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August 2016

8月1日のブログ記事「ハオルシア盗難事件 その後のまとめ」に対し、「通りすがりの多肉愛好家」さんから下記のようなコメントがありました。返事が長くなりましたので、コメント欄からブログ本体に移して掲載します。

『ハオルシアの高級品種を狙った窃盗が後を絶たず、栽培家の方や協会としては頭を痛めていると同時に、大変お怒りのことと思います。心中お察しいたします。
ですが、「外国人の犯罪は厳罰化」「窃盗は金額によっては死刑あり」「刑務所の待遇を改悪しろ」などと考えるのは安易であると同時に危険でもあります。

また、「中国で1億円も盗めば死刑」と仰っていますが、それはどこからの情報ですか?まあ中国ですから、政府の判断で簡単に死刑になることもあるとは思いますが、少なくとも、現在の中国の刑法上は窃盗で死刑になることはありません。確かに以前は刑法上窃盗で死刑になる規定がありましたが、2011年以降は窃盗での死刑は廃止されています。

参考:国立国会図書館調査及び立法考査局(PDFファイル)
http://www.ndl.go.jp/jp/diet/publication/legis/pdf/02470110.pdf

厳罰化すれば確かに犯罪の抑止にはなるかもしれませんが、逆に「窃盗でも死刑になるのなら、見つかった時は殺してしまえ」と武器を携帯するかもしれません。「どうせ同じ死刑になるなら殺してでも逃げよう」と思うかもしれません。これでは余計に被害者を危険にしてしまうこともあり得ます。

刑務所の待遇改悪も、むしろ現実社会との差を広げてしまい、出所後の社会復帰が余計に難しくなってしまうという考え方もあります。

日本とは事情も違い単純な比較はできませんが、ノルウェーでは出所後の社会復帰も踏まえて、刑務所の待遇が非常に良い場所もあるそうです。スポーツや音楽、料理も自由にすることもできるそうです。それでいてノルウェーでの再犯率は16%とヨーロッパで最低水準です。因みに日本は約47%!(法務省:平成27年版犯罪白書より)

確かに、場合によっては厳罰化も必要でしょう。また、外国人の犯罪の場合は日本国内で社会復帰をするわけではないので、そこを考慮する必要は無いかもしれません。ですが外国人だから犯罪を重くしろというのは人種・国籍差別にもつながります。安易にそれを求めるのはどうかと思い、コメントさせて頂きました。』


まず、次の返事は必ずしも協会としての公式見解ではないことをお断りしておきます。基本的には執筆者(林)の個人的見解です。ただしこの種の犯罪に厳罰化が必要だという基本的見解は協会幹部(理事)全員が同意している共通認識です。

 犯罪あるいは外国人犯罪の厳罰化に賛成か、反対かは様々な意見があろうかと思います。水掛け論になりがちなので、専門外ながら多少データを探しました。

 まず、このところ十数年間、日本では基本的に犯罪処罰の厳罰化が一貫して進んでいます。
例えば未成年者の凶悪事件に対し、少年法の適用年齢や処分(少年院送致等)の下限年齢の引き下げなどが近年ありました。飲酒運転の厳罰化はもちろん、危険運転致死傷罪なども新設され、さらに適用条件の緩和(一層の厳罰化)にも多くの賛同があるようです。組織犯罪処罰法はオウム事件などを契機として1999年に制定されています。これも組織的な凶悪事件への厳罰化の一つで、罰則が一般的犯罪と比べかなり重くなっています。
日本の犯罪件数そのものは減少傾向ということですから、これらの法の改正や新設は犯罪の増加や新たな手口の犯罪に対処するということでなく、凶悪事件に厳罰化を求める社会的要請が反映されているのだと思います。世論調査でも死刑制度容認派は80%超だということであり(2015 内閣府基本的法制度に関する世論調査)、多くの国民が凶悪犯罪に対する厳罰(死刑)を支持していると言えます。

また例えば裁判員制度は『裁判に国民の健全な社会常識を反映させる』趣旨で始められたものですが、裁判員裁判で死刑となったものの、高裁や最高裁で『前例とのバランスも考慮する』などの理由で減刑(無期懲役)になったケースが3件もあります。しかしその反対の例(裁判員裁判で無期有期の懲役となったが、最高裁では死刑)はなかったように思います。(麻薬密輸事件など、事実認定に争いがある事件では裁判員裁判の結論が変更された例はかなりあるようですが)
これらの3事件(殺人罪で出所後の強盗殺人事件(2009)、千葉大生殺害放火事件(2009)、長野県一家3人殺害事件(2010))はいずれも事件の経過を見ていくと、私の感想でも当然死刑とすべき事件のように思えます。前例とのバランスではなく、前例そのものを見直すべきだというのが裁判員、すなわち国民の一般的感覚です。多くの国民はこれまでの刑罰が、犯罪者に対して甘すぎると感じており、それが裁判員裁判に反映されたものでしょう。

