5月末に発売された「多肉植物 ハオルシア」ですが、売れ行き好調で11月10日に増刷版が発売されました。
増刷に合わせて第1刷での印刷ミスが訂正され、また一部追加された文章もあります。

第1刷での印刷ミスは15ページ右上の南アフリカの地図で、地名が一部誤っていたのを今回訂正しました。
また13ページ下の分類表で、第1刷では硬葉系の具体的グループ名が入っていませんでしたが、今回の第2刷では代表的なグループ名を入れました。
他には大きな訂正はありません。

いずれにしろ、発売から半年もたたないうちに増刷されるというのは、ハオルシア人気の高さを端的に象徴しています。

この本はこれまであまり紹介されることがなかったレース系やオブト系、まだら系などに力点を置いて編集されましたが、この仲間が一般市場におけるハオルシア人気の中心であることは、この仲間にスポットを当てた本書の成功でより一層明らかになりました。

サボテン業者や長老マニアたちを中心としたハオルシア趣味家は、高値で取引される玉扇、万象にばかり注目していますが、玉扇、万象を何万円もの価格で取引する趣味家は日本国内でせいぜい300人、どんなに多く見積もっても1000人はいません。中国でも1万人はいないでしょう。

一方、レース系やオブト系、まだら系などが好きな趣味家は主婦やOLなどの女性を中心として日本国内で少なくとも10万人、おそらく30万人はいます。これらの趣味家は1株千円程度、高くても3000円までの苗を買って室内や窓辺などで楽しむ層です。
したがって高額品ばかり出品される趣味家のセリ会などには顔を出しませんし、顔を出してもレース系やオブト系、まだら系などの欲しいものがありません。もっぱらホームセンターや花屋の店頭あるいはヤフオクで物色したり、仲間内で繁殖品を交換し合うという層です。しかしこれらの趣味家が本当に欲しいものがなかなか一般市場に出てこないのが現下の問題点です。

玉扇、万象を中心としたここ10数年のバブル現象もいよいよ終わりが見えてきました。高額品が培養によって大量に繁殖され、値下げ競争になって大幅に安くなっています。例えば万象の'南アの星‘は今年初めには中苗で50万円程度の値がついていましたが、最近では同程度の苗がわずか5万円程度です。1年で価格が1/10になったわけです。他の品種も同じ傾向です。培養を止めることができない以上、この傾向は強まりこそすれ、弱まることはないでしょう。

'南アの星‘のように窓模様がそれほどでもなく、サイズが大きいだけという品種、あるいはドラゴン亜流、雪国亜流のような特徴の乏しい品種は培養が始まれば価格は急速に下落します。一方、白妙やドラゴン、あるいは玄武のような特徴があってなおかつきれいな品種は価格低下すればマニア以外の一般趣味家も買っていきますから、それほど大幅には価格低下しないとみています。

話を「多肉植物 ハオルシア」に戻しますと、レース系やオブト系、まだら系にスポットを当てたこの本が好評だったことは、これらの植物を愛する趣味家が想像以上にたくさんいるということを象徴しています。これまでこの仲間はあまり育種が進んでおらず、知られている優良品種はかなり限られています。市場(一般)に出回る品種はさらに限られています。

しかしこの仲間には全く息をのむほど美しい品種がまだまだたくさんあります。それらの品種を紹介し、育種家の繁殖を後押しして一般市場に供給されるのを手助けすることも当会の大きな役割だと考えています。そのような新品種の一部が次号ハオルシア研究33号にも紹介されます。(33号は12月に発行されます)

なお、この本に対するアマゾンの読者コメント欄にハオルシアの品種名統一に反対する業者やその仲間と思われる人からの否定的なコメントが多数投稿されています。市場に流通している名前にそぐわないとか、林氏の独自名が多いとかいう批判もありますが、この人たちが言う「市場」とはサボテン業者を中心とした狭い趣味家市場であり、はるかに大きい一般市場の話ではありません。

この本の中で、サボテン業者たちが勝手につけた、国際基準に合致しない名前を使わないのは当然です。また監修者の林は国際園芸学会から指定されたハオルシア品種名の世界で唯一の登録人で、新品種名の登録可否を決定する権限や市場で混乱している品種名を整理し、正名を決定する権限を与えられています。したがって林の独自名は国際的な正名になるわけですし、それらの新しい品種名は毎年国際栽培品種登録機関の本部に報告されています。