8月1日のブログ記事「ハオルシア盗難事件 その後のまとめ」に対し、「通りすがりの多肉愛好家」さんから下記のようなコメントがありました。返事が長くなりましたので、コメント欄からブログ本体に移して掲載します。
『ハオルシアの高級品種を狙った窃盗が後を絶たず、栽培家の方や協会としては頭を痛めていると同時に、大変お怒りのことと思います。心中お察しいたします。
ですが、「外国人の犯罪は厳罰化」「窃盗は金額によっては死刑あり」「刑務所の待遇を改悪しろ」などと考えるのは安易であると同時に危険でもあります。
また、「中国で1億円も盗めば死刑」と仰っていますが、それはどこからの情報ですか?まあ中国ですから、政府の判断で簡単に死刑になることもあるとは思いますが、少なくとも、現在の中国の刑法上は窃盗で死刑になることはありません。確かに以前は刑法上窃盗で死刑になる規定がありましたが、2011年以降は窃盗での死刑は廃止されています。
参考:国立国会図書館調査及び立法考査局(PDFファイル)
http://www.ndl.go.jp/jp/diet/publication/legis/pdf/02470110.pdf
厳罰化すれば確かに犯罪の抑止にはなるかもしれませんが、逆に「窃盗でも死刑になるのなら、見つかった時は殺してしまえ」と武器を携帯するかもしれません。「どうせ同じ死刑になるなら殺してでも逃げよう」と思うかもしれません。これでは余計に被害者を危険にしてしまうこともあり得ます。
刑務所の待遇改悪も、むしろ現実社会との差を広げてしまい、出所後の社会復帰が余計に難しくなってしまうという考え方もあります。
日本とは事情も違い単純な比較はできませんが、ノルウェーでは出所後の社会復帰も踏まえて、刑務所の待遇が非常に良い場所もあるそうです。スポーツや音楽、料理も自由にすることもできるそうです。それでいてノルウェーでの再犯率は16%とヨーロッパで最低水準です。因みに日本は約47%!(法務省:平成27年版犯罪白書より)
確かに、場合によっては厳罰化も必要でしょう。また、外国人の犯罪の場合は日本国内で社会復帰をするわけではないので、そこを考慮する必要は無いかもしれません。ですが外国人だから犯罪を重くしろというのは人種・国籍差別にもつながります。安易にそれを求めるのはどうかと思い、コメントさせて頂きました。』
まず、次の返事は必ずしも協会としての公式見解ではないことをお断りしておきます。基本的には執筆者(林)の個人的見解です。ただしこの種の犯罪に厳罰化が必要だという基本的見解は協会幹部(理事)全員が同意している共通認識です。
犯罪あるいは外国人犯罪の厳罰化に賛成か、反対かは様々な意見があろうかと思います。水掛け論になりがちなので、専門外ながら多少データを探しました。
まず、このところ十数年間、日本では基本的に犯罪処罰の厳罰化が一貫して進んでいます。
例えば未成年者の凶悪事件に対し、少年法の適用年齢や処分(少年院送致等)の下限年齢の引き下げなどが近年ありました。飲酒運転の厳罰化はもちろん、危険運転致死傷罪なども新設され、さらに適用条件の緩和(一層の厳罰化)にも多くの賛同があるようです。組織犯罪処罰法はオウム事件などを契機として1999年に制定されています。これも組織的な凶悪事件への厳罰化の一つで、罰則が一般的犯罪と比べかなり重くなっています。
日本の犯罪件数そのものは減少傾向ということですから、これらの法の改正や新設は犯罪の増加や新たな手口の犯罪に対処するということでなく、凶悪事件に厳罰化を求める社会的要請が反映されているのだと思います。世論調査でも死刑制度容認派は80%超だということであり(2015 内閣府基本的法制度に関する世論調査)、多くの国民が凶悪犯罪に対する厳罰(死刑)を支持していると言えます。
