不正表示について (1/3)の続きです。


 「京の華錦」は「宝草錦」以上に結実性が低いため、その交配種はそれほど多くありませんが、斑色に透明感があるので「えびす錦」⑪のように斑色に透明感のあるきれいな斑入り品種ができます。ただし一般的に体色は薄いです。なお「えびす錦」には当初発表された個体の他に、より透明感の低い斑色のものがあり、これが出回っています。別個体の可能性があると思われますので、暫定的にこれを「えびす錦B」⑫、当初のものは「えびす錦A」⑪とします。

⑪えびす錦A
⑪えびす錦A

⑫えびす錦B-CactusNishi
⑫えびす錦B (カクタスニシブログ 2012-4-17より引用)


 「京極錦」⑬は奈良多肉植物研究会のオークション(奈良オク)に『グリーンオブツーサ交配種錦』として出品されたものですが、明らかに「京の華錦」にオブツーサ(たぶん青ブドウ系)をかけたものです。斑色も含め、全体に透明感があるので「マリン」よりきれいです。

⑬京極錦-グリーンオブツーサ交配種錦Nara
⑬京極錦(グリーンオブツーサ交配種錦:奈良多肉植物研究会オークション2015-1-4より引用)

⑭京の花火-花火Nara
⑭京の花火(花火:奈良多肉植物研究会オークション2016-2-3より引用)

 「京の花火」⑭も奈良オクに『花火』の名で出品されたものですが、”花火”という名は他にも使われており、混同を避けるために「京の花火」としました。「京の花火」は「京極錦」より「京の華錦」に近い形態です。ただし葉は「京の華錦」より厚く、棒状です。

⑮福美人-花ダルマオブツーサ
⑮福美人(ヤフオクより引用)

⑯福美人-ギなしクーペリー
⑯福美人(ヤフオクより引用)

⑰福美人-ジョイアエ
⑰福美人(ヤフオクより引用)

⑱福美人錦-オブツーサ交配種錦Nara
⑱福美人錦(オブツーサ交配種錦:奈良多肉植物研究会オークション2016-2-3より引用)

 ロツンダはシンビフォルミスの仲間ですが、窓が大きくてオブツーサに近い形態の「福美人」(たぶんオブツーサとの交配品種)が以前からあります。表皮が薄く、プリプリした葉質が特徴です。前出のAさんがヤフオクに『花ダルマオブツーサ』⑮として出品したものがこれです。また他の人からも『ノギなしクーペリー』⑯とか『ジョイアエ』⑰などの名前で出品されています。さらに奈良オクで『オブツーサ交配種錦』⑱として出品されたものはこの斑入りの「福美人錦」です。この個体は正しくは「京の華錦」との交配と思われますが、形態的には「福美人」とほとんど同じなので「福美人錦」と呼んでも差支えないでしょう。

 なお「福美人」はたぶんロツンダとオブツーサとの交配で、葉はかなり丸棒状です。よりロツンダに近い、「福美人」の兄弟と思われる平葉の個体がヤフオクでAさんから『オブツーサ三角葉タイプ』⑲、⑳として出品されていました。しかしこれらを『オブツーサ』と呼ぶのは誤りですから、これを「碧美人」(あおびじん)としました。またこれらより窓が大きく透明な個体が『花火』㉑という名で出品されていますが、前述のように『花火』という名は他にも使われています。そこでこれを「花美人」と呼ぶことにします。

⑲碧美人A-オブツーサ三角葉
⑲蒼美人A(ヤフオクより引用)

⑳碧美人B-オブツーサ三角葉タイプ
⑳蒼美人B(ヤフオクより引用)

㉑花美人-花火
㉑花美人(ヤフオクより引用)


 これらロツンダ交配の仲間は全体に透明感が高くきれいなので、正確な名前で、素性を明らかにして出品すれば、オブツーサなどとごまかすよりむしろ高評価されるでしょう。

 ロツンダ以外にもオブツーサと混同されているシンビフォルミス系の種がいくつかあり、それをまとめたものが表3です。
obtotable02172016-3


 ジョイアエはよくオブツーサと混同されますが、鮮緑色の葉色と窓に入る太い網状葉脈とが特徴で、慣れればすぐ区別ができます。㉒は『オブツーサhyb. 美葉』としてヤフオクに出品されたものですが、間違いなくジョイアエそのものです。

㉒ジョイアエ-オブツーサhyb美葉
㉒ジョイアエ(ヤフオクより引用)

㉓ジョイアエ交配-太線オブツーサ
㉓ジョイアエ交配(ヤフオクより引用)

 ㉓は『太線オブツーサ』としてやはりヤフオクに出たものですが、こちらはおそらくジョイアエとロツンダ「福美人」との交配でしょう。オブツーサ類とは基本的に関係ありませんから、表示としては「ジョイ交配」または「ロツンダ交配」、あるいは「オブツーサ」や「オブト」を使わないまったく別の品種名を用意するのが良いです。