なお余談ですが、裁判員裁判の判決が最高裁で否定されて話題になったこれら事件の判決に対し、どの報道機関やネットサイトも世論調査をしていないようなのは非常に奇異に感じます。三権分立でも、国民は主権者ですから司法を含むすべての権力に注文を付けられます。最高裁判決だからと言って文句を言えないわけではありません。判決そのものは変更できないとしても、世論調査によって国民の多くは判決に納得していないということを数字で示せます。納得していない国民が多ければ、その後の類似ケースの裁判では裁判所も世論調査の結果を意識するでしょうし、またするべきです。国政権力に対する報道機関の監視役割は司法権力に対しても同じはずです。
さらに裁判員裁判と最高裁の判決が相違した場合だけでなく、闇サイト殺人事件などのように社会的に大きな注目を集めた事件でも国民が最高裁判決にどの程度納得したかを数字で示すことは意味があります。この事件では多くの国民が最高裁判決(千葉勝美裁判長。堀被告の死刑から無期懲役に減刑を支持)に疑問を持ち、恐らく世論調査をすれば、判決に納得しないという意見が多かったのではないかと思います。この事件ではその後、堀被告が碧南事件(殺人事件)なども起こしていたことが判明し、結果的に最高裁判決より国民の感覚(疑問)の方が正しかったという状況です。

重要な判決ごとに世論調査をすれば、裁判所も国民が事件をどのように考えているか知りことができ、どのような点は裁判官と国民の感覚とに大きな差はなく、あるいはどのような点は裁判官と国民の感覚とに大きな相違があるということがわかります。相違が大きな点は裁判所が国民をどう納得させられるか、判決理由などに工夫が求められます。担当裁判官でなくても裁判官全体が国民の考えを知る良い手掛かりになります。マスコミには是非とも実施していただきたい事柄です。

凶悪犯罪には厳罰化が必要という例に組織的詐欺事件があります。例えば比較的最近の例では2009年に会長の波和二が逮捕された円天事件ですが、波は以前にも同様の組織的詐欺事件で実刑となっています。また円天事件で一緒に逮捕された幹部22名中には社長の寺島敦等、多くは過去に同様の組織的詐欺事件で1回以上の実刑歴があります。

彼らは逮捕されても反省するどころか、次にどのような手口でだまして金を集めるか、刑務所内や出所後に情報を交換し合い、あるいは仲間を募って次の事件を計画しています。これは過去の豊田商事事件などの大型詐欺事件でも同じで、幹部だった者は出所後に手口を改良した仕組みを考え、新たな詐欺事件を起こしているようです。
彼らにとって人をだまして金を集めることは趣味ないし、生きがいのようなものです。組織犯罪処罰法ができる前(1999年以前)は詐欺罪で最長10年の刑ですから、集めた金をうまく海外に送って隠せば、出所後の生活費も新たな事件を起こす資金も用意できます。彼らは離合集散を繰り返しつつ、各人が2度3度と組織的詐欺事件を起こしているわけですが、詐欺や窃盗などの経済事件で死刑になることはない、と高をくくっているから2度も3度も事件を起こすのでしょう。

したがってこの種の人間には更生の可能性など考慮する必要は全くありません。組織的詐欺事件の幹部だった人間が同様犯罪で2度目に有罪となる場合は少なくても終身刑とし、2度と社会に出すべきではありません。振り込め詐欺などの首謀者も同じです。2度目の有罪で終身刑となる制度なら、2度3度と組織的詐欺事件を起こすことは大幅に少なくなるでしょう。このような大幅な厳罰化は組織的詐欺や組織的窃盗事件に対し劇的な抑制効果があると思います。
もちろん厳罰化すれば、犯人達が捕まらないよう武器を携行し、危険になる可能性もあります。しかし厳罰化による犯罪抑止効果と危険性が高まることとを天秤にかけた場合、やはり事件そのものが減る方を選ぶべきだと思います。
なお、詐欺団は組織犯罪処罰法の対象ですが、窃盗団が対象になっていないのは全く理解できません。法の不備とでもいうべき欠陥です。早急な改正が望まれます。