また例えば裁判員制度は『裁判に国民の健全な社会常識を反映させる』趣旨で始められたものですが、裁判員裁判で死刑となったものの、高裁や最高裁で『前例とのバランスも考慮する』などの理由で減刑(無期懲役)になったケースが3件もあります。しかしその反対の例(裁判員裁判で無期有期の懲役となったが、最高裁では死刑)はなかったように思います。(麻薬密輸事件など、事実認定に争いがある事件では裁判員裁判の結論が変更された例はかなりあるようですが)
これらの3事件(殺人罪で出所後の強盗殺人事件(2009)、千葉大生殺害放火事件(2009)、長野県一家3人殺害事件(2010))はいずれも事件の経過を見ていくと、私の感想でも当然死刑とすべき事件のように思えます。前例とのバランスではなく、前例そのものを見直すべきだというのが裁判員、すなわち国民の一般的感覚です。多くの国民はこれまでの刑罰が、犯罪者に対して甘すぎると感じており、それが裁判員裁判に反映されたものでしょう。
なお余談ですが、裁判員裁判の判決が最高裁で否定されて話題になったこれら事件の判決に対し、どの報道機関やネットサイトも世論調査をしていないようなのは非常に奇異に感じます。三権分立でも、国民は主権者ですから司法を含むすべての権力に注文を付けられます。最高裁判決だからと言って文句を言えないわけではありません。判決そのものは変更できないとしても、世論調査によって国民の多くは判決に納得していないということを数字で示せます。納得していない国民が多ければ、その後の類似ケースの裁判では裁判所も世論調査の結果を意識するでしょうし、またするべきです。国政権力に対する報道機関の監視役割は司法権力に対しても同じはずです。
さらに裁判員裁判と最高裁の判決が相違した場合だけでなく、闇サイト殺人事件などのように社会的に大きな注目を集めた事件でも国民が最高裁判決にどの程度納得したかを数字で示すことは意味があります。この事件では多くの国民が最高裁判決(千葉勝美裁判長。堀被告の死刑から無期懲役に減刑を支持)に疑問を持ち、恐らく世論調査をすれば、判決に納得しないという意見が多かったのではないかと思います。この事件ではその後、堀被告が碧南事件(殺人事件)なども起こしていたことが判明し、結果的に最高裁判決より国民の感覚(疑問)の方が正しかったという状況です。
重要な判決ごとに世論調査をすれば、裁判所も国民が事件をどのように考えているか知りことができ、どのような点は裁判官と国民の感覚とに大きな差はなく、あるいはどのような点は裁判官と国民の感覚とに大きな相違があるということがわかります。相違が大きな点は裁判所が国民をどう納得させられるか、判決理由などに工夫が求められます。担当裁判官でなくても裁判官全体が国民の考えを知る良い手掛かりになります。マスコミには是非とも実施していただきたい事柄です。
凶悪犯罪には厳罰化が必要という例に組織的詐欺事件があります。例えば比較的最近の例では2009年に会長の波和二が逮捕された円天事件ですが、波は以前にも同様の組織的詐欺事件で実刑となっています。また円天事件で一緒に逮捕された幹部22名中には社長の寺島敦等、多くは過去に同様の組織的詐欺事件で1回以上の実刑歴があります。
彼らは逮捕されても反省するどころか、次にどのような手口でだまして金を集めるか、刑務所内や出所後に情報を交換し合い、あるいは仲間を募って次の事件を計画しています。これは過去の豊田商事事件などの大型詐欺事件でも同じで、幹部だった者は出所後に手口を改良した仕組みを考え、新たな詐欺事件を起こしているようです。