 カガエンシスはやや細い、直棒状で強い黄緑色の不透明な葉が特徴の種です。葉先が丸く、シンビ系としては例外的に葉脈が葉先に達しない(つまり窓に完全透明な部分がある)ので、これも時々オブツーサと混同されます。しかし葉色は非常に特徴的で、遺伝性が強いので、これも慣れればすぐに判定できるようになります。

㉔カガエンシス交配-青木オブツーサ
㉔カガエンシス交配(ヤフオクより引用)


 ㉔は『青木オブツーサ』としてヤフオクに出たものですが、おそらくカガエンシスと何らかのオブツーサとの交配でしょう。こちらはオブツーサが関係しているので、「青木オブト」も可ですが、初心者が間違えないためにも「カガエン交配」と併記するほうが親切です。

 ウンブラテコーラやトランシエンスも時々オブツーサと間違えられ、あるいは誤(偽)表示されていますが、別名を用意した場合も推定が出来れば「ウンブラ交配(?)」とか「トランシ交配(?)」とか表示したほうが親切です。これら植物のオークションへの出品例もありましたが、残念ながらコピーを取ってないのでここに参照できません。

 いずれにしてもこれらシンビ系の種との交配は「福美人」のように別名がある場合でも「ロツンダ交配」とか「ジョイ交配」とか表示して、消費者、特に初心者が間違えないようにしてください。一方、オブツーサ系同士の交配なら種間雑種でも「オブツーサ」あるいは「オブト」などの文字を使った表示をして構いません。


 ヤフオクではオブツーサ系あるいはオブト交配でなくても、最近はトンデモ表示で初心者をだますような表示があるのは大きな問題です。中には多くのトンデモ表示商品を出品する悪質な人もいますから、ヤフオク利用者は注意してください。


 トンデモ表示の例として、例えば㉕~㉗は『オブツーサ 水晶』と表示されてヤフオクに出品されたものです。㉕は写真で明らかに水晶オブトではないことがわかります。㉖はすでに画像が削除されているので、落札相場の画像を表示してありますが、葉の色調が暗いので、本物らしく見えます。この商品は落札者から当協会に相談が持ち込まれたものです。

㉕偽水晶ー1
㉕偽水晶(「水晶」名で出品された偽物:ヤフオクより引用)


㉖偽水晶ー2
㉖偽水晶(「水晶」名で出品された偽物:ヤフオクより引用)


㉗偽水晶ー3
㉗偽水晶(「水晶」名で出品された偽物:ヤフオクより引用)


 ㉗はこの原稿を書いている時点でまだ終了していませんが、明るい黄緑葉の色調から見ておそらく本物ではないです。この出品者はこのほかにも過去120日以内に9点もの商品を同じ商品名で出品しています。親株の写真は全く出していませんが、すべてが相当額で落札されています。また画像は不正表示が発覚するのを警戒してか、すべて削除されています。

 これら㉕~㉗はもちろん有名な「水晶オブト」ではなく、明らかに《優良誤認表示》や《周知表示混同惹起》、あるいは《著名表示冒用》などに当たります。「うちではこれを『水晶』と名付けている」とか「有名な「水晶オブト」とこの『オブツーサ 水晶』とは別物だ」とかいう言い訳は通用しません。紛らわしい名前の使用は景品表示法や特定商取引法違反等の違法行為です。ヤフオク上ではなく、万一事件や争いになった時、警察や裁判所でその言い訳が通用するかどうかで判断してください。

㉘華王?-ティンカーベル
㉘華王(ヤフオクより引用)

 ㉘は『ティンカーベル』としてヤフオクに出品されたものですが、レテキュラータの正しい「ティンカーベル」とは全く別の、恐らく「華王」(はなおう)類似の交雑個体、または「華王」そのものです。

㉙レツーサ交配-宝草子苗付き
㉙レツーサ交配(ヤフオクより引用)

 ㉙は『宝草』として出品されていますが、明らかにレツーサ交配の雑種です。
*(画像内の黒い帯はキャプチャーミス)

㉚レツーサ交配-三仙寿
㉚レツーサ交配(ヤフオクより引用)

 ㉚は『三仙寿』と表示されていますが、これも明らかにレツーサ交配の雑種です。


㉛ウィミー系雑種-コレクタ系
㉛ウィミー系雑種(ヤフオクより引用)

 さらに㉛は『コレクタ系』と表示して出品されていますが、コレクタ系の特徴であるガラス質の窓も、窓の折れ線模様も全く見られません。おそらくウイミー(マジョール)系の雑交配でしょう。㉙~㉛の出品者はAさんです。

 ヤフオクには最近の数か月だけでもこのように多くのトンデモ表示の出品があります。ハオルシアは他の多肉植物と比べ、かなりの高額商品です。それだけに特に初心者の方はトンデモ表示に騙されて後悔しないよう、購入(落札)に当たっては近くの詳しい人に聞くとかして慎重に対処してください。


(3/3)に続く