さらに詐欺犯や窃盗犯の場合、刑務所内での作業中に情報を交換し、あるいは手口を教えあったりして、刑務所が犯罪教室ないし新たな犯罪グループへの誘いの場になっているという批判があります。これを防ぐには懲役ではなく禁固刑(作業なし=収容者の交流なし)とし、かつできるだけ独房に収容すべきです。
厳罰化に関してもう一つ見落とせないのは、組織的詐欺事件では多くの場合、被害者に自殺者が出ている点です。これは間接的な殺人とでもいうべき事柄ですが、これまではこれを考慮した法律がありませんでした。私見では準殺人罪(または間接殺人罪)とでも言うものを新設し、詐欺事件やパワハラを含むいじめ事件、贈収賄事件などで板挟みとなった人などに自殺者が出た場合は殺人罪に準じて処罰すべきだと考えます。こうすれば組織的詐欺事件で何人も自殺者が出たら首謀者は死刑とすることが可能です。あるいはパワハラいじめ事件や贈収賄事件で一人でも自殺者が出たら、現行の刑罰に比べ格段に重罰になります。

次に外国人犯罪の差別化という点ですが、これまでは世界的に刑罰の内外無差別が標準となっていました。しかしこれは外国との人的移動が国内人口に対して非常に少なく、したがって外国からその国にやってきた人の文化や生活習慣の違いが社会的に大きな軋轢にならなかったという事情によるものです。またそのような事情でその外国人の出身国の生活水準も考慮する必要がなかったと言えます。

しかし今日のように世界的に移民や難民が何十万人、何百万人規模で生じ、日本へも訪日外国人が年2千万人にもなると、そこには当然犯罪者ももぐりこんできます。日本でも今後外国人犯罪者が増えると予想されます。
この場合、貧しい国から豊かな国に来て一稼ぎしようとする犯罪者に対しては出身国の刑罰水準や生活レベルに準じた刑を科さないと『日本では罰が軽いし、刑務所生活も苦にならない。』ということになって、これら犯罪者が日本の法律や社会を甘く見て犯罪を重ねることになります。今回のハオルシア盗難事件もまさにこれです。
中国では1億円も盗めば死刑だという根拠を問題にしていらっしゃるようですが、確かに中国の刑法では窃盗罪だけでは死刑はないかもしれません。しかし仮に今回のハオルシア連続窃盗事件が中国で起こったとしたら、犯人一味はまず死刑です。これだけの回数と金額の事件を起こせば、社会を不安に陥れた、とか口実はどうにでもつけられます。まして明確な証拠があるのに犯行を否認したり、黙秘したりすればなおさらでしょう。

刑罰の差別化と言うと、なにか差別は無条件にいけない、と思う人がいるかもしれませんが、例えば特許や品種登録などでは、そのような制度のない国の人は日本で出願できません。差別化ではなく、対等化とでも言うべきもので、相手国での扱いが日本での扱い方となるわけです。つまり特許や新品種を保護する制度のない国の人は、日本でも保護を受けられないというものです。当たり前の話ですが、その国の人が日本で新品種の保護を受けられるのに、日本人は新品種をその国で登録できないとなれば全く不公平だからです。
同じように、同じ犯罪がある国では懲役十年以上となるのに、日本ではせいぜい3年程度となれば、だれだって日本で犯行を計画するでしょう。豊かな国では一般に刑罰は緩やかで(死刑のない国も多いです)、刑務所の待遇も良いとなれば、貧しい国から大挙して犯罪者がやってくることになります。これを防ぐには刑罰の対等化、つまり刑罰と刑務所待遇を犯罪者の出身国と同水準とすべきです。これは人種差別や国籍差別ではなく、人口流動時代に即した、必要かつ効果的な犯罪抑止策です。

なお、取り調べなどの黙秘権についても同じで、犯人の出身国での扱いと同様にすべきです。要は犯罪者に外国(特に豊かな外国)で犯罪を行った方が得だと思わせないことです。

最後に、この問題は私の専門外ですし、上記返事も私の素人的感想という域を出ません。またこのブログがこの問題を議論するのにふさわしいとも思えません。何より、この春以来、盗難事件が報道されるようになって、資料の整理や取材先の調整などのマスコミ対応に追われ、ハオルシア研究誌の発行も遅れに遅れて会員よりお叱りを受けている状況です。

