Note

コメントへの回答(「タージマハル騒動」について)

前回のブログ(「タージマハル騒動」)に次のコメントが寄せられています。

『現在、ヤフオクでダージ・マハルという名前、おそらくタージ・マハルのスペルミスで出品されています。出品者に問い合わせたところ輸入したものとのことです。この記事を読ませていただいた後では入札するのは少し不安です。』

タージマハルの問題とともに、当会の登録商標の使用に関して簡単にご案内します。

タージマハルの親株は富士宮市の中島氏のところで葉挿しなどで若干の小苗が作られ、それが他の趣味家などに譲渡されています。その一部は中国に渡り、そこでも当然繁殖されていると思いますが、時期的には台湾に偽タージマハルが渡ったのよりだいぶ後なので、数的には偽物の方がはるかに多いと推定されます。したがって中国で繁殖されたタージマハルの大部分は偽物と考えた方が無難です。
 
日本でも本物のタージマハルが何人かの趣味家やセミプロによって組織培養で繁殖されています。組織培養なら最終的には100本、1000本単位で繁殖されますので、いずれ価格は下がります。その苗を待った方が確かです。

 偽タージマハル(ホワイトサミット)も相当白い株なので、小苗の内は識別が困難です。小苗でもある程の大きさになれば白点の密度や艶で識別できますが、鑑定には相当な経験が必要ですし、鑑定間違いも当然あるでしょう。リスクを冒してそのような苗を焦って買う必要はなく、いずれ安く出回るようになりますから、それまで待つことをお勧めします。

 なお、今回ヤフオクに出品された苗は当会が出品者に商標の無断使用の警告を出したので、出品者が自主的に出品取下げをしました。警告の内容はヤフオクの質問欄に出ています。

タージマハルという商標は現在特許庁で審判中ですので、無断使用すると登録後に損害賠償を請求されます。特許庁、高裁、最高裁などで最終的に登録が認められなければ損害賠償の請求はできませんが、もちろん当会としては当然登録されると考えています。

 またタージマハルという商標の使用は現在、中島氏と奈良多肉植物研究会にのみ許可しており、その他の誰にも許可していません。中島氏や奈良多肉植物研究会から買った苗でもそれ以外の人がヤフオクなどで販売する場合は別途許可が必要です。

 タージマハルに関してはこれまでに3名の方に無断使用の警告を出しており、当面他の方に使用許可を出すことは予定していません。ただし業界優先名など、消費者に大きな迷惑となる異名の使用を推奨する業者らに対する訴訟を現在準備中ですので、裁判開始後に下記条件で包括的使用契約の受付を始める予定です。

包括的使用契約は登録(契約)すればタージマハルも含め、当会のすべての登録商標や審査中の商標の使用ができるものです。前記裁判開始後に正式な使用条件をご案内しますが、大部分の会員は登録すれば当会のすべての登録商標が無料で使用できます。

包括使用料

使用許可条件は国際栽培植物命名規約の遵守(異名や重複名を使わないことを含む)。
新規でも入会すれば既存会員と同じ条件で当会の登録商標が使用できる。
無料使用でも使用許可にはヤフオクなどの出品者IDの登録が必要。
業界優先名などの異名を使う人には損害賠償を請求します。

タージマハル騒動

スプレンデンス ‛タージマハル‘ は白系スプレンデンスの最高峰と思われる品種ですが、最近これの培養苗と称する苗が中国などで大量に売られ、大騒動になっているようです。

私がこの事件を知ったのは、ハオルシア愛好家のN氏から、「台湾のX氏からタージマハルの培養苗がたくさんあるけど買わないかというオファーが来ている。本物かどうか見てくれ。」という依頼とともに20~30本の小苗が植わった鉢の写真が送られてきたのが最初でした。

写真を見たところ、およそ3cm程度の小苗で、やや尖った葉型や白点の密度、それに白点に艶がないことなどから、どうもタージマハルではないようでした。N氏の話では台湾のX氏は南アフリカのマーチン・スコット氏からその元苗を入手したということでした。マーチン・スコット氏はマルクス氏の近くに住んでおり、付き合いもあったようなので、マルクス氏からタージマハルを入手していた可能性もあります。

しかし写真の苗は小苗で判断が難しかったので、その写真をマルクス氏に送って彼の意見と、彼がマーチン・スコット氏にタージマハルの苗を譲ったことがあるかを聞きました。マルクス氏の意見も、これらの培養苗はタージマハルではない可能性が高い、ということでした。またマーチン・スコット氏にはマルクス氏が葉挿ししたスプレンデンスの小苗を何本か譲ったが、その中にタージマハルが入っていたかどうかはわからない、ということでした。

