竹久夢二は大正ロマンを代表する画家ですが、当時夢二と人気を2分していた挿絵画家が蕗谷虹児です。虹児の名は絵画よりもむしろ「花嫁人形」の作者(作詩者)として知られており、この詩にはのちに曲が付けられて有名になりました。
さてハオルシアの‘夢二’はハオルシア研究27号裏表紙にH. nishii の交配として紹介されましたが、どうやらH. nishii ではなく、H. lividaの交配だったようです。
写真2 夢二 B D=5
写真3 虹児 A D=8
写真4 虹児 B D=7
写真1~5はいずれも大型オブツーサ♀の実生ですが、この時は斑紋系を大型化する目的でH. nishiiやH. lividaなどを花粉親に使いました。‘夢二’が最も早く大きくなったので紹介したのですが、葉質がやや硬いので父親はH. lividaではなく、H. nishiiだろうと考えた次第です。
しかしその後他の兄弟が大きくなって比べてみると、やや小型で紫肌、大きな透明窓のタイプと、より大型で緑肌の2タイプのあることが分かりました。そうしてみるとどうやら‘夢二’タイプがH. livida、緑肌タイプがH. nishii の子供らしいということになります。(H. nishiiも紫肌になりますが、H. lividaの方がずっと濃色です。)そこで緑肌のタイプを竹久夢二と人気を分け合っていた蕗谷虹児にちなみ、‘虹児’としました。
写真1は‘夢二’Aで、ハオ研誌27号裏表紙の株です。紫肌に多数の透明な気泡紋が並び、狙い通り大型のリビダといった感じです。
写真2は‘夢二’Bで、まだ小さいですが、明らかに‘夢二’Aの兄弟であることが分かります。奥に見えるのは‘虹児’Cで、色調の違いは明らかです。
写真3は‘虹児’Aで、より大型でずんぐり葉、緑肌で、窓には多数の気泡紋が並びますが、窓の面積全体は‘夢二’より狭いです。株姿がオブツーサに近いのでどこまで大きくなるか楽しみです。
写真4は‘虹児’Bで、‘虹児’Aよりやや小型ですが、窓の様子や株姿はよりH. nishiiに近くなっています。
写真5は‘虹児’Cで、‘虹児’Aに似ています。ただ葉裏の斑紋に肉芽の出るのが気になります。奥に見えているのは‘夢二’Bです。
写真6‘青鞜’はオブツーサの実生ではなく、H. lividaの実生です。花粉親は不明ですが、葉裏の斑紋に肉芽が多数出ることから、‘白帝城’当たりの可能性もあります。(‘ゴジラ’など、H. pallidは花期が合わないので、ほぼその可能性はないと見ています)
これらは確かにH. lividaより大型で、斑紋も非常に美しいですが、もう一歩大型化して直径で10cmを超えるような丈夫なまだら系品種を育成したいと考えています。
Dr. M. Hayashi