したがってこの記事の内容にいろいろご意見、反論などもおありかと思いますが、勝手ながらこの議論はこれにて打ち切りにさせていただきます。悪しからずご了承ください。

'ブラックナイト 'x ’御津姫’
'ブラックナイト 'x ’御津姫’  D=5 御津姫の交配には非常に面白いものができている。

御津姫' X '’ブラックナイト'
御津姫' x '’ブラックナイト'  D=6  逆交配。ともに写真は転載許可済。



生物芸術と葉芸園芸       林 雅彦

 窃盗事件多発を契機として、これまでほとんど世に知られていなかった「ハオルシア」が注目を浴び、テレビなどでもしばしば取り上げられるようになりました。しかしその多くは価格が非常に高いことや、儲かることなど、金銭的、利殖的観点が強調され、それら価格や人気の根源である美しさや芸術性にほとんど焦点があてられないのは残念です。

 ハオルシアの人気や魅力を語る上でその美的洗練性ないし芸術性は最大のポイントです。しかしこの点についてはこれまで踏み込んだ説明や他の文化や芸術との比較はされてきませんでした。そこでここではハオルシアやハオルシア園芸が他の文化や芸術の中でどこに位置づけられ、どのような特徴を持っているかを考察してみます。

Ⅰ)生物芸術とは

 さて生物芸術(Bio Art)とは私の造語で、おおむね次のように定義されます。
生物芸術とは(A)生物または生物の集合体上に(B)美的企図を(C)創作的かつ(D)芸術的に表現したもの。
(A)~(D)はその要件ですが、

(A)は生物芸術の対象で、生物(個体)または生物の集合体(庭園や生け花)です。
(B)はその対象を作成者(育成者)が美的企図(意図)で作り出すことを指します。
(C)は作り出されたものがコピーや模倣ではなく、独自に創出されることを指します。
(D)は作り出されたものが芸術性の高いものであることを指します。

(A)、(B)は説明不要でしょう。(C)でクローン繁殖品(ラメート)は全体で一つの作品と考えられ、その品種の個体(株)すべてが対象となります。ただし、交配や実生で作出された個体すべてが生物芸術というわけではなく、(D)それらのうち特に芸術性の高いものだけが生物芸術作品です。この点例えば生け花でも同様で、美的企図を持って活けたものなら誰が活けても創作物かつ著作物ですが、素人が下手に活けたものは生物芸術ではありません。

 生物芸術には表1のように大きく分けて4つの分野があります。(1)庭園芸術、(2)生け花芸術、(3)盆栽芸術、(4)生物斑紋芸術、です。(1)、(2)、(3)の芸術性については世界的に認められ、評価されていますが、(4)は錦鯉を除くと、それらが芸術作品であるとの認識はあまりされてきませんでした。

bioart1
 生物斑紋芸術も私の造語ですが、これは植物や動物の綺麗な色彩や斑紋を育種によって芸術的レベルまで改良したものです。

 植物では葉の色や紋様を改良する葉紋芸術(葉芸園芸)と花の色や紋様を改良する花紋芸術(花芸園芸)とがあります。葉紋芸術は葉の色(主に斑)や紋様の変化(芸)を改良して楽しむ園芸です。江戸時代に発達した古典園芸のオモトやイワヒバ、観音竹、東洋ランの一部、それに近年になって急速に改良が進んだハオルシアやサボテンの有星類、あるいはリトープスなどが代表です。ハオルシアはオモトなど、葉の紋様の変化を楽しむ古典園芸の現代的展開に他なりません。

 花紋芸術(花芸園芸)は花の色や形、紋様を改良して楽しむ園芸で、古典園芸では皐月やホトトギス、変化朝顔などがあります。最近ではランのパフィオペディルムやバンダなどが非常に発達してきています。また臭いのせいで改良は進んでいませんがスタペリアなどのガガイモ科植物の花も大きな可能性があります。
動物斑紋芸術では特に魚類で金魚や錦鯉で高度な改良がなされていますが、アロワナなどの熱帯魚も改良が進んでいます。尾長鳥やオウム、インコなどの観賞用鳥類もかなり改良されています。犬や猫は極めて育種の進んだ動物ですが、必ずしも観賞用というわけではない点で動物斑紋芸術の範疇に入るかどうか疑問があります。その他に、カメ、トカゲなどの爬虫類も今後改良が進んでいく可能性があります。


