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July 2019

「リビダのタイプ」の記事(→リンク)へ質問コメントを頂きましたので、こちらで回答します。


コメント:
「MH管理番号は同採集番号でも違う管理番号とされているのですね。MH管理番号から採集番号及び産地を検索できるものはありますでしょうか。

昔ハオフェスで私の持っているMH番号の苗の出自をお伺いしましたが「わからない」と言われてしまい原種好きの趣味家としては採集番号を変えて別名販売されている様に感じてしまいました。」


回答:
MH番号では同一採集番号の輸入苗でも、輸入毎に別のMH番号を付けています。これは私(林)に限らず、BayerでもBreuerでも同じです。
例えばMBB番号の付いたものはすべてBayerの採集品というわけではありません。MBB番号でもその中にはMarxが採集したもの(したがって別のGM番号がある)やVenterが採集したもの(同)、Jaarsveldが採集したもの(同)等が相当数含まれています。


同じく、IB番号の付いたものの中にも、Bayerの採集品やMarxの採集品、Cummingの採集品など相当数含まれています。

私はBayerの採集データ一覧表、Venterのデータ一覧表、Breuerのデータ一覧表を持っていますから、例えばBayerのxxx番の苗はVenterのyyy番の苗と同一であり、それらはそもそもJaarsveldが最初に採集したzzz番の苗である、などということを調べられます。

しかしこれら採集データ一覧表は採集者にとって極めて大事な資料ですから、よほど親しい人でない限り入手できませんし、入手の際には誰にも開示しないことなどの条件が付きます。

そのような次第で、一般的に写真などで植物を紹介する際には、自分の整理番号(採集番号)だけを表示します。もちろんその番号の苗が自分の採集品なのか、誰かの何番の採集品なのかはデータとして記録してありますから、調べればすぐわかります。

したがってMH番号がわかれば原データや産地は原則すべてわかります。しかし中には原データのないものや産地名のないものなどもまれにあります。これはMH番号に限らず、MBB番号でもJDV番号でも同じで、原データや産地名がなくても重要なサンプルだと思えるものには自分の番号を付けて管理するのが一般的です。

今回のブログ写真では説明に必要だったので元データを表示しました。説明上その方がわかりやすいからですが、必ず原データを表示しなければならないわけではありませんし、そうしなかったからと言って非難されるいわれもありません。

まして私はリビダを売っているわけでもなく、商品の宣伝をしているわけでもないのですから、別名販売うんぬんは全く失礼です。

MH番号の苗の出自に関しては出自が全く分からない(データがない)のか、調べればわかるのかは、自宅パソコンで検索して初めてわかることです。

したがってハオフェスの会場で検索もしないで「わからない」(データがない)などという返事をするはずがありません。おそらく「今この場所ではわからない」という返事をそのように誤解されたのでしょう。

 リビダは非常に人気のある品種群ですが、いろいろ集めてみると窓の状態などにより、どうも次のように斑紋型、網紋型、カメオ型の3タイプがありそうです。

斑紋型
 リビダとして日本で見られるものの大部分はこれで、小型短葉、葉はおおむね展開性(横に広がる)です(写真1~4)。窓は小さな斑紋状で互いに連結しない個体が多いですが、中には斑紋が大きくて葉脈が格子状に残る個体(写真3、4。2018年7月のブログの写真1、2と同一個体)もあります。ただこの場合でも斑紋はほとんど連結しません。

(1) MH 10-164 (寺町輸入)D=7.5
 写真1 MH10-164(寺町輸入)D=7.5

(2) MH 14-137 = JDV 88-31  D=6
 写真2 MH14-137(=JDV88-31) D=6

(3) MH 17-37 = JDV 88-31  D=4.5
 写真3 MH17-37(=JDV88-31) D=4.5

(4) MH 16-140 = JDV 88-31 D=6
 写真4 MH16-140(=JDV88-31) D=6


網紋型
 写真5~7は日本(おそらく他国でも)ではほとんど見られないタイプで、葉はやや細く長く、立性(葉は直立する)です。特筆すべきは非常に大きな斑紋で、多くの部分で連結して格子状の窓を形成し、斑紋というより網紋という方が適当です。窓の透明部分が大きいため、葉全体が透けたように見え、さらに葉が長くて立ち性なことも窓を鑑賞するうえで非常に好都合です。

