてしまう(写真2)。
京の華錦は丈夫でよく繁殖し、宝草錦より透明感があるのでより美しく見える。ただし成長が早いので、8,000ルクス以下では間延びして葉が垂れ下がり、見苦しくなってしまう。しかし京の華錦として扱われている個体にはいくつもの変異(枝変わりか実生)があり、中にはより短葉で葉が垂れにくいものもある。
外見的には白蛇伝に近く、黄色の白蛇伝といった感じである。白蛇伝の交配親か、あるいは金蛇伝とも兄弟の可能性があると見ている。
余談ついでにノリ斑として最も普及しているものにミルキークラウドがある。ミルキークラウドはきれいなのでよく室内栽培されるが、6,000ルクス以下では徒長して見苦しくなってしまう。一方、8,000ルクス以上では葉先が焼けて茶色になってしまう。丈夫ではあるが、きれいに作るためには光条件の調節が意外と難しい。
葉のどこにもまったく葉緑部分がなければ、ミルキークラウドのように丈夫な品種でもやがて枯れてしまう。これはすべてのノリ斑に共通した注意事項である。ただ、まとまった葉緑部分がなくても、中心部などの葉の中に緑がかった色がある個体はその部分の葉緑だけで成長する。コンプトやコレクタのノリ斑、あるいはルリ殿などの硬葉の斑には時々そのような個体がある。非常に美しいが、繁殖は困難である。
一方、あまり認識されていないが、ハオルシアは多肉植物では非常に珍しい陰性植物で、室内などの弱光下でも栽培できる数少ない多肉植物である。多肉植物は一般に成長は遅いが丈夫で、旅行などでしばらく水をやらなくても全く心配ないなどの長所がある。非常に丈夫であまり手間がかからないという長所と、室内でも育てられるという長所を生かせば、セントポーリアをしのぐ室内園芸の女王となれる可能性があると見ている。
ただしハオルシアは陰性植物と言っても、グループや種により、その耐陰性(日陰に耐えて育つ能力)には大きな差があり、これをよく理解していないとうまく育てられない。
玉扇や万象、あるいはピクタやスプレンデンスなど、大部分のレツサ系はおおむね8,000 ~10,000ルクス、上限12,000ルクス程度の強度の光で栽培すると締まって形よく作れる。
例外はコレクタとスプリングで、コレクタはおおむね6,000~8,000ルクス程度が適当で、これ以上強い光ではよほど根が張っていないと日焼けを起こして成長が止まってしまう。
スプリングはさらに耐陰性が強く、4~5000ルクスもあれば十分育つ。4000ルクスと言えば明るい居室の明るさだから、室内でも十分育てられるはずである。反対に6000ルクス以上ではほとんど成長しないか、成長しても小型化してしまう。
オブト系とシンビ系は大部分のレツサ系と同じく、8000ルクスから10000ルクス程度の光が最も適しているようである。ただオブト系はシンビ系より耐陰性が強く、6000ルクスでもあまり徒長することなく育つが、宝草錦や京の花錦などシンビ系は6000ルクスでは徒長してだらしなくなってしまう。
その他大部分のレース系はおおむねやや弱光線の6000~8000ルクス程度が適しているようである。レース系は8000ルクス以上だと葉先が枯れて見苦しくなってしまう。さらにディモルファとかアグニス、ペールマニアエなどの難物は強光にすると弱って死んでしまうことが多いので、要注意である。
室内栽培できる多肉植物というのは、今後園芸界の大きな方向性として大いに注目されるのだが、陰性植物であるハオルシアでも一般的な明るい居室の明るさである4000ルクスというのは、結構厳しい条件である。丈夫でよく室内栽培される宝草錦や京の華錦、ミルキークラウドでも室内の弱光線下で徒長してしまい、だらしなくなった姿をしばしば見かける。
これを克服する方法の一つが、補助光源として照明スタンドなどの下に置くか、あるいは小型の照明付き室内温室があれば最適だが、あまり費用が掛かるようだと難しい。
室内栽培での徒長を克服するもう一つの方法が、より耐陰性が高い品種を育成することである。目標は一般的な明るい居室の4000ルクス程度の光条件でも徒長しない、あるいは見苦しくない形で育つ品種ということになるが、ここではこの目標に合致する、あるいはそれに近い品種をいくつか紹介する。
オブツーサ(H. obtuse)や紫オブト(H. vista)は一般に光条件の幅が広く、6000ルクスから10000ルクス程度までの幅広い環境で形よく作れる。誤ってクーペリー(H. cooperi)と呼ばれている植物はほとんどがオブツーサの尖り葉タイプの個体で、群落によって種が分けられているが、すべて同じような光条件でうまく作れる。ただしほとんどのオブト類は6000ルクス以下の環境では徒長して脊丈が直径より大きくなってしまう。