Ⅱ)芸のレベル

 ところで植物斑紋芸術の場合、一般の花きやカラジューム等、葉に斑紋のある植物もこれに入るのかという疑問があります。しかし葉や花に綺麗な色や斑紋があるように改良された植物はすべて生物芸術かと言うと、そうではありません。これを説明するには芸のレベルという概念が必要です。
表2は葉芸を対象とした芸のレベルですが、花芸でもほぼ同じことが言えます。

bioart2

 まず、『芸』とはかなり日本的な概念ですが、おおざっぱに言って「変化」のことです。葉芸のレベルには0から4まであります。
レベル0は葉芸をしないもの、つまりその種(分類学的種)の葉には斑紋や結節、あるいは綺麗な色などはとりたててない、ありふれた形態の葉を持つ種です。ハオルシアの場合、ほとんどの原種はこのレベルです。
レベル1は種レベルで芸をするもの、つまりその種の葉には様々な斑紋や窓、結節等がありますが、各個体はほぼ同一の紋様や結節等を持つものです。ピグマエアやラドラなど葉に突起や結節を持つものの大部分、紫オブトを含むほとんどのオブト類、ほぼすべてのレース系がこれです。種としてはきれいですが、各個体間にはほとんど変化がありません。

 vista '紫オブト'
 芸レベル1 H. vista ’紫オブト’
 綺麗な紫色に染まるが、各個体間の差はほとんどない。

 pectispina ’千歯山’
 芸レベル1 H. pectispina ’千歯山’
 レース系は一般に個体間の変異がほとんどないが、これは特に鋸歯が白く長く、櫛の歯のように揃う。

 レベル2は個体レベルで芸をするもので、同一種でも各個体間に大きな差があり、差異が顕著で美麗な個体は品種として命名されます。ピクサやスプレンデンス、コンプト、多くの交配種、それにレース系のジュベルティとアメジスタがこれに入ります。ただしこれらの種の個体すべてがレベル2ということではなく、レベル2の個体が多い種であるという意味です。反対にレベル1の種でも例えばピグマエアの粉雪のような優良個体が多くなれば、ピグマエアはレベル2の種に移行することになります。

 splendens 'タージマハル’
 芸レベル2 H. splendens 'タージマハル’(Taj Mahal)
 H. splendensは個体ごとに特徴が顕著に異なる。これは真っ白な結節が融合して磁器のよう。

 splendens  ’金襴’
 芸レベル2 H. splendens  ’金襴’
 H. splendensは個体ごとに特徴が顕著に異なる。これは特に結節が厚い超優良品種。

 レベル3は葉レベルで芸をするもので、同一個体でも葉1枚ごとに紋様や色が異なるものです。種全体がこのような芸をするものは玉扇、万象、コレクサの3種だけで、ハオルシアでは昔からこの3種が最高峰といわれてきたのはこのためです。この3種では新しい葉が出るたびに異なった紋様が出現するので、栽培していて飽きが来ません。特にスコット系コレクサは葉ごとの線紋様の変化が大きく、葉紋の変化という点では最高のものです。
 レベル3のハオルシアには他に葉紋の変化の大きな交配種、例えば柴金城や酒呑童子、天使の涙などがあり、またほとんどの斑入り品種はこのレベルになります。一方コレクサでも特網コレクサなどは葉ごとの変化がほとんどなく、レベル2となります。
 レベル3の芸をするものは斑入り品種を除くとハオルシア以外ではほとんどありません。花芸園芸では花ごとに紋様が異なるのがレベル3ですが、源氏系のツバキや一部の皐月を除き、やはりほとんどないようです。

芸レベル3.’稲妻コレクサ’
 芸レベル3 ’稲妻コレクサ’
 スコット系コレクサの一つで、全ハオルシア中、葉ごとの紋様の変化が最も大きな品種。

芸レベル3.玉扇 ’玄武’
 芸レベル3 玉扇 ’玄武’
 時価200万円 玉扇は葉1枚ごとに紋様がかなり顕著に異なる。

芸レベル3.万象 '白妙'
 芸レベル3 万象 '白妙'
 万象も葉1枚ごとに紋様がかなり異なる。’白妙’は線模様が明瞭なものの中では最も白い。 

 レベル4は時間帯レベルで芸をするもので、1日の内でも夕方や夜の照明下など、特定の時間帯に紋様の表情が大きく異なるものです。これは葉先や窓が透明なハオルシアだけに見られる芸(変化)で、したがって他の植物には見られない、ハオルシアだけの芸です。ただしレベル4はレベル3より芸のレベルが上というわけではありません。レベルではなく、芸の種類が違うと考えてください。
 レベル4の代表がまだら系で、昼間は目立ちませんが夕日の中では素晴らしくきれいに見えます。オブト類も同様ですが、窓に紋様がないのでまだら系ほど細かな芸はありません。夜間の照明下で最も美しく見えるのは透明窓のコレクサで、透明感が非常に増して魅力的に見えます。これに魅入られ、秘蔵のコレクサを「一緒に棺桶に入れてくれ」と言って実際その通りにしてしまった人が日本人で2人もいます。