そこで私はN氏に、私もマルクス氏も、おそらくこれらの苗はタージマハルではない可能性が高い、という判断だということを伝えました。またもし買うならタージマハルではない可能性が高いから、高値で買わないこと、および、これをタージマハルとして売ると後でそうでないことが分かったときに大問題になるから、別名を付けて売った方がよい、というアドバイスをしました。N氏は私のアドバイスに従ってこれらの培養苗を買い、また名前も‘ホワイトサミット‘としました。

しかし台湾のX氏はその後それらの培養苗をタージマハルだとして中国などで相当な高値(1本8万円ということです)で大量に売ってしまったようです。ところがこの苗を買った人たちはマーチン・スコット氏に「台湾のX氏がマーチン・スコット氏から入手したタージマハルの培養苗だとして売っているが、これは本物か?」という問い合わせをしてきたのです。

自分が譲った苗をX氏がタージマハルという名で売っていることなど知らないマーチン・スコット氏は問い合わせに非常に驚き、SNSのフェイスブックのハオルシアグループに「自分はX氏にタージマハルという名で苗を譲ったことはない」、という警告を出しました。この警告を見た中国の人たちは、X氏に騙されて偽のタージマハルを買わされたということで、買い戻しなどで大騒ぎになっているようです。

その後、マーチン・スコット氏は私にもメールを送って来、顛末を説明しました。そのメールによると、X氏はその培養苗を売り出す前に、マーチン・スコット氏にそれを売ってもよいかという承諾と、親株の写真が欲しいというメールを送っているのです。それに対してマーチン・スコット氏は、「苗はすでにあなたのものだから、そうしたいならそうしてもよい。」という返事と、親株の写真をX氏に送っています。この返事の中では「タージマハル」という名は一切出ていません。

しかしX氏はマーチン・スコット氏から送られてきた親株の写真ではなく、マルクス氏のブログにあったタージマハルの写真を使い(無断使用ならば著作権侵害)、名前もタージマハルとして培養苗を売り出したようです。

X氏は送られてきた親株の写真を見て、これがタージマハルかどうか、マーチン・スコット氏に聞いてみるべきでした。メール1本で簡単に確認できるのにそれをせず、親株の写真もすり替えてタージマハルとして非常な高値で売ってしまったのは詐欺行為と言われても仕方ないでしょう。

ところでマーチン・スコット氏がX氏に送った親株の写真は、マーチン・スコット氏のフェイスブックに出ています(写真1=ホワイトサミット)。一方タージマハルの写真も同  じフェイスブックに出ています(写真2)。

写真1 ホワイトサミット Martin Scott 氏のフェイスブックより
写真1 ホワイトサミット

写真2  タージマハル(Taj Mahal)
写真2 タージマハル(Taj Mahal)

ホワイトサミットはタージマハルほどではないものの、非常に白い優良個体です。草姿はナタリー(写真3)に似ていますがずっと白く、ナターシャ(写真4)より白いです。タージマハルやナターシャほど白点に艶はありませんが、白点がより大きく厚い点で、ナターシャより高く評価できます。またホワイトサミットは大苗でも小苗でも白点が艶消しで、小苗でも白点に強い艶があるタージマハルとはこの点で区別できます。

写真3 ナタリー D=7.5
写真3 ナタリー D=7.5

写真4 ナターシャ D=7.5
写真4 ナターシャ D=7.5

ホワイトサミットは偽タージマハルとして売られてケチがついてしまいましたが、本来ならば優良新品種として紹介されるべき極上品種です。
今年9月18日付けのブログで紹介した④写真の個体はホワイトサミットではありませんでした。お詫びして訂正します。

また、よく出回っているタージマハルの写真(写真2)は中苗時のもので、大苗の姿は写真5です。

写真5 タージマハル大株
写真5 タージマハル(Taj Mahal)大株


なお先日のカクタスニシ祭りで配られた商標登録名と業界優先名を紹介した一覧表で、タージマハルは「特許庁最終判断で拒絶査定」となっていますが、これは正確ではありません。拒絶査定されたのは確かですが、これを不服として拒絶査定取消審判を申し立ており、現在審判中です。審判の結果が特許庁の最終判断となります。

また審判で拒絶査定が取り消されない場合は高裁(または知財高裁)、さらに最高裁に控訴、上告する予定です。これらの審判、裁判の確定をもって最終決定となります。

最終決定の前にタージマハルという名を使って販売すると、この名が登録できた後に損害賠償を請求される場合がありますのでご注意ください。他にもタージマハルと同じく、拒絶査定を不服として審判中の商標が多数ありますので、拒絶査定=自由に使える、と誤解されませんよう、ご注意ください。


