H. joubertiiの産地はLaingsburg の東南約40 kmのVleilandやその周辺で、大カルーと小カルーの境目にあたります。群落は非常に小さく、10~20 m四方の中におおよそ50個体ほどがまばらに生えており(現地写真)、このような群落が5~10 km程度ずつ離れて3ヶ所ほど確認されています。ただし探せばそれらの中間にも小さな群落の有る可能性はあるでしょう。

現地写真 H. joubertii MH 03-300 Vleiland
現地写真 H. joubertii 03-300-3  Vleiland


レース系の中でも最も美しい種の一つですが、同時に最も変異の大きな種です。ハオルシア研究25号に紹介されたような変異はすべて同じ群落(Vleiland)からの実生苗ですから、種内変異というより群落内変異が大きいと言えます。

これはこの種がおそらくH. limbataとH. albispina(またはH. scabrispina)などの雑種起源の種で、種が成立してから日が浅く、まだ群落内 (種内) が遺伝的に均質になっていない、つまり祖先種の遺伝子が群落内でまだ十分混ざり合っていない、ことを示しているものと思われます。

したがって実生するとH. albispinaのような強刺でやや白肌の個体から、H. limbata のように黒肌で気泡紋のある個体、およびそれらの形質がさまざまに混じり合った個体などが出現するわけです。

 

このような種は遺伝的に必ずしも安定ではないので、培養すると同一クローンでもさまざまな培養変異が出現します。

写真01 H. joubertii  03-300-3  Vleiland写真02 H. joubertii  03-300-3  Vleiland
写真01                       写真02

写真03 H. joubertii  03-300-3  Vleiland写真04 H. joubertii  03-300-3  Vleiland
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写真05 H. joubertii  03-300-3  Vleiland写真06  H. joubertii  03-300-3  Vleiland
写真05                       写真06

写真07  H. joubertii  03-300-3  Vleiland写真08 H. joubertii  03-300-3  Vleiland
写真07                       写真08

写真09 H. joubertii  03-300-3  Vleiland写真10  H. joubertii  03-300-3  Vleiland
写真09                       写真10

写真11 H. joubertii  03-300-3  Vleiland写真12 H. joubertii  03-300-3  Vleiland
写真11                       写真12

写真13 H. joubertii  03-300-3  Vleiland写真14 H. joubertii  03-300-3  Vleiland
写真13                       写真14

写真15 H. joubertii  03-300-3  Vleiland
写真15

写真1~15はH. joubertii Vleiland  MH 03-300-3 の培養苗です。これらの写真は特に変異の大きな株を集めたものではなく、たまたま1カゴ(24鉢入り)に入っていた株を適当に写したものです。すべて同一クロ-ン(ラメート)ですが、写真で見る通り、非常にさまざまな変異が確認できます。

例えば写真1, 5, 7, 9 などは標準株(親株)よりかなり短葉で、そのうち写真5、9 は刺も短くなっています。反対に写真3や15はかなり長刺です。一方、写真10や13のように非常に弱い刺の株も出現します。さらに写真5, 8, 11, 12, 13 は標準の明緑色ではなく、暗紫色の葉色をしています。

このような培養変異がどの程度安定しているかですが、これまでの培養例からするとかなり安定した変異だと考えられます。また同一クローンでも変異した株の間では交配可能だという報告もあり、今後確認する予定です。

なお、これらの写真はUPで撮っているので、H. joubertiiがH. setataやH. albispina、H. limbata、H. phelemanniae 等、周辺のどの種とも異なる特徴をもった独立種であることが明瞭に理解できることと思います。

Dr. M. Hayashi