 最も美しく見える時間帯から、玉扇、万象、ピクサ、スプレンデンスなどは昼のハオルシア、まだら系やオブト類は夕方のハオルシア、コレクサは夜のハオルシアといえます。

 livida ’カメオ’
 芸レベル4 H. livida ’カメオ’ 
 まだら系は夕方斜めに差し込む光の中で見ると宝石のように輝いて見えるので、女性に大人気。

 nortieri '残照'
 芸レベル4 H. nortieri '残照'
  <夕日の中のハオルシア> 赤い線模様のまだら系は、夕日の中では燃え上がるように美しい。

 laeta '夜間飛行’
 芸レベル4 H. laeta '夜間飛行’
 透明窓のコレクサは夜間の照明下では透明感が増して非常に美しく見える。


 さて初めの問題に戻ると、葉芸でも花芸でも、レベル0と1の植物は生物芸術とは言えず、一般花きや一般観葉植物の扱いでよいと考えます。レベル2以上のものの中で、つまり個体品種の中で、さらに特に美的に優れたものだけが生物芸術と言えると見ています。おおむね品種名がつけられた優良個体の内でも品評会で入賞できる程度の、かなり限定された優良個体だけが生物芸術作品と言えるでしょう。
 したがって表1に例示された生物斑紋芸術の生物グループでも、表2のレベル2以上の芸をするものだけが葉芸植物や花芸植物です。それらの中でも特に優良な個体(品種)の多い種やグループ、属などが生物斑紋芸術と呼ばれるわけです。

 これは錦鯉などでも同じで、育成された錦鯉すべてが生物芸術というわけではなく、コンクールで入賞するような優良個体だけが生物芸術作品です。しかしそのような優良個体が数多く育成されると、錦鯉という分野全体が生物芸術と見なされるわけです。
 庭園、生け花、盆栽の分野でも同じです。これら分野の作品すべてが生物芸術というわけではなく、その中でも特に優れたものだけが生物芸術です。そしてそのような優れた作品が多く作出されているので、分野全体が生物芸術と評価されます。


Ⅲ)生物芸術と日本文化

 表1に見るように、生物芸術には日本庭園や生け花、盆栽、金魚や錦鯉といった非常に日本的な、または伝統的な文化が数多く含まれています。ハオルシアも日本の伝統的葉芸園芸の現代的展開に他なりませんし、花芸園芸の最高峰と思われるパフィオペディルムの育種でも日本人育種家が大活躍しています。さらに近年急速に育種が進んでいるアロワナでも育種の中心は日本人だということです。

 これは日本人が非常に優れた、繊細な美的感性を持っているからであり、日本文化の底流にそのような美的感性が強く流れているからです。この繊細な美的感性こそ園芸や生物芸術だけでなく、日本画やアニメ、漫画、コンピューターゲームなどの美術部門から、歌舞伎や能、落語などの芸能部門、さらには和食などの食文化をも根底から支えています。 

この繊細な美的感性は世界的に見ても非常に優れたものであり、それゆえこれらの文化あるいは文化的産物が世界中から高く評価されていることはご存知の通りです。そして生物芸術もこの繊細な美的感性が最も強く発揮された部門の一つです。すなわち生物芸術は日本を代表する、世界に誇る文化であり、クールジャパンの一つです。
 
生物芸術の中にあって、ハオルシアは疑いなく、葉芸園芸の最高峰で、しかも比肩しうるものがないほど突出して優れています。これはハオルシアの葉の表面の変異(窓、紋様、斑紋、結節や突起、繊毛、鋸歯など)が全植物中、他に比肩するものがないほど多彩、多様であることによります。特に葉先が透明な窓になる植物はオフタルモを覗くと他は皆無で、生物斑紋芸術としてはこの点だけでも特筆に値します。したがってハオルシアは今後も葉芸園芸の最高峰として君臨し続けることでしょう。

