H. pallens Breuer&Hayashiという種はGrahamstown郊外 北東数キロメートルのところに生えている植物です。Alsterworthia International誌のSpecial Issue 7の7ページ(2004) に正式発表されています。

おおむね全緣(無鋸歯)ですが、鋸歯のある個体もしばしば見られます。やや黄色味を帯びた、尖った葉先の艶のある浅緑色葉で、葉先はスリット様透明部が集合して比較的大きな窓となります。中小苗の内は単頭ですが、大きくなると仔吹して群生します。

この系統はH. teneraの無鋸歯型(H. denuda n.n. Pluto’s Vale)が大型化したもので、H. caerulea (Helspoort)からH. pallens (Grahamstown)、H. yocans n.n. (Gladhurst)、H. elegans n.n. (Koonap Bridge)、H. hogsia n.n. (Hogsback)、H. speciose n.n. (Thomas River)などがこのグループです。

この仲間は尖った葉先に窓のある浅緑色葉の一群で、オブト系とシンビ系との中間的存在です。窓の大きなきれいな個体はオブト系に近いですが、窓の小さな個体は細葉のシンビ系といった感じです。

なお、仙女香は原種ではH. pallensに最も近いと見られますが、H. pallens そのものの斑入りではなく、斑性から考えるとおそらくミルキークラウド(オブト交配の白ノリ斑)にH. pallens(あるいはH. seturifera)がかかったものではないかと推定されます。

斑性は非常に遺伝性が高いので、交配親の推定には有力なデータです。白斑はオブト系、シンビ系に限らず、非常に少ないですが、その中で仙女香に最も近い斑性の植物はミルキークラウドです。

仙女冠も白ノリ斑ですが、こちらはほぼ完全なノリ斑(周縁斑)で、スジ斑の部分があったとしてもおおむね源平斑(大模様の斑)です。一方、ミルキークラウドはノリ斑と細かなスジ斑が混ざった斑で、この斑性は仙女香と同じです。

ミルキークラウドは奇形花で一般に不稔ですが、まれに正常な花が咲き、これは受精可能ではないかと見られます。おそらくそのような正常花が咲いたときに偶然H. pallensかH. seturifera の花粉がかかり、仙女香ができたのではないかと推定されます。

ミルキークラウドが結実するチャンスは非常に少ないものの、結実すれば少なくとも5~10粒程度の種子ができたのではないかと考えられます(あまり少ないと子房が肥大せず、途中で落果してしまう)。したがって仙女香には実生の兄弟株の存在が考えられます。

私のところには2系統の仙女香があり、一つは一般的な仙女香、もう一つはより大型で仔吹しないタイプです。小さいうちは全く見分けがつきませんが大きくなるとサイズと仔吹性で差が出てきます。どちらも同じ仙女香という名で入手したものです。

そうして見ると、掲示板で質問のあった”仙女香“も同じ実生兄弟の異個体という可能性があります。標準的な仙女香よりやや棒状葉という個体です。あるいはほかにも別タイプの異個体があるかもしれません。もう少しデータやサンプルが集まった時点で改めて整理する必要があるかどうか判断したいと思います。

最後に、仙女冠はH. seturifera の原種そのものの斑入りで、雅楽殿白斑といわれていたものから出現した全斑です。