薄紫(写真1)は直径7~8cmくらいまで大きくなり、丸頭で禾がないので紫オブトの一つとしているが、仔吹きが非常に良いので紫オブト(H. vista)ではなく、超大型のH. bolonia(Bolo産の小型丸頭無禾オブト)だと見られる。紫オブトほど濃い紫色にはならないが、仔を丁寧に外して作れば、写真のように単頭でほとんど紫オブトと変わらない姿になる。
おそらくほとんど認識されていないが、薄紫の最大の特徴は、耐陰性が非常に高く、写真1のように4000ルクスでも全く徒長せずに作れることである。徒長しないどころか、かなりの弱光線下で栽培しても背丈が直径よりずっと低く、形よく扁平に作れる。またこの特徴は直径5~6cm程度の中苗でも発揮される。薄紫はクローン的には複数個体あると見られ、扁平さの程度には差があるが、どのクローンも弱光線下でも扁平に育つ点に変わりはない。
ただし薄紫のこの特徴はこの品種独特のもので、原種のH. boloniaでは大型個体でもこのようにはならず、大株になると丈高くなり、大量に仔吹して形が崩れてしまう(写真2)。
写真2 大型のH. bolonia 径7cm 4,000ルクス
京の華錦は丈夫でよく繁殖し、宝草錦より透明感があるのでより美しく見える。ただし成長が早いので、8,000ルクス以下では間延びして葉が垂れ下がり、見苦しくなってしまう。しかし京の華錦として扱われている個体にはいくつもの変異(枝変わりか実生)があり、中にはより短葉で葉が垂れにくいものもある。
花乙女(写真3)はその一つで、京の華錦より幅広短葉で、7,000ルクス程度でも葉が垂れず形よく育つ。縞乙女(写真4)は花乙女よりさらに幅広短葉で形よく育つが、8,000ルクス以下の弱光線では葉は垂れないものの、やや葉が長くなり花乙女と区別しがたい。もともと京の華錦から選抜したものなので中間型もかなりあり、品種として花乙女との識別性にやや疑問が残る。
写真4 縞乙女 D=7 8,000ルクス
花乙女にも縞乙女にもノリ斑個体が出現するが(写真5)、ノリ斑は葉緑体が少ないので性が弱くて葉が細長くなり、京の華錦のノリ斑、すなわちサラダ記念日と区別がつかない。すべて同じ品種=サラダ記念日として扱うべきと思われる。
なお、余談だが、宝草錦にもノリ斑があり、金閣寺と名付けられている(写真6)。ノリ斑は安定しているが繁殖しにくく、またまれにしか出現しないのでほとんど流通していない。大型で非常に派手なうえに丈夫で育てやすいという優良品種だが、もとは宝草なので耐陰性は弱く、8,000ルクス以下では徒長してしまう。
外見的には白蛇伝に近く、黄色の白蛇伝といった感じである。白蛇伝の交配親か、あるいは金蛇伝とも兄弟の可能性があると見ている。
余談ついでにノリ斑として最も普及しているものにミルキークラウドがある。ミルキークラウドはきれいなのでよく室内栽培されるが、6,000ルクス以下では徒長して見苦しくなってしまう。一方、8,000ルクス以上では葉先が焼けて茶色になってしまう。丈夫ではあるが、きれいに作るためには光条件の調節が意外と難しい。
ミルキークラウドの斑の入り方や斑色には個体によりかなり差がある。斑色がさえて白に近いほどきれいだが、そのような個体の内、葉上面にまったく葉緑部分の見えないものがピュアホワイトと呼ばれている(写真7)。
葉のどこにもまったく葉緑部分がなければ、ミルキークラウドのように丈夫な品種でもやがて枯れてしまう。これはすべてのノリ斑に共通した注意事項である。ただ、まとまった葉緑部分がなくても、中心部などの葉の中に緑がかった色がある個体はその部分の葉緑だけで成長する。コンプトやコレクタのノリ斑、あるいはルリ殿などの硬葉の斑には時々そのような個体がある。非常に美しいが、繁殖は困難である。
ところで京の華錦の仲間には花乙女などよりさらに耐陰性の強い品種があり、恋乙女と名付けられた(写真8)。この品種も京の華錦、特にその濃色幅広葉変異の恋の華錦(写真9)とかなり似ているが、京の華系の変異個体はいずれも明緑色で葉に強い光沢があるのに対し、恋乙女はより濃い緑で艶消しである。恋乙女のもっとも大きな特徴は非常に耐陰性が強く、4~5000ルクスでもまったく徒長しないことである。短葉なので葉が垂れて見苦しくなることもなく、地色が濃いので斑も鮮明で非常に良い品種である。花乙女などよりやや小型である。
ただしこの品種の問題点は大きくなると斑が抜けやすく、写真10のように無地個体に近くなり、最終的には無地になってしまう。そうなる前に斑模様の良い仔株を分離して育てていく必要がある。大きくなると斑が抜けやすいことから、仔吹がよくても繁殖には時間がかかりそうである。しかし耐陰性が非常に強く、かつ非常に美しいので、いずれ室内栽培用品種として宝草系や京の華錦系品種に代わり普及していくものと思われる。