南アフリカではハオルシア産地のロ-ラー作戦とでも言うべき網羅的探索がBayerやBreuer、あるいは日本ではまったく名を知られていない多数の若手研究者によって盛んに行われており、多くの新種が発見されています。
その成果はBayerのUpdateやBreuerのThe Genus Haworthiaに発表されていますが、多くは未整理のままです。つまり新種としては記載されていませんが、私の見るところ明らかに新種と思われる群落が多数あります。Breuerの発見したものはいずれ新種として順次記載されていくでしょうが、Bayerの種概念は非常に大雑把なので、彼が発見したものは誰か他の人が整理する必要があるでしょう。
もちろん網羅的と言ってもハオルシアの産地全体から見ればごく限られた地方だけなので、これら以外にもまだまだ多数の新種が今後発見されることでしょう。
このような状況はハオルシアに限らず、南アフリカの多くの多肉植物に共通です。例えばAvonia属(旧Anacampseros属の一部。スベリヒユ科)には2000年代初めにはすでに70種を超える種が記載されていますので、今日では100種を超えているかも知れません。Aloe属に至ってはすでに1500種を超えており、最終的には2000種を超えるでしょう。
これは産地が詳細に探索された結果ではありますが、同時に種概念が遺伝学的見地からより厳密になった結果でもあります。これまで漠然と同一種とされてきたものが花期の違いや産地間の距離など、遺伝子交換の可能性から形態的相違がより詳細に検討され、別種とされるケースが相次いでいるわけです。これは多肉植物に限ったことではなく、特に単純な形態ゆえに相異が鮮明ではなく、それゆえ同一種とされてきたコケやシダなどで顕著で、日本でも多くの新種が分離されています。
さて、ハオルシアの新種の内、園芸的に人気になりそうなものを今後順次、かつ適宜紹介していきます。ただし未記載なので、産地などの詳細は当分お預けです。今回はレツーサ系の新種で、Updateにも産地の写真が出ていますので、捜してみてください。産地ではおよそ目立たない姿でも、栽培するとこんなに良くなるという見本みたいな植物です。写真1から5まではすべて同一種です。
写真1 H. sp. nov.
写真2 H. sp. nov.
写真3 H. sp. nov.
写真4 H. sp. nov.
写真5 H. sp. nov.
Dr. M. Hayashi
コメント