<追記>
その後、私がマーチン・スコット氏にホワイトサミットは間違いなくタージマハルとは別物か尋ねたところ、次のような回答が来ました。

「この植物は2002年に自分がマルクス氏から譲り受けた野生株を育て上げたもので、タージマハルとはまったくの別物である。」

2002年はスプレンデンスの新産地が見つかった直後です。私(林)もその年にこの産地とマルクス氏の栽培場を訪れていますが、マルクス氏はまだスプレンデンスの実生を始めていませんでした。
タージマハルはマルクス氏の実生ですから、マーチン・スコット氏がマルクス氏からホワイトサミットを譲り受けたのが2002年だとしたら、それがタージマハルである可能性は全くありません。

コメントへの回答(最近のハオルシア市況について)

先日の記事(最近のハオルシア市況について)に関し、以下の質問が寄せられたので、追加で説明します。

「私は最近少し高め(数万円程度)の玉扇万象を購入したのですが、今後これらを親木に使い、所謂良品を作出しても、あまり高い値段はつけられなくなるのでしょうか。」

 質問者の『値段』というのはセリ会やネットオークションなどにおける取引価格のことだろうと思いますが、取引価格は玉扇・万象に限らず、需要と供給のバランスで決まります。良品であればそれを欲しいと思う人がたくさんいて高い値段が付きますが、最初に高い値段で買う人はおおむねそれを繁殖して商売にしたい人たちです。特に組織培養で殖やす人は2年ほどで数百本の苗が生産可能ですから、そうとう高額でも買うことでしょう。

しかし商売目的で、あるいは半ば商売で買う人はサボテン業者やいわゆるセミプロの人達で、その数は国内でせいぜい300人、日本市場で取引する外国人を入れても500人程度です。さらに最初の高い値段で新しい品種を買う人はそのうちせいぜい50人ほどで、あとは徐々に価格は下がり、商売目的で買う人の需要が一巡するころには価格は最初の値段の2~3割、時には1割程度まで下がります。
そのころには最初に売られた苗から葉挿しや組織培養で殖やされた小苗が流通し始めますから、それも考え合わせると、最初の苗販売から2~3年後には価格は最初の値段の1割以下に落ち着くと推測されます。

小売価格が3千円程度以下になると商売目的ではなく、それを買って観賞したいという実需で買う人が出てきますから、新品種が良品であればそこで需給のバランスがとれ、価格は千~2千円程度で安定するでしょう。もしそれが本当に良品ならこの価格でも全国で数万本売れます。

なお、この価格安定化のプロセスで、最初に売られた苗が繁殖され販売されたときに、それが本当に良品なら、販売された苗を見てそれを欲しいと思う人が増えて、最初の価格がなかなか下落しない、時にはかえって高くなるという場合があります。販売された苗が販売先で広告塔のような役割を果たすためです。しかしこれも一時的な現象で、最終的には「販売目的でなく楽しみたい」、という実需に見合う値段になるまで価格は安定しません。

また数年前までは優良品種の繁殖が進まず、常に供給不足でしたから、価格がなかなか下がりませんでしたが、組織培養が普及して、安価な苗が大量供給されるようになったため、一気に価格が低下して実需に見合う値段になりつつあるというのが今日の情勢です。

したがって、玉扇・万象に限らず、優良な新品種であれば最初は営利目的で買う人により高い値段が付きますが、最終的には実需に見合った価格、ハオルシアならおおむね中小苗で千~2千円、に落ち着くだろうというのが私の見通しです。

そこで問題なのが、玉扇・万象には果たして実需がどれくらいあるのか、ということです。つまり営利目的でなく、「繁殖しなくても良いから買って楽しみたい、観賞したい」、という愛好家がどれくらいいるのかということです。もちろん、営利目的ではなく、「自分で育てて楽しみたい、観賞したい。」という理由で、高額でも惜しまずに金を出す少数の、本物の玉扇・万象愛好家はいます。

しかし残念ながら玉扇・万象を高額で取引してきた大部分の人は業者かセミプロで、営利目的の人たちです。この人たちは金儲けが主目的ですから、組織培養などで優良品種をたくさん繁殖しても、価格維持のために販売を意図的に絞り、あるいはおよそ品種とは言えないような類似個体に次から次へと名前を付けて人気をあおり、自分たちだけでお祭り騒ぎをしてバブル価格を生み出してきた、と言えます。