彼らにとって人をだまして金を集めることは趣味ないし、生きがいのようなものです。組織犯罪処罰法ができる前(1999年以前)は詐欺罪で最長10年の刑ですから、集めた金をうまく海外に送って隠せば、出所後の生活費も新たな事件を起こす資金も用意できます。彼らは離合集散を繰り返しつつ、各人が2度3度と組織的詐欺事件を起こしているわけですが、詐欺や窃盗などの経済事件で死刑になることはない、と高をくくっているから2度も3度も事件を起こすのでしょう。
したがってこの種の人間には更生の可能性など考慮する必要は全くありません。組織的詐欺事件の幹部だった人間が同様犯罪で2度目に有罪となる場合は少なくても終身刑とし、2度と社会に出すべきではありません。振り込め詐欺などの首謀者も同じです。2度目の有罪で終身刑となる制度なら、2度3度と組織的詐欺事件を起こすことは大幅に少なくなるでしょう。このような大幅な厳罰化は組織的詐欺や組織的窃盗事件に対し劇的な抑制効果があると思います。
もちろん厳罰化すれば、犯人達が捕まらないよう武器を携行し、危険になる可能性もあります。しかし厳罰化による犯罪抑止効果と危険性が高まることとを天秤にかけた場合、やはり事件そのものが減る方を選ぶべきだと思います。
なお、詐欺団は組織犯罪処罰法の対象ですが、窃盗団が対象になっていないのは全く理解できません。法の不備とでもいうべき欠陥です。早急な改正が望まれます。
さらに詐欺犯や窃盗犯の場合、刑務所内での作業中に情報を交換し、あるいは手口を教えあったりして、刑務所が犯罪教室ないし新たな犯罪グループへの誘いの場になっているという批判があります。これを防ぐには懲役ではなく禁固刑(作業なし=収容者の交流なし)とし、かつできるだけ独房に収容すべきです。
厳罰化に関してもう一つ見落とせないのは、組織的詐欺事件では多くの場合、被害者に自殺者が出ている点です。これは間接的な殺人とでもいうべき事柄ですが、これまではこれを考慮した法律がありませんでした。私見では準殺人罪(または間接殺人罪)とでも言うものを新設し、詐欺事件やパワハラを含むいじめ事件、贈収賄事件などで板挟みとなった人などに自殺者が出た場合は殺人罪に準じて処罰すべきだと考えます。こうすれば組織的詐欺事件で何人も自殺者が出たら首謀者は死刑とすることが可能です。あるいはパワハラいじめ事件や贈収賄事件で一人でも自殺者が出たら、現行の刑罰に比べ格段に重罰になります。
次に外国人犯罪の差別化という点ですが、これまでは世界的に刑罰の内外無差別が標準となっていました。しかしこれは外国との人的移動が国内人口に対して非常に少なく、したがって外国からその国にやってきた人の文化や生活習慣の違いが社会的に大きな軋轢にならなかったという事情によるものです。またそのような事情でその外国人の出身国の生活水準も考慮する必要がなかったと言えます。
しかし今日のように世界的に移民や難民が何十万人、何百万人規模で生じ、日本へも訪日外国人が年2千万人にもなると、そこには当然犯罪者ももぐりこんできます。日本でも今後外国人犯罪者が増えると予想されます。
この場合、貧しい国から豊かな国に来て一稼ぎしようとする犯罪者に対しては出身国の刑罰水準や生活レベルに準じた刑を科さないと『日本では罰が軽いし、刑務所生活も苦にならない。』ということになって、これら犯罪者が日本の法律や社会を甘く見て犯罪を重ねることになります。今回のハオルシア盗難事件もまさにこれです。
中国では1億円も盗めば死刑だという根拠を問題にしていらっしゃるようですが、確かに中国の刑法では窃盗罪だけでは死刑はないかもしれません。しかし仮に今回のハオルシア連続窃盗事件が中国で起こったとしたら、犯人一味はまず死刑です。これだけの回数と金額の事件を起こせば、社会を不安に陥れた、とか口実はどうにでもつけられます。まして明確な証拠があるのに犯行を否認したり、黙秘したりすればなおさらでしょう。
