いわゆるギガスとして輸入された植物の中には鋸歯が櫛の歯のように揃った、非常に美しい個体がありました。紅波園のNo. 1と称される個体もその一つで、どこかの本(サボテン12カ月?)の中にこの個体と思われるきれいな写真が出ていましたが、どの本だったか、まだ確認していません。

ところが3年ほど前にH. scabrispina Floriskraal Dam(採集番号なし)という苗が1本100ランドという高値でSheilamから売り出されました。ずいぶん高いなと思いながらもH. scabrispinaとしては新しい産地だったので10本ほど買ってみました。来た苗は直径2cm程度の小苗で、他のH. scabrispina やH. albispinaとどう違うのか、あるいは同じなのか、まったくわかりませんでした。
ところが大きくなってくると、大半の個体の鋸歯が櫛の歯の様に揃った、非常に美しい個体群であることが明らかになってきました。

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写真1 H.  pectispina n.n. 09-46-10  D=6 H=5 鋸歯が非常に白く、太く、かつ櫛の歯のようにそろう。

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写真2 H.  pectispina n.n. 09-46-3  D=6 H=6 別個体だが、同じく鋸歯がきれいにそろう。

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写真3 H. pectispina n.n.  09-46-5  D=7 H=6.5 やや軽い葉色の別個体。鋸歯は櫛状にそろう。

写真1から3はそれらの中でも特に鋸歯のそろった美しい個体です。この群落は鋸歯の揃った個体が多いだけでなく、その鋸歯が非常に白く、太いことも特徴です。H. albispinaはH. scabrispinaより大型でかつ鋸歯もより白く、太いですが(H. scabrispinaの鋸歯はやや薄茶色がかる)、この群落はそれよりさらに白く太い鋸歯をもっています。鋸歯の美しさという点では、Crassulaの月光に匹敵する植物でしょう。

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写真4 H. pectispina n.n.  09-46-7  D=5.5 H=6 レース系には珍しく、成長に従って丈が高くなる。

写真4は別個体を横から写したものですが、このようにこの群落の多くの個体では、成長するに従って丈が高くなる、というレース系としては非常に変わった特徴を持っています。また多くの個体では今のところ直径は5~7cm程度と小型です。同じ特徴(小型で丈が高くなる)を持っていることから、紅波園のNo.1もこの群落の植物であろうと推測できます。

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写真5 H. pectispina n.n.  09-46-1  D=9 H=8 大型になる個体。丈も伸びないが、鋸歯はそろわずに暴れる。

一方、写真5のように例外的に直径の大きくなる個体もありますが、直径が大きくなる個体は丈が高くなりません。また鋸歯はそろわずに暴れます。おそらくH. albispinaかH. scabrispina の遺伝的影響の強い個体でしょう。ただこのような個体(直径が大きくなり、トゲが暴れる)は全体の中では1/3以下です。

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写真6 H. pectispina n.n. 12-96-1  D=6.5 H=6 昨年輸入した個体。鋸歯が非常に白く太く長い。ただしやや暴れる。

写真6は昨年Sheilamから採集番号(MBB 7067)付きの同じ産地の苗が売り出されたので、比較のために5本買った個体の一つですが、鋸歯が非常に白く、太くかつ長い特良個体です。直径もやや大きいですが、残念ながらトゲは少々暴れます。しかし他個体も含め、昨年の苗の特徴は3年前に買った個体群とまったく同じであることは確認できました。

このようにFloriskraal Damの群落はH. scabrispinaやH. albispinaより明らかに小型で丈高くなり、鋸歯がより白く、櫛の歯のようにそろう、という特徴から、これは別種であると判断してH. pectispina(櫛状鋸歯の)と命名しました(記載は後日)。この群落中には鋸歯のきれいにそろう個体と、大型になる個体とがありますから、これらの実生から大型できれいに揃った鋸歯を持つ個体を選抜していけば、レース系屈指の優良品種になることは間違いないでしょう。


Dr.M.Hayashi