また、目先の利益しか考えない人が多いので、優良品種を安価に供給して玉扇・万象の愛好家を増やしたり、特徴のある優良品種だけに名前を付けて品種の信用性を高めたり、さらには愛好家の利便のために品種名の統一に協力するなどという努力は一切せず、逆にそれと正反対のことばかりしてきた人たちです。玉扇・万象のマニアの大部分がこのような状態ですから、玉扇・万象の一般愛好家が増えないのはむしろ当然でしょう。

したがって白妙や玄武など、特徴のはっきりしたいくつかの優良品種を除くと、玉扇・万象の実需はほとんどない、というのが実態です。類似個体が多くて特徴の明瞭でない“品種”は値段がいくら下がっても、安いからと言ってそれを買って楽しみたいという一般愛好家がおらず、価格下落に歯止めがかかりません。


多くの園芸植物にはいわゆるマニア向けの品種と、一般大衆向けの品種とがあります。マニア向けの品種は多くの場合、性が弱かったり、癖が強かったり、あるいは成長が遅かったりしますが、うまく作ると素晴らしくきれいな花を咲かせる、といった品種です。一般大衆向けの品種は丈夫で成長が早く、誰が作っても安定してきれいな花を咲かせる、といった品種です。マニア向けの品種はそのような難しい品種をうまく作っている、あるいはその結果見事な花を咲かせている、ということで品評会で入賞することが多く、品評会向け品種とも言われます。

ハオルシアの場合、玉扇・万象、コレクサなどはマニア向け品種です。温室の中でピクサやスプレンデンスをまとめておいてあるところは白や赤の色彩が顕著で目立ちますが、玉扇・万象、コレクサなどのおいてある一角はほとんど緑一色で全く地味です。しかしよく見ればその窓の紋様は千差万別で、個体ごと、葉ごとに異なるなど、非常に面白く、その面白さにはまる人がマニアと呼ばれるわけです。

一方で、マニア向け品種は次第に大衆向け品種に品種改良されていき、丈夫で作りやすく、しかも素晴らしい花を咲かせるよう改良されていきます。玉扇・万象でも丈夫で作りやすく、しかも素晴らしい窓模様の品種が作出され、それが市場に安価に出回るようになれば、その紋様の面白さを理解する人が増え、愛好家も増えるはずです。

マニア市場では価格の高いことがステータスとされ、いかに高額で売買されるかが注目されます。しかし一般市場では価格の高さではなく、その品種が何本売れたかが評価基準です。例えば白妙や玄武が小売価格1本1000円でホームセンターなどで売られれば、おそらく全国で数万本以上売れるでしょう。粉雪やタージマハルなどのより派手な品種がこの価格なら10万本売れるかもしれません。

欧米でも当会の提携先が組織培養でハオルシア優良品種の繁殖を進めており、これらが日本市場よりはるかに大きな欧米市場で売り出されたら百万本単位で売れることでしょう。自分の作った品種がいくらで売れたかではなく、何万本売れたかを自慢するように、愛好家の意識改革をしていく必要があります。

また価格の安定性に関して、商標登録された場合その品種は許可なく輸入できませんから、海外からの安価な組織培養苗が大量に輸入されるのを防ぐことができます。登録商標名での無許可輸入はもちろん、無名や別名で輸入すれば密輸ですから、いずれ税関で輸入阻止(没収)されるようになります。

また商標の使用許諾条件に最低販売価格を指定できますので、国内での値下げ競争も回避できます。
このように価格安定の上では商標登録は非常に有効ですが、一部の業者やセミプロが当会の商標登録を阻止しようと妨害工作をしたり、別名を作って商標の使用を回避しようとしたりするのは、きわめて近視眼的です。

多くの有名品種ではすでに海外産培養苗が卸市場などを通じて、一般園芸店に出回り始めており、安価な海外培養苗との本格的価格競争が目前に迫っているというのに、これら業者やセミプロが商標登録に反対したり妨害したりするのは全く現状を理解しない、愚かな自殺行為というほかありません。
    

最近のハオルシア市況について

ここ10年以上高騰を続けていたハオルシアの価格ですが、中国などで高額品の組織培養による大量生産が進み、その苗が日本に逆輸入されて今年春から大幅な価格下落が起きています。昨年夏と見られるピーク時と比較するとおおむね半額以下、品種によっては3割程度にまで下落し、今後もこの傾向は続くと見られます。そうなると、価格高騰を期待して流入していた中国などの投機マネーも一斉に引き揚げますので、価格下落にますます拍車がかかるといった状況です。

一方、一時全国で被害が出ていたハオルシア泥棒ですが、昨年11月の関東での事件(被害額約5千万円)を最後に、今年に入ってからは被害の情報が入っていません。危険を冒して盗み出しても売りさばく相手がいないという状況なのでしょう。ただし警戒が緩んだところを狙われることもあり、犯人が日本人ということもありますから警戒は怠らないようにしてください。なお把握している限りでは盗難事件は昨年までに全国で38件、時価推定の被害総額は17億円近くになります。