刑罰の差別化と言うと、なにか差別は無条件にいけない、と思う人がいるかもしれませんが、例えば特許や品種登録などでは、そのような制度のない国の人は日本で出願できません。差別化ではなく、対等化とでも言うべきもので、相手国での扱いが日本での扱い方となるわけです。つまり特許や新品種を保護する制度のない国の人は、日本でも保護を受けられないというものです。当たり前の話ですが、その国の人が日本で新品種の保護を受けられるのに、日本人は新品種をその国で登録できないとなれば全く不公平だからです。
同じように、同じ犯罪がある国では懲役十年以上となるのに、日本ではせいぜい3年程度となれば、だれだって日本で犯行を計画するでしょう。豊かな国では一般に刑罰は緩やかで(死刑のない国も多いです)、刑務所の待遇も良いとなれば、貧しい国から大挙して犯罪者がやってくることになります。これを防ぐには刑罰の対等化、つまり刑罰と刑務所待遇を犯罪者の出身国と同水準とすべきです。これは人種差別や国籍差別ではなく、人口流動時代に即した、必要かつ効果的な犯罪抑止策です。
なお、取り調べなどの黙秘権についても同じで、犯人の出身国での扱いと同様にすべきです。要は犯罪者に外国(特に豊かな外国)で犯罪を行った方が得だと思わせないことです。
最後に、この問題は私の専門外ですし、上記返事も私の素人的感想という域を出ません。またこのブログがこの問題を議論するのにふさわしいとも思えません。何より、この春以来、盗難事件が報道されるようになって、資料の整理や取材先の調整などのマスコミ対応に追われ、ハオルシア研究誌の発行も遅れに遅れて会員よりお叱りを受けている状況です。
したがってこの記事の内容にいろいろご意見、反論などもおありかと思いますが、勝手ながらこの議論はこれにて打ち切りにさせていただきます。悪しからずご了承ください。
'ブラックナイト 'x ’御津姫’ D=5 御津姫の交配には非常に面白いものができている。
御津姫' x '’ブラックナイト' D=6 逆交配。ともに写真は転載許可済。
『ハオルシアの高級品種を狙った窃盗が後を絶たず、栽培家の方や協会としては頭を痛めていると同時に、大変お怒りのことと思います。心中お察しいたします。
ですが、「外国人の犯罪は厳罰化」「窃盗は金額によっては死刑あり」「刑務所の待遇を改悪しろ」などと考えるのは安易であると同時に危険でもあります。
また、「中国で1億円も盗めば死刑」と仰っていますが、それはどこからの情報ですか?まあ中国ですから、政府の判断で簡単に死刑になることもあるとは思いますが、少なくとも、現在の中国の刑法上は窃盗で死刑になることはありません。確かに以前は刑法上窃盗で死刑になる規定がありましたが、2011年以降は窃盗での死刑は廃止されています。
参考:国立国会図書館調査及び立法考査局(PDFファイル)
http://www.ndl.go.jp/jp/diet/publication/legis/pdf/02470110.pdf
厳罰化すれば確かに犯罪の抑止にはなるかもしれませんが、逆に「窃盗でも死刑になるのなら、見つかった時は殺してしまえ」と武器を携帯するかもしれません。「どうせ同じ死刑になるなら殺してでも逃げよう」と思うかもしれません。これでは余計に被害者を危険にしてしまうこともあり得ます。
刑務所の待遇改悪も、むしろ現実社会との差を広げてしまい、出所後の社会復帰が余計に難しくなってしまうという考え方もあります。
日本とは事情も違い単純な比較はできませんが、ノルウェーでは出所後の社会復帰も踏まえて、刑務所の待遇が非常に良い場所もあるそうです。スポーツや音楽、料理も自由にすることもできるそうです。それでいてノルウェーでの再犯率は16%とヨーロッパで最低水準です。因みに日本は約47%!(法務省:平成27年版犯罪白書より)