 ハオルシア人気は今や東アジアだけでなく、タイやインドネシア、ベトナムなどの東南アジア、さらにはEUやオーストラリア、USAなどの欧米諸国にも広がり、今後も急拡大しそうな情勢です。このことは生け花、盆栽、錦鯉などに続き、日本発の新たな生物芸術が世界的に認められつつある証左だと見ています。

 また葉芸は花芸よりずっと繊細です。この点、葉芸園芸は日本人の繊細な美的感性が最も強く発揮される分野で、高い国際競争力を持っています。日本ハオルシア協会としても日本発の新たな生物芸術としてのハオルシア園芸を国際的に広めていくために、さらなる優良品種の育成、発掘、普及に力を入れていく予定です。


ハオルシア連続盗難事件がNHKのニュースセブン、全国ネットで報道されます。

8月5日午後7時からのNHKニュースの中で取り上げられる予定です。

地方版ではNHK岡山で8月4日の午後6時10分からのニュースで放映されます。

またNHK静岡では8月1日午後6時10分から報道されました。

関心のある方は視聴してください。
ただし他に重大事件などがあると中止になる場合もあります。

7月5日に静岡県のハオルシア栽培場に盗みに入って捕まった田振群容疑者(29)の顔写真が入手できました。

田容疑者
 田振群容疑者(29) 静岡朝日テレビ7月7日のニュースより


この男に見覚えのある方、または関係する情報をお持ちの方は、
日本ハオルシア協会(info@haworthia.net 0533-75-6234)または
静岡県警察本部(054-271-0110)までご一報ください。

 昨年8月に起きた中島氏温室の盗難事件の犯人、鮑容疑者が4月に捕まった以降も窃盗団の活動は活発で、各地で被害や未遂事件が合い続いています。7月には2人目の犯人、田容疑者が静岡で現行犯逮捕されたのですが、この時現場から逃亡した共犯者はまだ捕まっていません。

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 このように4月以降も7件もの既遂、未遂事件が起きており、活動ペースは全く落ちていません。未遂が多くなったのは高額品を大量においてあり、効率よく盗みだせる栽培場が皆厳重な防犯対策を取ってきたので、泥棒にとって警戒が手薄でかつ高額品が集中して置いてあるような都合良い侵入先が減ってきたのが主な要因と見られます。窃盗団はおそらく新たな侵入先を物色しているのではないかと思いますから、引き続き厳重に警戒をお願いします。
 
 これまでに犯人は2人逮捕されたのですが、鮑は犯行そのものを否認しています。鮑は中島氏温室をそれまで訪れたことはないのに、鉢から指紋が検出されており、彼が犯人であることはかなり確かと思われます。犯行当日鮑に同行した共犯者(見張り役?)がいたことは判っているのですが、もちろん共犯者の名前などは自供していないようです。

 窃盗罪の場合、刑法では10年以下の懲役、または50万円以下(!!)の罰金が科せられるのですが、初犯の場合や犯行を認めて反省(弁済)している場合、あるいは被害額が少ない場合などは執行猶予となることが多いようです。

 鮑の場合、初犯のようですから犯行を認めて共犯者などを自供すれば執行猶予となる可能性が高いですが、犯行を認めず、共犯者など、捜査にも全く協力しないとなると2~3年の実刑(懲役)となる可能性が高いです。1年以上の懲役刑ですと服役後に強制送還(強制退去)となり、中国に送り返されます。

 鮑には岡山に妻子もいるのですから、普通に考えれば犯行を認めて捜査に協力し、執行猶予となる方がはるかに良いはずです。懲役刑なら強制送還になるということはおそらく弁護士などから聞いて承知していることと思いますが、それにもかかわらず否認を続けるのは何か理由があるはずです。
 
 犯行を認めて執行猶予となるより、否認を続けて服役後強制送還になった方が良い理由、それは帰国後に窃盗団のボスから大きな報酬が約束されているからに相違ありません。つまり犯行を認めずに共犯者の名前も隠し通せば、中国帰国後にかなりの報酬がもらえる約束があるからでしょう。

 一連の事件の窃盗団は別グループだとしてもおそらく互いにつながりがあり、中国にその大ボスがいると推定されます。事件の被害総額は約13億円ですから、闇オークションでたたき売ってもその半分くらいの金は手にしていることでしょう。そうであれば、実行犯には1人数百万円~1千万円程度の報酬が払えるわけです。たとえば1千万円の報酬を手にすると、中国の田舎では貨幣価値は日本の約10倍ですから、1億円をもらう勘定になります。日本の刑務所で2~3年我慢すれば1億円もらえるとなれば捕まった犯人のだれも共犯者など自供しないでしょう。したがって7月に捕まった田も黙秘を続けると思われます。

