オブト錦(尾太錦=オブツーサの斑入り)は万象錦、コレクサ(コレクタ)錦と並ぶ、ハオルシア斑入りの3大人気品種です。オブト錦はこれらの中でも特にその透明な窓が強調されるので、美的評価は最も高いものです。

写真1 黒肌オブト錦 D=6.5
  写真1 黒肌オブト錦(山田ブラック錦) D=6.5


写真2 弁天錦 D=6.5
  写真2 弁天錦 D=6.5


最近の人気品種としては黒肌オブト錦(山田ブラック錦。写真1)や残雪オブト錦、えびす錦、弁天錦(別系オブト錦。写真2)などの他、琥珀斑(白糊斑)の白蛇伝やミルキークラウド(いわゆるピリフェラ錦の正名)などがあります。ただし花水晶(いわゆるオブツーサ錦)はオブツーサH. obtusaではなく、スタイネリーH. stayneri(交配)の斑入りです。


写真3 丸尾錦 D=5
  写真3 丸尾錦 D=5


オブト錦は一般にずんぐり頭(鈍頭)ですが、葉先にはノギはなくても先端があります。これに対し葉先が完全に丸くて先端部がなく、無毛のものは丸尾錦(頭の錦。写真3)として区別しています。つまり、丸尾錦はオブト錦(尾太錦)の内、葉先が完全に丸くて無毛の品種と言うわけです。希少な上によりすっきりしているので、非常に高く評価されます。ただし小型で群生するイクラなどの斑入り(イクラ錦)は無毛丸頭でも丸尾錦には入りません。


 

さて、中大型の無毛丸頭オブツーサと言えば紫オブトが良く知られていますが、これにはいくつかのクローンがあり、いずれも良く似ていますが微妙に性質が違います。例えば数年に渡り全く仔吹しないものから、毎年1つくらいづつ仔吹する個体があります。色づき方も濃い紫色になるものからあまり色づかず、むしろ青白い肌色のものまであります。


丸尾錦でも紫色に色づく、紫オブト錦と言えるものは極めてまれですが、最近それらしいものを入手したのでご紹介します。写真4から8までがそれで、すべて同一個体です。


写真4 紫オブト錦 D=4

 写真4 紫オブト錦 D=4 (写真4~8まで同一個体)


写真5 紫オブト錦 D=4

 写真5 紫オブト錦 D=4 (写真4~8まで同一個体)


写真6 紫オブト錦 D=4
  写真6 紫オブト錦 D=4 (写真4~8まで同一個体)


写真7 紫オブト錦 D=4
  写真7 紫オブト錦 D=4 (写真4~8まで同一個体)

 照明下の写真。雰囲気が異なる。


写真8 紫オブト錦 D=4
  写真8
 紫オブト錦 D=4 (写真4~8まで同一個体)

 夕日が当たった状態。透明感が増す。


この個体は斑の部分の葉がきれいなピンクになり、窓の葉脈も斑の入った部分はきれいなピンク色になります。斑の入らない葉は暗紫色、窓の葉脈も紫褐色で、斑の入った部分のピンク色と非常に良いコントラストになります。さらに斑が入った部分は葉の側面(斑入り部分)から光が入るので、バックライト効果で窓が非常に透明に見え、写真では良く表現できませんが、向こう側が透けて見えるくらいになります。オブト錦(丸尾錦)でも美的観点からして最高のものでしょう。


まだ小さい(直径4cm)ですが、大きくなったら素晴らしい美術品になるのではと期待しています。


Dr. M. Hayashi