ところで価格が大幅に下落している品種はおおむね投機マネーによってバブル価格となっていた高額品です。その代表は玉扇と万象ですが、この2種は15年ほど前にも価格が暴落した時がありました。その時にはハオルシアの市場は国内だけで、かつ小規模なマニア市場しか存在していない状況でしたから、1990年代後半から続いていた玉扇・万象ブームが一巡し、市場が飽和状態になると一気に価格が暴落し、狼狽した業者が投げ売りをしても買い手がつかないこともあったようです。

ところがハオルシア人気が中国など近隣諸国に広がり始め、市場が海外で拡大すると、再び玉扇・万象の価格が上昇をはじめ、価格が上昇すると値上がり期待の海外投機マネーが流入し始め、ますます価格が上昇するという展開になり、それが昨年まで続いていたわけです。

この価格上昇につられて、それまでサボテンの牡丹類や花籠など、高額品を中心に扱っていた業者やセミプロなどが一斉にハオルシア、特に玉扇・万象を売買するようになり、趣味家から業者に転向する若手も雨後の筍のように出てきました。しかしこれらの人の多くはハオルシアが好きというより、高額品が好き、金もうけが第一の人達ですから、愛好家(消費者)の利便やハオルシア園芸全体の発展より目先の利益優先で行動するという問題点があります。

前回の暴落と違い、今回の暴落にはその救済となる新たな海外市場は期待できず、さらに組織培養による大量繁殖が背景にあるというわけですから、再び価格が上昇することは期待できません。加えて新たに開業したような若手業者が主眼とするマニア市場は、拡大を始めたハオルシアの一般市場に侵食され、今後市場規模はむしろ縮小していくと見られます。 

つまり、これまでマニア市場でしか流通していなかった優良品種が組織培養により花屋やホームセンターの園芸売り場で廉価で買えるようになることで、それまでサボテン業者やネットで買っていた人たちが、むしろ花屋やホームセンター漁りをするようになるというわけです。もちろん新品種や繁殖しにくいものはこれまで通りマニア市場で売買されるでしょうが、その期間は、それらが大量繁殖されるまでのせいぜい3年くらいとなるでしょう。

さて、玉扇・万象がなぜこのような暴騰と暴落を繰り返すのかというと、その根本的な理由は趣味家人口(=市場)が小さいということに尽きます。玉扇・万象の趣味家人口はハオルシアマニアの人口とほぼ同じで、国内では千人弱程度です。中国ではこの10倍のマニアがいるとしても全部で1万人程度ですから、少し投機マネーが動けば簡単に暴騰や暴落が起こってしまいます。

一方、オブツーサ系やレース系などのマニアも同じく国内でせいぜい千人程度です。しかし玉扇・万象と違い、これらのグループにはマニアではない一般愛好家が30万人から最大100万人程度いると見られます。玉扇・万象にはこのような一般愛好家がほとんどいません。

一般愛好家がたくさんいれば、価格が下落した時にそれらの人が買い支えますから暴落はしませんが、玉扇・万象は一般愛好家には不人気なので、価格が下落しても買い支える一般愛好家がおらず、マニア間で一巡してしまうと後は買い手不在で暴落してしまいます。

玉扇・万象はその模様の変化が面白くてマニアに人気なわけですが、一般愛好家にはほとんど同じに見え、細かな違いは理解されません。また名前の付けられている品種は非常に多いですが、その多くはラベルがなければ区別がつきません。つまり「品種とは類似他品種と識別可能なもの」という基本原則からすればおよそ品種とは言えない類似個体に名前が付けられて売られているわけですから、一般愛好家からそっぽを向かれるのも当然でしょう。

しかし玉扇・万象が一般愛好家に不人気なより根源的な理由は、それらが「美しくない」と思われているからです。窓模様の変化は確かに面白いのですが、玉扇・万象の窓は不透明で、透過光で鑑賞したり、日照条件による窓の輝きの変化を楽しむことはできません。もちろんどちらを「美しい」と思うかは好みの問題ですが、人数で言えば圧倒的に多くの一般愛好家が透明な窓を鑑賞できるオブツーサ系やレース系などの方が「美しい」と思っていることは否定できません。


さてマニアに人気なのは玉扇・万象ばかりではなく、ピクサ、スプレンデンスなどのレツサ系もありますが、これらは玉扇・万象と異なり、マニアだけでなく、一般愛好家にも非常に人気です。透明な窓はありませんが、窓全体が赤や白の斑紋や結節で覆われる派手な品種が多数あることがその理由でしょう。一般愛好家にも人気が高いことから、玉扇・万象の暴落に引きずられて多少は価格下落しても、玉扇・万象のような暴落はしないでしょう。