(5) MH 17-35 = JDV 88-31  D=6
 写真5 MH17-35(JDV88-31) D=6

(6) MH 17-36 = JDV 88-31  D=6
 写真6 MH17-36(=JDV88-31) D=6

(7) MH 14-40  Marx 実生 D=6
 写真7 MH15-40 Marx実生 D=6


カメオ型
 写真8はカメオと名付けられた個体で、この写真は協会ホームページの冒頭にも使われているので多くの方がご覧になっていることと思います。おそらくもっとも初期に日本に来た個体ですが、タイプ的には非常に稀なタイプです。大型太葉で斑紋が大きく、時に連結しますが、あくまで斑紋で、格子状窓にはなりません。
 このタイプに属するのはカメオの他には私の知る限り、Battistaの個体(写真9)がいくつかあるだけです。

(8) H. livida ’カメオ’
 写真8 H. livida ’カメオ’

(9) MH 14-33  Battista-3  D=5.5
 写真9 MH14-33 Battista-3 D=5.5

 写真10はリビダ系交配種で、大型で非常に大きな斑紋が葉の表裏全面にある個体です。写真4の個体に似ていますが、斑紋に稀に肉芽があることから交配相手はゴジラ(大型強刺パリダ)ではないかと疑われます。ただリビダとパリダは通常は花期が合いませんので、別組み合わせの可能性もあります。

(10) リビダ系交配 D=8
 写真10 リビダ系交配 D=8

ところで写真2から6までの5個体は2014年から2017年にかけてJDV 88-31として輸入した個体です。つまりJ. D. Venterが1988年に同一群落から採集した個体、またはその繁殖品です。

そうすると斑紋型と網紋型は同一群落に生えていたことになるわけですから、日本国内に出回っているリビダの大部分が斑紋型だとしても、それら同士の交配実生苗の中からでも網紋型が出現する可能性はかなりあるはずです。観賞上(園芸上)、網紋型の方が高く評価されるでしょうが、リビダの実生がたくさん作られれば、その中の網紋型リビダもいずれ市場に出回るようになると期待されます。

 リビダは人気品種のため、まだかなり高価ですが、葉挿しは意外と容易で、また結実性もそれほど高くはないですが紫オブトやベヌスタよりはずっと良く結実します。したがって斑紋型はもちろん、網紋型もいずれ繁殖されて価格は低下していくはずです。

カメオ型は親個体が非常に少ないので、急速な繁殖は難しそうですが、結実性は非常に良いので、これも時間がたてば繁殖されていくでしょう。

 なおリビダの祖先はプベセンスと見られますが、プベセンスの中には写真11のように表皮が非常に薄くなり、表皮の一部が不明瞭ながら斑紋状の窓になっている特異個体があります。この斑紋状の部分が発達してリビダになったのではないかと思われます。

(11) H. pubescens MH 16-142  D=4.5
 写真11 H. pubescens MH16-142 D=4.5

 写真11の個体は2018年7月のブログの写真3で、「プベセンスとして輸入したが、斑紋状の窓が出てきたのでどうもリビダらしい」と紹介した個体です。それからちょうど1年後の写真というわけですが、プベセンスの特徴である細かな繊毛が非常に顕著になっており、やはりこれは輸入時の名前の通りプベセンスと見るのが妥当なようです。

 産地的にはプベセンスとリビダは同じ丘に生えており、混生はしていないようですが、このような中間型個体がどの程度あるのか、種、あるいは群落としてどの程度分離されているかなどは今後の調査が必要です。

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