確かに、場合によっては厳罰化も必要でしょう。また、外国人の犯罪の場合は日本国内で社会復帰をするわけではないので、そこを考慮する必要は無いかもしれません。ですが外国人だから犯罪を重くしろというのは人種・国籍差別にもつながります。安易にそれを求めるのはどうかと思い、コメントさせて頂きました。』
まず、次の返事は必ずしも協会としての公式見解ではないことをお断りしておきます。基本的には執筆者(林)の個人的見解です。ただしこの種の犯罪に厳罰化が必要だという基本的見解は協会幹部(理事)全員が同意している共通認識です。
犯罪あるいは外国人犯罪の厳罰化に賛成か、反対かは様々な意見があろうかと思います。水掛け論になりがちなので、専門外ながら多少データを探しました。
まず、このところ十数年間、日本では基本的に犯罪処罰の厳罰化が一貫して進んでいます。
例えば未成年者の凶悪事件に対し、少年法の適用年齢や処分(少年院送致等)の下限年齢の引き下げなどが近年ありました。飲酒運転の厳罰化はもちろん、危険運転致死傷罪なども新設され、さらに適用条件の緩和(一層の厳罰化)にも多くの賛同があるようです。組織犯罪処罰法はオウム事件などを契機として1999年に制定されています。これも組織的な凶悪事件への厳罰化の一つで、罰則が一般的犯罪と比べかなり重くなっています。
日本の犯罪件数そのものは減少傾向ということですから、これらの法の改正や新設は犯罪の増加や新たな手口の犯罪に対処するということでなく、凶悪事件に厳罰化を求める社会的要請が反映されているのだと思います。世論調査でも死刑制度容認派は80%超だということであり(2015 内閣府基本的法制度に関する世論調査)、多くの国民が凶悪犯罪に対する厳罰(死刑)を支持していると言えます。
また例えば裁判員制度は『裁判に国民の健全な社会常識を反映させる』趣旨で始められたものですが、裁判員裁判で死刑となったものの、高裁や最高裁で『前例とのバランスも考慮する』などの理由で減刑(無期懲役)になったケースが3件もあります。しかしその反対の例(裁判員裁判で無期有期の懲役となったが、最高裁では死刑)はなかったように思います。(麻薬密輸事件など、事実認定に争いがある事件では裁判員裁判の結論が変更された例はかなりあるようですが)
これらの3事件(殺人罪で出所後の強盗殺人事件(2009)、千葉大生殺害放火事件(2009)、長野県一家3人殺害事件(2010))はいずれも事件の経過を見ていくと、私の感想でも当然死刑とすべき事件のように思えます。前例とのバランスではなく、前例そのものを見直すべきだというのが裁判員、すなわち国民の一般的感覚です。多くの国民はこれまでの刑罰が、犯罪者に対して甘すぎると感じており、それが裁判員裁判に反映されたものでしょう。
なお余談ですが、裁判員裁判の判決が最高裁で否定されて話題になったこれら事件の判決に対し、どの報道機関やネットサイトも世論調査をしていないようなのは非常に奇異に感じます。三権分立でも、国民は主権者ですから司法を含むすべての権力に注文を付けられます。最高裁判決だからと言って文句を言えないわけではありません。判決そのものは変更できないとしても、世論調査によって国民の多くは判決に納得していないということを数字で示せます。納得していない国民が多ければ、その後の類似ケースの裁判では裁判所も世論調査の結果を意識するでしょうし、またするべきです。国政権力に対する報道機関の監視役割は司法権力に対しても同じはずです。
