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不正表示  林 雅彦 (国際栽培植物登録機関(ハオルシア) 指定登録員)


 最近はネットオークションで多くのハオルシアが売られるようになり、非常に活況です。しかし一方では、売買されるハオルシアの名前に多くの不正表示も見られるようになってきました。特にオブト錦(オブツーサ錦)に顕著で、人気に便乗してとてもオブト錦とは呼べないようなものまで、『オブツーサ錦』として売られる例が目立っています。

 とてもオブト錦とは呼べない『オブツーサ錦』の多くは宝草錦にオブツーサやオブツーサ類似の交配種をかけたと思われるものがほとんどです。これらの個体はオブツーサと言うよりむしろ宝草(クスピダータやシンビフォルミス)、あるいはそれらの雑種とでも呼ばれるべきものです。販売者(出品者)は「宝草錦交配」として売るより、『オブツーサ錦』と表示して売った方が高く売れるという意図でそのように表示しているのでしょう。しかしこれらは観賞上もオブト錦より相当に劣り、このような個体を『オブツーサ錦』と表示して売ることは景品表示法の《優良誤認表示》に当たります。

 景品表示法では故意に表示した場合だけでなく、誤って表示した場合も違法行為となりますので、「入手時の名前」だと言い逃れることはできません。何度も名前の誤りの指摘を受けながらそのような表示を続けることは、消費者、特に初心者をだまして不正な商品を売りつける詐欺だとも言えます。

 このような表示はまた特定商取引法上の誇大広告等、「著しく事実に相違する表示」にも該当します。さらには不正競争防止法の周知表示混同惹起または誤認惹起に該当し、明らかな違法行為です。食品の偽装販売や産地偽装と同じです。今後もこのような不正表示が続くようなら消費生活センターなどと連携しての法的対処も必要と考えています。

 またこのような不正表示が横行しているヤフオクではハオルシア以外の商品でも多くの不正表示商品が出品され、さらにそれら不正表示に対してヤフオクが積極的に是正処置を取らず、その結果ヤフオクが不正表示販売の温床になっているとして2ちゃんねるなどで問題になっています。実際ハオルシアでも名前の誤りや不正表示を何度も指摘(違反申告)してきましたが、出品取り消しや名前の是正がおこなわれたことは一度もありません。

 ヤフオクとしてはこれら表示の不正に厳しく対処して出品数が減る懸念もあるかもしれませんし、実際のところ大量の出品があり対応が追い付かない等の事情もあるのかもしれませんが、不正表示はもちろん違法行為ですから、このような違法行為がいつまでも続けられると思うのは誤りです。ヤフオクが積極的な対策を取らないからといってそのような不正行為を続けていると、いつかこの問題に捜査の手が入り、ヤフオクともども書類送検され、悪質な場合は逮捕されることもあり得ますから注意してください。

 日本ハオルシア協会としてはこの様な不正表示に対処するために適格消費者団体を目指して近く社団法人化する予定ですが、それまでにも既存の適格消費者団体や消費生活センターなどと連携し、不正表示の解消に努めていくつもりです。また証拠のために不正表示出品は気がつく限り表示画面のコピーを取って保存しています。

 しかし一方でオブト錦と偽表示されたこれら個体は、園芸上オブト錦より劣ることは確かですが、斑入り個体という点では一定の観賞価値はあります。オブト錦(オブツーサ錦)と表示することには問題があるものの、これら一定の観賞価値のある斑入り個体群は、例えば宝草錦に紫オブトをかけたものは「マリン」、ボルシー錦やセタタ錦にオブツーサをかけたものを「プリン」と呼んで一般的なオブト錦と区別しています。そこで交配品種群の一般的呼称基準を表1のように決め、宝草錦とオブト類などとのオブト錦等については表2、3のように区分して命名しました。

obtotable02172016-1
obtotable02172016-2
obtotable02172016-3

 これは国際栽培品種登録機関としての裁定です(ICNCP Art. 29.3)。今後これらの植物には「オブツーサ錦」等の表示は使わず、表1、2、3の区分に従って表示してください。

 以下、表2の区分についてオークションでの実例写真(丸番号)とともに解説します。写真の説明文中、カッコ内は出品時に表示された名前です。


①karin1
①カリン(ヤフオクより引用)

②karin2
②カリン(ヤフオクより引用)

③karin3
③カリン(ヤフオクより引用)

④hatsuyumeden-yahuoku
④初夢殿(ヤフオクより引用)


  「カリン」①~③はとてもオブツーサ錦とは呼べないものを「オブツーサ錦」として偽装表示している代表例です。これはすべて同一人(長野県のAさん)からのヤフオクへの出品で、同人が出品した「初夢殿」④を宝草錦に掛けた交配品種でしょう。むしろ『初夢殿錦』とでも呼んだ方が適切ですが、「マリン」や「プリン」に合わせて「カリン」と命名しました。Aさんは①~③以外にも多数の「カリン」を出品しています。なお「カリン」の斑抜けは「青カリン」としました。

⑤kirin1
⑤キリン(ヤフオクより引用)

⑥kirin2 
⑥キリン(ヤフオクより引用)

⑦kirin3
⑦キリン(ヤフオクより引用)

  「キリン」⑤~⑦は「マリン」に似ていますが、より宝草錦に近い形態のものです。「マリン」と比べ、葉が平たく、窓も小さいのが特徴です。鋸歯が多い個体は父親(花粉親)が紫オブトではなく、鋸歯のあるオブツーサかその雑種の可能性が高いです。「キリン」も「カリン」と同じくヤフオクでAさんから「オブツーサ錦」と表示して出品されていますが、とても「オブツーサ錦」とは言えません。

  「カリン」と「キリン」はともに宝草錦に似た斑入りで、花粉親もオブツーサかその交配種(初夢殿)ですから、個体によっては区別しがたいものもありそうです。一般的には「カリン」は内曲葉の濃緑肌で窓の網目と鋸歯が目立ち、「キリン」は展開性葉で黄緑肌、窓の網目や鋸歯はほとんど目立ちません。

⑧新美錦
⑧新美錦(ヤフオクより引用)

  また⑧は別の人からヤフオクに『新・オブツーサ錦』として出品されたものですが、見ての通り「キリン」というよりほぼ宝草錦(新美錦)そのものです。この場合、宝草錦とは違うと言うなら、どこが違うか、相違点をわかりやすく説明する必要があります。 なお花水晶や大孫錦は宝草錦にスタイネリーをかけたものと推定されますが、それらの兄弟でより宝草錦に近いものも想定(現物未確認)されますので、それもとりあえず「キリン」とします。「キリン」とは区別した方が良いとなれば改めて命名します。

⑨青キリン
⑨青キリン(ヤフオクより引用)

⑩青キリン
⑩青キリン(ヤフオクより引用)


  「キリン」の斑抜けは「青キリン」としました。宝草やシンビフォルミスよりダルマ葉ですが、窓はほとんどありません。これを『ダルマ葉オブツーサ』⑨、⑩として売るのは悪質な違法表示で、とても「オブツーサ」とは言えない代物です。出品者はAさんです。

(2/3)に続く