まだら系は葉、特に葉裏にまだら模様(斑紋)があり、模様がきれいな上にそれが個体ごとにかなり異なるので人気が高い。線模様の変化を楽しむ玉扇、万象、コレクタなどと、点模様の変化を楽しむピクタ、スプレンデンス、ピグマエアなどとの中間的存在である。

 

しかしまだら模様は線模様よりは変化を識別しにくいので、かなり特徴的な模様でないと大同小異となってしまう。大同小異の個体は玉扇、万象、コレクタをはじめ、ピクタやスプレンデンスでも全く人気がない。

育種には付き物の存在だが、基本的にこれらは捨てられるべきものである。ただそれらの中にも次世代の中間的育種材料として利用できるものもあるので、それらを販売することが非難されるわけではない。

 

一方、まだら窓を持つ種は非常にたくさんあり、そのほとんどは育種されていないどころか、原種自身もほとんど出回っていないという種が多い。育種という点では今後最も大きな伸びしろが期待できるグループである。まだら系は園芸的なまとまりで、分類的には多くの異なる系統を含んでいる。


その一つがH. limbataの仲間で、H. dimorphaH. maculateの子孫群と思われる。これまで輸入された多くはDe Doornsの鉄道トンネル付近で採集されたものだが、その近くのOsplaasには斑紋の多い良型が生えている。

limbata  12-71 Osplaas, De Doorns D=10  (3)
H. limbata MH12-71  Osplaas 3号鉢

またそのすぐ北のHexrivierKanetvlei付近にはやはり斑紋が大きくて葉先の短いきれいな個体群がある。

hexia 10-318-1  D=8  (3)
H. limbata  MH10-318-1  Hexrivier  3号鉢

これら最近採集されているきれいなH. limbataはほとんど出回っていないが、育種素材としてはもちろん、そのままでも十分鑑賞できる。ただし、難物H. dimorphaの影響を受けているため、やや弱いので要注意である。

 


H. limbata
の系統は北上してH. variegateの系統と合流し、H. nortieriグループになったと推定される。H. nortieriは非常に広範に分布し、花や葉の特徴からいくつかの種が分離できる。花色ではオレンジ花のH. latericia、葉色ではやはりオレンジ色葉のH. citrinaが識別できる。そしてあまり注目されていないが、H. nortieri自身にも非常にきれいな個体がある。

nortieri  夕映え-3 D=12 (6)
H. nortieri  「夕映え」 Klan William 「残照」と同じ産地

nortieri 07-70-6 D=9.3  (3)
H. nortieri  MH07-70-6  Klawer  葉表にも鮮明網目

 

H. lividaはまだら系としてはもっとも人気が高く、美しい種だが、残念ながらかなり小型で直径はせいぜい3~4cm程度である。しかしH. livida同様に美しく、かつ大型で直径9cm以上になるH. neolivida n.n.という種がある。産地的にはH. lividaの産地から約20km離れているので、明らかに別種である。採集された個体数が極めて少ないらしく、ほとんど出回っていないが、大変美しい種である。

H. neolivida   (3)
H. neolivida  Robertson    3号鉢


IMGP8964 (3)
H. neolivida  Robertson  3号鉢

 


鬼武者は稔性が低くて結実させるのは難しいが、その交配実生にはH. neolividaに似た、斑紋の大きな美個体が良く出る。鬼武者が親なのでH. neolividaよりさらに大型で、褐色肌に透明斑紋が美しい。「鬼まだら」と命名された。ただし鬼武者に似て、稔性は低い。

鬼まだらA (3)
鬼武者交配 「鬼まだら」A 3号鉢 


鬼まだらB   D=12 (3)
鬼武者交配 「鬼まだら」B 3号鉢

鬼まだらC (3)
鬼武者交配 「鬼まだら」C 3号鉢

 

パリダやレテキュラータもまだら系だが、斑点(斑紋)が不透明なので上記のまだら系とはやや趣が異なる。特にパリダには非常に強刺の個体があり、ゴリラ系と呼ばれている。(「ゴジラ」は東宝(株)の防護商標なので、「ゴリラ」に変更)

 
ゴリラ系にはゴリラ23から27と、キングコング、越智、ステゴザウラ、白い悪魔がある。ゴリラ23と越智を除くとほとんど仔吹しない。多くはパリダにしては非常に大型で、3号鉢一杯以上になる。特にキングコングはそれまで最大型と言われていたゴリラ24より一回り以上大きい。


キングコングA 9429 (4)
強刺パリダ 「キングコング」A  3号鉢

キングコングB D=10.5 (3)
強刺パリダ 「キングコング」B  3号鉢


ゴリラ系は強刺の他に非常に大きな斑紋が特徴で、まだらというより、トカゲや蛇の蛇紋(ブロッチ模様)を思わせる。紋様の新しいパターンとして品種改良が見込まれる。

ゴジラ23 043 (4)
強刺パリダ 「ゴリラ」23 3号鉢

ゴジラ24  (3)
強刺パリダ 「ゴリラ」24 3号鉢
 

ゴリラ27 D=9 (3)
強刺パリダ 「ゴリラ」27 3号鉢


ゴリラ系の改良品種はまだ非常に少ないが、パトリシアは特に美しいものである。葉のほとんど全部がまだら窓という特美品種だが、大苗より中苗時が特に美しい。


IMGP8969 (3)
ゴリラ系交配 「パトリシア」 大株 3号鉢

パトリシア 4 D=8  (6)
ゴリラ系交配 「パトリシア」 中株 3号鉢

 

最後にご紹介するのはグラシアの交配種である。グラシアはH. limbataに大型のH. triebnerianaをかけた品種で、葉の半分以上がまだら窓になる。グラシアを交配親に使うと、かけた相手によって実にいろいろな面白い実生苗ができる。

③ D=7 (4)
グラシア交配① 3号鉢 
ベヌスタ系との交配らしい。

② D=8.5 (3)
グラシア交配② 3号鉢 H. koelmaniorumとの交配かも知れない。

グラシア交配②は交配相手がH. koelmaniorumかも知れない。もしそうでないとしても非常に面白い顔をしている。

④ジェラシー (3)
グラシア交配③ 「ジェラシー」

グラシア交配「ジェラシー」は大型で窓が非常に大きく、完成すると葉の半分以上が窓になるのではないかと期待している。