さらに裁判員裁判と最高裁の判決が相違した場合だけでなく、闇サイト殺人事件などのように社会的に大きな注目を集めた事件でも国民が最高裁判決にどの程度納得したかを数字で示すことは意味があります。この事件では多くの国民が最高裁判決(千葉勝美裁判長。堀被告の死刑から無期懲役に減刑を支持)に疑問を持ち、恐らく世論調査をすれば、判決に納得しないという意見が多かったのではないかと思います。この事件ではその後、堀被告が碧南事件(殺人事件)なども起こしていたことが判明し、結果的に最高裁判決より国民の感覚(疑問)の方が正しかったという状況です。
重要な判決ごとに世論調査をすれば、裁判所も国民が事件をどのように考えているか知りことができ、どのような点は裁判官と国民の感覚とに大きな差はなく、あるいはどのような点は裁判官と国民の感覚とに大きな相違があるということがわかります。相違が大きな点は裁判所が国民をどう納得させられるか、判決理由などに工夫が求められます。担当裁判官でなくても裁判官全体が国民の考えを知る良い手掛かりになります。マスコミには是非とも実施していただきたい事柄です。
凶悪犯罪には厳罰化が必要という例に組織的詐欺事件があります。例えば比較的最近の例では2009年に会長の波和二が逮捕された円天事件ですが、波は以前にも同様の組織的詐欺事件で実刑となっています。また円天事件で一緒に逮捕された幹部22名中には社長の寺島敦等、多くは過去に同様の組織的詐欺事件で1回以上の実刑歴があります。
彼らは逮捕されても反省するどころか、次にどのような手口でだまして金を集めるか、刑務所内や出所後に情報を交換し合い、あるいは仲間を募って次の事件を計画しています。これは過去の豊田商事事件などの大型詐欺事件でも同じで、幹部だった者は出所後に手口を改良した仕組みを考え、新たな詐欺事件を起こしているようです。
彼らにとって人をだまして金を集めることは趣味ないし、生きがいのようなものです。組織犯罪処罰法ができる前(1999年以前)は詐欺罪で最長10年の刑ですから、集めた金をうまく海外に送って隠せば、出所後の生活費も新たな事件を起こす資金も用意できます。彼らは離合集散を繰り返しつつ、各人が2度3度と組織的詐欺事件を起こしているわけですが、詐欺や窃盗などの経済事件で死刑になることはない、と高をくくっているから2度も3度も事件を起こすのでしょう。
したがってこの種の人間には更生の可能性など考慮する必要は全くありません。組織的詐欺事件の幹部だった人間が同様犯罪で2度目に有罪となる場合は少なくても終身刑とし、2度と社会に出すべきではありません。振り込め詐欺などの首謀者も同じです。2度目の有罪で終身刑となる制度なら、2度3度と組織的詐欺事件を起こすことは大幅に少なくなるでしょう。このような大幅な厳罰化は組織的詐欺や組織的窃盗事件に対し劇的な抑制効果があると思います。
もちろん厳罰化すれば、犯人達が捕まらないよう武器を携行し、危険になる可能性もあります。しかし厳罰化による犯罪抑止効果と危険性が高まることとを天秤にかけた場合、やはり事件そのものが減る方を選ぶべきだと思います。
なお、詐欺団は組織犯罪処罰法の対象ですが、窃盗団が対象になっていないのは全く理解できません。法の不備とでもいうべき欠陥です。早急な改正が望まれます。
さらに詐欺犯や窃盗犯の場合、刑務所内での作業中に情報を交換し、あるいは手口を教えあったりして、刑務所が犯罪教室ないし新たな犯罪グループへの誘いの場になっているという批判があります。これを防ぐには懲役ではなく禁固刑(作業なし=収容者の交流なし)とし、かつできるだけ独房に収容すべきです。
厳罰化に関してもう一つ見落とせないのは、組織的詐欺事件では多くの場合、被害者に自殺者が出ている点です。これは間接的な殺人とでもいうべき事柄ですが、これまではこれを考慮した法律がありませんでした。私見では準殺人罪(または間接殺人罪)とでも言うものを新設し、詐欺事件やパワハラを含むいじめ事件、贈収賄事件などで板挟みとなった人などに自殺者が出た場合は殺人罪に準じて処罰すべきだと考えます。こうすれば組織的詐欺事件で何人も自殺者が出たら首謀者は死刑とすることが可能です。あるいはパワハラいじめ事件や贈収賄事件で一人でも自殺者が出たら、現行の刑罰に比べ格段に重罰になります。