スプレンデンスは窓に強いつやがある点でピクサより美しいと評価する人が多く、全ハオルシア中、最も美しいと評価する人もいます。特に白系品種にはタージマハルなど、真っ白な品種が多数あり、昨年は海外で150万円で落札された個体があり、他にもう1個体が100万円超で落札されています。ピーク時の玉扇・万象なみの価格ですが、これも中国の投機マネーの影響と見られ、現在ならおそらくその半額以下になるでしょう。ただし一般愛好家にも非常な人気ですから、一定以上は価格下落しないと見られます。

① 昨年約150万円で落札された株
① 昨年150万円で落札された個体

②  ①の兄弟か実生と見られる株
②  ①の兄弟か実生と見られる個体

③  同じく①の兄弟か実生らしい。
③  ①の兄弟か実生と見られる個体

④ 'White Summit'台湾でタージマハルとして繁殖された?
④ 'White Summit' 台湾でタージマハルとして繁殖された個体

これら高額で取引された白系スプレンデンスのいくつかを紹介すると、①は昨年150万円で落札された個体、②、③はその兄弟か実生と見られる個体、④は台湾でタージマハルとして組織培養されものと見られる個体です。台湾でタージマハルとして繁殖された個体は、由来や経路を調べてみるとタージマハルとは別個体の④である可能性が高く、ホワイトサミット(White Summit)と命名されました。タージマハルほどではないですが相当白い個体です。白系スプレンデンスはほかにも素晴らしい個体が育成されていますが、それらは次号ハオルシア研究で紹介します。

中国でのハオルシア人気はおおむね日本の流行の10~15年あとを追いかけていますので、玉扇・万象から始まり、ピクサ、スプレンデンス、さらにはオブツーサ系、レース系へと進むと見られる人気の推移からすると、中国での次の流行はスプレンデンスになると見られます。事実①のスプレンデンスを150万円で落札したのは中国人だということです。

日本でもスプレンデンスの流行は始まったばかりで、優良品種の培養苗などが市場に出回るようになってから本格化すると見られます。その場合、培養の小苗などは相当安く販売される可能性がありますが、例えば写真①、②、③の小苗が卸市場を通じて1本2千円で花屋などの店頭に並べば、おそらく各1万本は売れるでしょうから、3品種で6千万円の市場が見込まれるということになります。


次にオブツーサ系ですが、一時かなり高騰していた紫オブトの価格も安定してきて、大株で3~5千円程度、中小苗なら1~2千円程度とほぼ妥当と思われる価格になっています。ブラックオブトはまだ高いですが、繁殖が進めば紫オブト並みになるでしょう。

一般市場には「薄紫」がかなり出回っていますが、これは分類上は紫オブト(H. vista) ではなく、特大型のH. ikraだと見られます。そのため非常に仔吹がよく、まめに仔を取ってやらないと形が崩れてしまいます。しかし単頭で作れば直径は8cm近くなり、完全無毛丸頭なので、園芸上は紫オブトの一つとして扱っています。

「薄紫」は相当な弱光下で育てても徒長せず、扁平に形良く育てられます。紫オブトは光の強さが6千ルクス以上ないと徒長してしまいますが、薄紫は4千ルクスでもほとんど徒長しません。通常の明るい室内は4千ルクス程度ですから、室内で育てる場合、紫オブトは徒長してしまいますが、薄紫は徒長させずに育てられるということになります。

オブツーサ系で最人気なのはその斑入り、オブト錦です。最近はマリン(宝草錦x紫オブト)や京の花火(京の華錦x紫オブト)などに紫オブトを戻し交配したと思われる斑入りが多数作られ、それぞれに名前を付けて売り出されています。初期に作出されたものに「残雪オブト錦」とか「花水晶」とかの名前を付けることは、他に類似品種がないわけですから問題ありませんが、最近のように類似の斑入りが多数作出されるようになると、個別個体にそれぞれ別名を付けてもラベルなしには識別不能ですから、正しい品種とは言えず、すべて単にオブト錦となります。

同じような現象はすでに玉扇、万象、コレクサなどで起こっており、これらの斑入りは特別なものを除きすべて単に玉扇錦、万象錦、コレクサ錦として取引されており、それで何の混乱も起こっていません。例えば実生の玉扇錦に順に名前を付けたとしても、そのほとんどはラベルなしでは識別不能ですから、それらは品種ではなく、名前を付けるとかえって混乱を招くことになります。

