この植物が最初に紹介されたのはBayerのHaworthia Update 1 (2002) の53頁、写真155で、タイトルはMBB 6899 H. aristata/H. pringlei var. decipiens, Paddafontein, north of Kaboega.となっています。

H. lapis (H. aristata sensu Bayer) に近い感じの灰緑色の植物です。

写真1 H. rava  (Haworthia Update 2. P. 86. Fig. 24)
写真1. H. rava  (Haworthia Update 2. P. 86. Fig. 24)


写真1はUpdate 2. p. 86に掲載された写真ですが、Update 1 と同じ写真です。

こちらのタイトルは H. arstata. Paddafontein. MBB 6899. となっています。

 

(余談ですが、Bayerは基本種と変種の関係を何か勘違いしているようで、時々このH. pringlei var. decipiens やH. decipiens var. xiphiophylla (Baker) M.B. Bayer comb. nov. (Update 2.P. 98.) のような誤った組み合わせ表記をしています。

分類学上、2つの種を組み合わせる場合の基本種とはより基本的な形態の種や、より広範囲に分布する標準的な種を基本種とするのではなく、より早くに記載された種が基本種です(命名規約 Art. 11.4)。)


写真2 H. rava type MH 03-156=MBB 6899  Paddafontein
写真2. H. rava type MH 03-156=MBB 6899  Paddafontein


写真2はH. rava のタイプ植物の写真で、写真1と同じくMBB 6899 です。写真で見るように、H. lapisの濃青緑色と比べより灰緑色なのが特徴なのでravus (灰色の)からH. ravaと名づけられました。


写真3 H. rava  07-167-2 (=MBB 6899)  D=9

写真3. H. rava  07-167-2 (=MBB 6899)  D=9


 写真4 H. rava  03-156=MBB 6899  Paddafontein D=7
写真4. H. rava  03-156=MBB 6899  Paddafontein D=7


しかしその後に輸入されるMBB 6899は写真3や4のように、窓はより大きく透明で美しいのですが、葉色はやや紫ないし赤みがかった色調の個体が多く、写真2のような灰緑色の個体はあまり見られません。

南阿窓草集 (http://blog.livedoor.jp/ryokuhusou/) で紹介されているH. ravaも大窓紫肌タイプです。Sheilamで売られている実生苗はBayerの実生なのですが、この型の個体の方が窓が大きくきれいなので、あるいはBayerが意図的にそのような個体を選んで交配しているからかもしれません。


写真5 H. rava  06-279-3=GM 554 Paddafontein cross  D=7

写真5.  H. rava  06-279-3=GM 554 Paddafontein cross  D=7


 写真6 H. rava  06-279-6=GM 554 Paddafontein cross  D=8

写真6.  H. rava  06-279-6=GM 554 Paddafontein cross  D=8


写真4と5はSheilamではない南アフリカの業者から輸入した個体ですが、おそらくMBB 6899 とは別群落のH. ravaです。こちらはMBB 6899 より窓が小さく、くすんだ肌色ですが、より強い灰緑色をしています。また鋸歯もより短く密なのですが、MBB 6899 のように透明ではなく、かなり白いのが特徴です。

中には写真6のように白く密生した短刺が濃い灰緑色の肌色に映えて非常に美しい個体もあります。MBB 6899とは異質な、どことなくH. rooibergensis を彷彿させる美しさです。


Dr. M. Hayashi