次に外国人犯罪の差別化という点ですが、これまでは世界的に刑罰の内外無差別が標準となっていました。しかしこれは外国との人的移動が国内人口に対して非常に少なく、したがって外国からその国にやってきた人の文化や生活習慣の違いが社会的に大きな軋轢にならなかったという事情によるものです。またそのような事情でその外国人の出身国の生活水準も考慮する必要がなかったと言えます。
しかし今日のように世界的に移民や難民が何十万人、何百万人規模で生じ、日本へも訪日外国人が年2千万人にもなると、そこには当然犯罪者ももぐりこんできます。日本でも今後外国人犯罪者が増えると予想されます。
この場合、貧しい国から豊かな国に来て一稼ぎしようとする犯罪者に対しては出身国の刑罰水準や生活レベルに準じた刑を科さないと『日本では罰が軽いし、刑務所生活も苦にならない。』ということになって、これら犯罪者が日本の法律や社会を甘く見て犯罪を重ねることになります。今回のハオルシア盗難事件もまさにこれです。
中国では1億円も盗めば死刑だという根拠を問題にしていらっしゃるようですが、確かに中国の刑法では窃盗罪だけでは死刑はないかもしれません。しかし仮に今回のハオルシア連続窃盗事件が中国で起こったとしたら、犯人一味はまず死刑です。これだけの回数と金額の事件を起こせば、社会を不安に陥れた、とか口実はどうにでもつけられます。まして明確な証拠があるのに犯行を否認したり、黙秘したりすればなおさらでしょう。
刑罰の差別化と言うと、なにか差別は無条件にいけない、と思う人がいるかもしれませんが、例えば特許や品種登録などでは、そのような制度のない国の人は日本で出願できません。差別化ではなく、対等化とでも言うべきもので、相手国での扱いが日本での扱い方となるわけです。つまり特許や新品種を保護する制度のない国の人は、日本でも保護を受けられないというものです。当たり前の話ですが、その国の人が日本で新品種の保護を受けられるのに、日本人は新品種をその国で登録できないとなれば全く不公平だからです。
同じように、同じ犯罪がある国では懲役十年以上となるのに、日本ではせいぜい3年程度となれば、だれだって日本で犯行を計画するでしょう。豊かな国では一般に刑罰は緩やかで(死刑のない国も多いです)、刑務所の待遇も良いとなれば、貧しい国から大挙して犯罪者がやってくることになります。これを防ぐには刑罰の対等化、つまり刑罰と刑務所待遇を犯罪者の出身国と同水準とすべきです。これは人種差別や国籍差別ではなく、人口流動時代に即した、必要かつ効果的な犯罪抑止策です。
なお、取り調べなどの黙秘権についても同じで、犯人の出身国での扱いと同様にすべきです。要は犯罪者に外国(特に豊かな外国)で犯罪を行った方が得だと思わせないことです。
最後に、この問題は私の専門外ですし、上記返事も私の素人的感想という域を出ません。またこのブログがこの問題を議論するのにふさわしいとも思えません。何より、この春以来、盗難事件が報道されるようになって、資料の整理や取材先の調整などのマスコミ対応に追われ、ハオルシア研究誌の発行も遅れに遅れて会員よりお叱りを受けている状況です。
したがってこの記事の内容にいろいろご意見、反論などもおありかと思いますが、勝手ながらこの議論はこれにて打ち切りにさせていただきます。悪しからずご了承ください。
'ブラックナイト 'x ’御津姫’ D=5 御津姫の交配には非常に面白いものができている。
御津姫' x '’ブラックナイト' D=6 逆交配。ともに写真は転載許可済。