品評会責任者 小澤 直樹
ハオルシア日本一を競う品評会と銘打って行われた日本ハオルシア大賞2014は、出展者数29名、出展品数が115点となって、前年をはるかに超えた規模となりました。またその作品内容も多様化して量、質共にハオルシア日本一を決めるに相応しい品評会へと大きく前進いたしました。前年度の19名、79作品と比べるとそれぞれ約5割増しとなっています。内容的にもすばらしいものが多く出展され、特に作品数の多かったピクサ・スプレ(ンデンス)の部は優秀作品が多くて大激戦でしたが、観覧者の皆さんには多様な顔違いの妙を楽しんでいただけたと思います。
品評会という晴れの舞台への出展は丹精込めた愛培品への深い愛情の発露ですが、出展者の皆様にはそのような貴重な愛培品を数多く出展していただいたおかげで、大変見ごたえのある品評会となりましたことを厚くお礼申しあげます。
今回の出展者の皆様のお名前を拝見いたしますと、前回の19名が29名となって人数的には飛躍的な増員となりましたが、一方では前回出展された方で今回はご都合が悪くて出展されなかった方も何人かいらっしゃり、この点は誠に残念に思っています。その方々が出展されたならば、と思うと次回への期待が膨らみます。
品評会の意味を考えてみますと、作品を集めて展示し、その優劣を決める会が本来の品評会でありますが、同時に作品を公の観覧に供し、販売、購買、蒐集の動機づけを与え、作品の普及を期することも意図して開催されています。
品評会における出展条件で再出展(以前出展した作品を再度出展すること)の是非を問う声があります。前回と同じ作品では新鮮さに欠け、興味をそぐので良くない、という意見です。しかし多肉植物に関しては毎年新しい葉を出し、古い葉を落としていくので、前年と同じ草姿ということはあり得ません。逆にこの新陳代謝が前年の作品をどのような出来栄えに変貌させているかの興味を与えてくれます。したがって前年と同じ作品であっても全く問題ありません。また作品の所有者や所有期間についても展示品の優劣を決めることに対し何ら差し障ることではありません。
換言すれば展示作品が良いものでありさえすれば如何なるものであっても良し、とする展示品第一主義に立った品評会であるべきであると思っています。良いものは良いのであって、当然良いものを観覧した人はその良さに感動を受け、ひいては購買、蒐集の動機づけを与えられ、その入手がまた次の人への普及につながっていくことになります。まさにこの好循環を派生させることが品評会に求められるところであります。
出展作品の部門別一覧と各賞の受賞作品は別表にまとめました。
表中の番号は作品番号で、ブログに掲載された出展作品の写真の番号と同じです。この表を参照しながらブログの写真をご覧いただくと、どんな作品が人気を集め、また評価されたかがよりよくご理解いただけると思います。
総合賞は人気投票的要素が強いのですが、昨年と比べ、投票が特定の作品に集中する度合いはやや低くなっています。これは優秀作品が数多く出展され、票が分散したためと思います。
別表を見ますと、出展作品全体の3/4が青もの(無地)作品で、1/4が斑ものとなっています。しかし斑ものの総合賞受賞作品は2点だけで、市場価格などから考えれば斑ものの評価 (人気) がもっと高くても良い感じですが、やや意外な結果でした。これは愛好家の方々が斑ものだから高評価とするのではなく、あくまで作品としての全体の姿かたち、あるいは葉の紋様等をまず評価するからとも考えられます。
つまり「斑入りだから高評価とする」のではなく、あるいは市場価格の高低によって評価するのではなく、園芸作品として審美眼的にきれいかどうか、見事かどうか、で評価するからではないかと思います。これはある意味、健全な趣向、感覚と言えます。今回の“リビダNo.1”なども非常に小型で一見地味な存在ですが、見事な裏窓が評価されて入賞しています。
したがって青もの(無地作品)で総合賞を受賞するような品種、作品が斑入りとなれば、例えば今年の‘ショコラスィート’や‘裏般若’、あるいは昨年の‘玄武’などが斑入りになれば、大人気になることは間違いないでしょう(もちろん受賞作品のような立派な作りであることは大前提ですが)。その意味ではこれからは単なる斑入りではなく、名品の斑入りへと斑ものの中心人気が移行していくと予想されます。