マリンや京の花火は簡単に再作出でき、かつ繁殖も容易ですから、多数の親株をそろえられ、それらに紫オブトを戻し交配すれば相当な確率でオブト錦ができます。したがって今後も多数の新しいオブト錦が作出されるでしょうが、それらは特別なもの以外すべて単にオブト錦として扱われるべきです。名前を付ければ売れるからとばかりに、類似個体に次から次へと名前を付けて売り出す業者やセミプロの素人だまし商法には注意してください。

そのような次第で、多くの育種家がマリンや京の花火を使って多数のオブト錦を作出しており、さらにその多くはマリンや京の花火と同様に繁殖容易と見られますから早晩多数のオブト錦が市場に出回るようになるでしょう。そうなれば価格も相当低下するはずです。繁殖力の強さからして、10年もたてばこれらオブト錦は今の宝草錦や京の華錦のような存在になるかもしれません。

最後に紫オブト以外のオブト系やレース系はH. davidiiやH. venustaなどを除くと、まだほとんど市場に出回っていませんが、私自身の好みからすると全ハオルシア中、最も美しいと思われる種が多数あります。現在のマニア市場向きではありませんが、繁殖が進んで一般市場に出回るようになればおそらく大人気になると思われます。それらの種についても折を見て順次紹介していく予定です。 


なお、この記事は玉扇・万象の暴落に狼狽したり当惑している収集家のために書いたものです。玉扇・万象の暴落はこれまでの価格が投機マネーによるもので、マニア層にしか市場がないので当然の結果です。しかし一般趣味家人口の多いピクサやスプレンデンス、オブツーサ系などでは玉扇・万象につられて高騰したバブル分の下落はあってもそれほど大きな価格下落はないだろうという見通しです。

玉扇・万象の暴落につられて安くなった今が買い時という見方もありますので、狼狽様子見をして「あの時買っておけば」ということのないよう、ご注意ください。一方、オブト錦は今後大量に育成・繁殖されるようになると見られますから、むしろ時機を見て購入する方がよいです。

また組織培養では原則的に小苗しか生産できませんから、一般趣味家の実需がある品種群では大苗の価格はそれなりに維持されるでしょう。

ブログのコメントへの回答(3)

5月31日に更にコメントを頂いておりますのでこちらにて回答致します。

『ハオルチア協会の意図がグループ品種の登録だったとしても種小名は類似の商標になり同様に規制されます。大文字と小文字は学術面では違いますが、商標においては類似の商標と認められます。
逆にlividaが「普通名称」なのであればLividaを登録するのは不可能です。残念ながら特許庁の担当者にはあまり詳しい方がいなかったようで通ってしまったようですが。
大体「学名が「普通の名称」に当たるかどうかは特許庁が判断することです。」と書いていますし学名を商標登録したと理解していますよね?
学名を一般的には使われていないからと商標に登録し一部の人間の利益として利用するのは良識のある判断とは到底思えませんが如何でしょうか。
例えHaworthia lividaについては問題が無かったとしてもUtricularia lividaやOxalis lividaなどの商品表示まで商標権の侵害になってしまいますがその点はどうお考えですか?』

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まずこの問題のこれまでの経緯と現在の状況を整理しておきましょう

(1)ハオルシアではこの数十年ずっと人気が拡大してきていますので、常に大量の初心者がいる状況が今日まで続いています。これが今回の事件の大きな背景です。

(2)ところが一部の大手サボテン業者はこの状況を利用して、有名品種の名前や類似した名前を勝手に別の品種に付けて販売し、あるいはすでに一定の名前で流通している品種に勝手に別名をつけて新品種であるかの如く装って発売し、さらには名前を付ければ売れるからと特徴の乏しい雑種の実生兄弟に片端から適当な名前を付けて売り出すなど、品種名をごまかして初心者をだますような商売を続けてきました。これが問題の発端です。

(3)そこで当会は明治以降のハオルシア品種名1万件以上を、園芸植物名の国際標準である国際栽培植物命名規約に基づいて7年かけて整理し、これを2013年に「ハオルシア品種名総覧」として出版しました。この出版が評価され、2014年には国際園芸学会から当会がハオルシアの国際栽培品種登録機関に指定され、代表理事の林がその登録人に指名されました。

(4)当会はこれをもとにサボテン業者らにハオルシア品種名の統一を呼びかけましたが、品種名が統一されると品種名をごまかす商売ができなくなるので、前記業者らはこぞってこれに反対し、国威栽培植物命名規約を無視すると宣言し、あるいは無視を呼びかけ、さらには品種名統一を進める当会に協力しないように同業者や顧客に圧力をかける始末でした。