 もしそうだとすると、今後新たに犯人が捕まったとしても、すべて強制送還覚悟で否認ないし黙秘を押し通します。したがって共犯の実行犯はもちろん、下見役や日本国内の小ボス、中国の大ボスには捜査の手が及ばない可能性が高いです。窃盗団にしてみれば数百万円~1千万円の報酬を提示すれば、実行犯はいくらでも調達できます。日本の刑法は罰が軽く、刑務所は待遇が良いですから、たとえ捕まっても否認や黙秘を押し通して2~3年刑務所で我慢すれば、強制送還の後で1千万円もらえ、中国の田舎ではその後一生遊んで暮らせるわけです。

 したがって今後実行犯が捕まっても、窃盗団はいくらでも新たな実行犯を調達でき、それらに引き続き窃盗をさせるでしょう。こちらとしてはさらなる防犯対策をとって自衛することが何より大切です。

 しかし防犯対策が進めば効率的に高額商品を盗みだすのはなかなか困難になり、事件の頻度も低下すると思われます。そして2~3年後に鮑や田が刑期を終えて強制送還されるころには事件が収束している可能性があります。そうなると窃盗団の大ボスにしてみれば強制送還された彼らに今更報酬を支払う必要性はなく、鮑や田は結局ただ働きをさせられたという可能性もあります。かといって支払いを求めて裁判というわけにもいかず、腹いせにボスや大ボスの名前を捜査当局に密告する可能性もあります。

 もっともこれくらいの被害額の事件となればおそらく中国マフィアが絡んでいますから、鮑や田が中国でボス達ともめれば口封じで消されてしまう可能性もあります。結局は泣き寝入りが良いところでしょう。もっとも報酬の約束ではなく、あるいは単にしゃべったら殺す、と脅かされているのかもしれませんが、そうであれば日本にいるほうがはるかに安全ですから、強制送還を逃れるために犯行を認めるはずです。犯罪者同士の約束など何の保証もないのに、律義に否認や黙秘を続ける鮑や田がむしろ哀れです。彼らは強制送還された後で、本当に約束の報酬を手にすることができると思っているのでしょうか?

 EUやアメリカでも移民などに紛れて豊かな国で一儲けしようとする犯罪者が問題になっており、イギリスがEU離脱を決めたのもそのことが大きな理由の一つだといわれています。日本もその例の一つですが、今回のハオルシア連続窃盗事件のように、庶民の経済格差が大きいと、豊かな国で荒稼ぎし、捕まっても帰国すれば稼いだ金や報酬でその後安楽に暮らしていけるようでは、日本に来て粗稼ぎしようとする犯罪者は後を絶ちません。
中国で1億円も盗めば死刑ですが、日本では最高で10年です。これでは泥棒も日本で仕事をしたがるわけです。やはり厳罰化が必要だと思います。窃盗や詐欺で被害額が1億円以上なら死刑、それ以下なら無期懲役か50年以下の懲役というように大幅な引き上げが必要でしょう。

 また刑罰は内外無差別が国際的な標準ですが、豊かな国を狙った犯罪やテロが横行する現状から、外国人の犯罪には刑を重くする必要があるでしょう。トランプ氏が大統領候補になったのもそのような不満が大きかったからだといえます。今後は世界的に外国人犯罪に対する重罰化が進むのではないと思います。
同じような理由で刑務所の待遇も見直す必要があります。刑務所の生活が苦にならないようでは犯罪抑止効果がありません。全体的な待遇を低下させ、さらに出身国の刑務所の待遇に準じて待遇を分けるべきです。

 刑の軽さや刑務所の待遇の良さから、日本は犯罪者にとって天国のような国だといわれています。振り込め詐欺やねずみ講が後を絶たないのも、刑が軽すぎてすぐ出所でき、また同じことを繰り返す犯罪者が多数いるからです。犯罪収益を外国などに送ってうまく隠せばあとは安楽に暮らせます。これは外国人犯罪者にとっても同様です。

 したがって防犯対策や犯人逮捕の努力と同様に、あるいはそれ以上に、厳罰化または外国人犯罪に対する加重処罰への世論喚起が必要なように感じます。

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