部門別に見ていきますと、ピクサ・スプレ部門のように25点もの作品が集中した部門がある一方、万象錦や玉扇錦など1、2点しか出展作品がない部門もありました。昨年も同様の傾向でしたから、来年以降は部門の分割や統合なども検討課題でしょう。
青ものの万象は昨年より作品数もレベルも大きくアップしましたが、市場人気からすれば、もっと出展作品が多くても良い気がします。成長が遅くて育種に時間がかかるために相当な愛好家でも優秀な独自品種は非常に少ないためかもしれませんが、さらなる挑戦を期待したいところです。
コンプト・コレクサ部門は斑ものも含め、予想外に出展作品が少なかったです。しかし銀賞と銅賞がここから出ており、昨年は金賞(‘水晶コンプト’)もこの部門から出ていますから、レベル的には極めて高い水準に達していると言えます。ただ昨年は多数出展されたコレクサ錦が今年は1点しか出展されなかったのは残念でした。
その他レツーサ類部門からは総合賞に2作品が入賞し、やはり見ごたえのある展示となりました。昨年もそうでしたが、この部門の入賞作品は斑ものを除くとすべて交配種で、これまでにない新しい形質の優良品種がどんどん出てくる部門ですから、観覧者にとっても興味の尽きない、見逃せない展示です。
オブト錦は青もの部門より斑もの部門の出展数の方が多かった唯一の部門でした。オブト錦の人気を物語っていると同時に、オブト類の青ものは大同小異で目新しい優良品種があまり作出されていないからかもしれません。
その他軟葉系では“リビダNo.1”と‘タンジェリン’という、ともに裏窓の非常にきれいな作品が人気でした。この仲間は比較的成長が早いですし、交配も難しくないので、来年以降もさらに目新しい、きれいな品種群の作出、出展が期待できそうです。
硬葉系部門は青もの、斑ものとも総合賞入賞作品がありませんでした。もちろんこの仲間にも人気品種やきれいな品種は多数あるわけですから、育種家の皆さんにはぜひとも大人気になるようなきれいな品種を育種していただき、人気が出てきたためにさらに育種に挑戦する人が増えると言う好循環になるよう、一段の奮起をお願いします。
展示の会場や設備に関しては『場違い』という声が出るほど好評でした。来年以降も予約が取れたら同じ会場で開催したいと考えています。バックライト装置は一定の効果はあったものの、やや光量不足の感がありました。来年は出来れば一部作品だけでなく、全部の作品にバックライト等の良好な照明が当たるような工夫をしていきたいと考えています。ハオルシアのような窓のある植物の展示では、裏窓系やオブト類だけでなく、レツーサ類や玉万類でも窓を如何にきれいに見せるかが勝負どころですし、そのための照明の工夫は重要なポイントだと考えています。
今年は余裕を持って展示すべく、相当スペースを確保していたつもりでしたが、出展作品が予想を超えて大幅に増えたため、結果的には余裕のあまりない展示になってしまいました。来年はスペースを十分広く取って余裕のある展示を目指したいと思います。
また出展作品は鉢の泥を取り、下葉を整理し、化粧砂を敷いたりして、展示にふさわしい“おしゃれ”をさせて出品していただくよう、お願いいたします。展示会は “ハレ”の舞台ですし、見に来て下さるお客さんもそれを期待して遠くから参集されるわけですから、出展作品もそれに応える装いをさせてください。
今年は予想を大幅に超える出展作品が集まったため、作品にネームプレートを付ける時間がなく、観覧者に対して作品名を提示できずに大変ご不便をおかけしました。
展示作品のラベルの名前には重複名などが若干ありましたが、ブログ掲載の名前はすべて出展者と調整の上、適格名(準正名。印刷されれば正名となる)にしてあります。したがって一部作品の名前は展示時とブログとで異なっていますが、ブログの名が正しい名前です。
人の考えは十人十色ですからすべての人というわけには行きませんが、皆さんから支持される「ハオルシア日本一を決める品評会」をぜひ実現させたいと思っています。また絶対に実現できると信じています。なぜならば否定する理由がないからです。ハオルシアを愛する人はそれを楽しみに思い、賛同してくれるはずだからです。この度で二回目となり、端緒についたばかりとはいえ、大変順調な歩みとなっていることもこれを裏付けてくれています。どうぞこれからもご支援をよろしくお願い申し上げます。