(5)そこで当会はやむを得ず、品種名統一の手段としてこれら業者やその追随者に強制的に正名を使わせ、あるいは異名や重複名を排除するために、重要な品種名を商標登録することにした次第です。

(6)したがって当会の登録商標は当会が独占的に使用するためではなく、利用者に国際栽培植物命名規約に基づいた正名を使ってもらうことが主要目的です。そのため、使用許諾を非会員にも開放し、使用料金も包括契約でごく低額に抑ええています。また今後は会員など第三者が使うための公益目的での登録であることを明確にするために、一般の商標ではなく団体商標とする予定です。

さて、種名(正しくは種小名。以下同じ)を商標登録することに対する批判ですが、あなたは商標が名前(名辞)だけのものである、という基本的事項を見落としているようです。申請された商標が個体品種名かグループ品種名か、はたまた種小名かは商標審査上問題ではありません。商品区分が31類(生きた動植物)だからといって、申請された名前が品種名であるとは限りません。花輪や寄せ植え、ドライフラワーの商品名かもしれませんし、盆栽の銘(号名)かもしれません。商標は品種登録と違い、その名前が何を指すか(何の名前か)は基本的に問題外です。

さらに商標法上、学名や種名が登録不可ということはどこにも書いてありません。審査上問題となるのはその名前が商品区分や指定商品分野で取引業者や需要者がその名前をすでによく知っているか、その分野で他に同じ名前が使われていて混同する恐れがないか、などです。この「取引業者や需要者の間でよく知られ、使われている」ことが「普通の名称」という用語の意味です。種名あるいは学名だから「普通の名称」あるいは「普通名称」というわけではありません。(種名は普通名詞(概念の名)ではなく、固有名詞と考えられています。)

学名に限らず、一般に使われていない名前を商標登録するのは当たり前の話です。すでによく知られている名前では登録できません。ただしこのところ毎回のようにブログでお知らせしている通り、当会では登録した商標を独占することはせず、非会員も含めて低額で一般公開します。登録商標を独占したり、高額の使用料を徴収する予定はありません。

それにもかかわらずあなたは「学名を一般的には使われていないからと商標に登録し一部の人間の利益として利用するのは良識のある判断とは到底思えませんが如何でしょうか。」と故意に曲解し、非難しています。「一部の人間の利益として利用する」などと言う表現はまったく悪意を持った中傷で、「良識のある判断」をするべきなのはあなたの方ではないですか?このところ数回のブログをよく読み直してください。

匿名であることを隠れ蓑に、このような悪意を持った曲解や中傷をすることは名誉棄損になりますので、ご注意ください。また今回は対応しましたが、あなたに限らず、このような当会の信用失墜を狙った悪意のある曲解や批判、中傷に対応するのは時間の無駄ですから、今後は一切対応せず、投稿されたコメントも表示しません。

当会の商標登録に反対する人は、登録されたらその名前は使えない、と誤解しているようですが、会員、非会員にかかわらず、当会との包括契約により簡便かつ低額で使用できます。国際栽培植物命名規約の遵守が条件ですが、国際栽培植物命名規約の遵守は園芸愛好家にとっては当たり前の話です。

それにもかかわらず、種名は商標登録すべきでない、などと商標登録に反対したり批判したりする本当の理由は、品種名の統一に反対する業者などから種々の便宜供与を受けているためでしょう。しかしそのような行動は利己的な損得を優先して愛好家全体の迷惑を無視することになる、ということをよく考えてください。

商標に限らず、特許でも意匠でも、なるべく広い範囲で権利が取れるよう工夫して申請するのは常識です。それが知的財産権というものの基本的性質です。種名的品種名やグループ名は対象範囲が広いから登録すべきでないなどという批判は論外で、「良識」の問題ではありません。そのような対象の広い商標は独占すべきでないから、他の人も使えるようにすべきだ、という主張なら一理ありますが、それも権利者の判断次第です。

繰り返しになりますが、何よりも商標というものが名前だけの話で、それが何を指し示すか、(個体品種か、グループ品種か、種か、あるいは生花やドライフラワーの商品などか)ということには関係ないという点を再確認する必要があるでしょう。学名か種名かなど、言葉の指し示す対象の属性によって登録の可否が決定されるのではなく、その言葉が、指定商品の取引業者や需要者の間でどの程度認識され、使われているかが基本的な登録基準です。

最後にUtricularia lividaやOxalis lividaも確かに当会商標権の対象ですが、ハオルシア以外の属について「Livida」商標の使用を希望される方には無償で使用を許諾します。

☆コメントは承認後に公開されます。
☆品種等の質問はハオルシア協会会員に限定します。

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