日本ハオルシア協会 Official Blog

ブログデザイン改修しました。

September 2014

 他のブログ(http://1911.seesaa.net/ 9/11)に名前が出てきたので、ちょっとコメント。そのブログに直接コメントを返しても良いのですが、協会のブログも盛り上げたいのでこちらに書きます。

 

H. fortuita n.n.

これは結構な美種で、H. decipiens とかH. joubertii とかに関連付けられていますが、基本はH. habdomadis だろうと思います。H. habdomadis H. joubertii が浸透交雑したと見るのが最も妥当でしょう。産地はH. habdomadis の産地のSevenweekspoortから10kmほど東で(北入口からの距離)、H. joubertii の産地からは20kmほど東です。

私は産地名から仮名H. “bosluis” と呼んでいましたが、発見者のマルクスがH. fortuita と名づけたようなので、この名の方が良いでしょう。意味は聞いていませんが、たぶん発見が幸運だったと言っているので“幸運”(fortune) に関係すると推測しています。

写真はマルクスから送ってもらったものですが、冒頭のブログに産地写真のでているホームページが紹介されていますので、関心のある方はそちらを見てください。


H. fortuita GM680 Bosluiskloof

H. fortuita GM680 Bosluiskloof

なお、H. habdomadis H. mucronata H. marumiana が浸透したものだろうと推測していますが、この仲間(H. mucronata, H. sakaiiH. habdomadis H. inconfluensは別系統))は大カルーにも進出しH. devriesiiからH. fimbriata n.n. Prince Albert Roadの未記載新種)、さらにはH. latericia H. globosifloraになったと推定しています。(H. norteri H. variegataの子孫(H. petrophilaH. maculat など、花の中が黄色いグループ)にH. marumianaが浸透したもので、H. globosiflora とは別系統だろうと考えています。)


H. fimbriata Prince Albert Road
H. fimbriata Prince Albert Road


H. globosifloraH. latericia (Sutherland)の間は約150kmH. latericia H. fimbriata Prince Albert Road との間は約100kmなので、これらの中間にまだこの系統の未発見の種がいくつかあるはずです。Haworthia Rivisited Bayer 1999130頁右下写真の植物(JDV 87-204)も、ちょっと方向はずれますがこの仲間かもしれないと見ています。

ただいずれの系統だとしても互いにもつれあって(互いに浸透交雑を繰り返しながら)進化していくので、別系統なら全く関係ないというわけではありません。念のため。

 

追記:H. fimbriataは初め上記のように考えていましたが、この記事のために写真や現物を良く見ていたら、どうもむしろH. semivivaSwartbergの頂上近くで最近見つかったH. “swartbergensis” とを結ぶ中間型ではないかと思い初めました。そうだとするとH. heroldiacalitzensisswartbergensisfimbriatasemivivabolusiiと言う、窓が非常に透明で屈折率の高い系統が追跡、確認できるわけです。

なお、H. fimbriataがどちらの系統に属するか(あるいは両系統の中継種)は別にして、H. bolusii-semivivaのグループがH. blackbeardiana系に属さず、H.calitzensisH. mucronata v. calitzdorpensis)の子孫であることは確かです。


Dr. M. Hayashi

公式サイトにて、ハオルシア栽培品種名登録の受付を開始しました。日本語及び英語の申請書と記入要領を新設のRegistrationページにUPしてありますのでご利用ください。

申請書内に「個体(英語版ではclone)」という表現があります。植物の栽培においてはよく使われるこの単語ですが、本来の正確な意味では使用されていないと思われますのでこの機会に解説します。

「個体」は通常、英語では"indivisual"ですが、これでは植物に関する専門用語でいう所のクローン(clone=各個体間の遺伝子構成が違う)と、ラメート(ramet=各個体の遺伝子構造は同じ)の区別がつきません。

実生の兄弟苗などは全て別クローンですが、培養や葉挿しで増やした苗は全て同一クローンとなり、その個々の苗個体を指す時はラメートと言います。

従って、クローンはラメートの集合です。ただ日本語ではラメートという語が浸透しておらず、両方ともクローンと呼んでいることが多いです。
また英語でもClone Sheep(クローン羊)が作られた、などと使いますがこれは親と同じcloneの羊という意味です。親と子、それぞれの個体はrametとなりますが、英語でもこの言葉はあまり浸透しておらず、使われることは少ないようです。
従って小さな辞書には載っていません。しかし混同(誤解)を招きやすいので、今後はramet=同じ遺伝子構成の個々の個体、clone=rametの集合、clones=異なった遺伝子校正の個体の集合と使い分け、個体と言う語はそのすべての場合の個体一般を示します。

例えば、小さな丘全体を笹が覆っている場合、全体がrametで1クローンしか生えていないのか、いくつかのクローンがあるのか、最近DNA解析をして判った例があります。その場合はそこには複数のクローンが生えていたようですが、このような場合にはラメートという語を使わないと研究結果を正確に伝えられません。

この用語の区別は非常に重要です。

植物を扱う場面でクローンという言葉を使用する際には、上記を念頭に置いて考えてみてください。よりその個体の性質を把握する助けになると思います。

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