July 2016

培養苗購入の注意

 最近はクリーンベンチやオートクレーブがなくても手軽に組織培養のできるキットが売り出され、素人でも組織培養を手掛けるようになっています。ネットオークションでも寒天培地に入ったままの有名万象などが売り出されています。また海外から輸入された斑入り品種もネットで多数売り出されています。

 これら組織培養で繁殖したものを購入する際に注意しなければならないことは、購入の時期です。組織培養で最も難しいのは、カルス化させることでも、カルスから芽条を分化させることでもなく、実は分化した苗をフラスコ内など無菌環境から外に出し、一般の栽培条件に慣らすことです(これを馴化といいます)。湿度100%、無菌状態の環境から大幅に湿度の低い、雑菌が充満している一般環境に出すのですから、この時に相当割合の個体(芽条)が腐死します。

  腐死の割合を下げるには植物体を植えた鉢を透明なプラスチック容器などに入れ、湿度の高い環境を保つことや、その中に殺菌剤などを噴霧して雑菌を減らすなどの対策が必要ですが、それ以上に大事なのは培養容器から一般環境に出す時期、季節です。夏前、5月頃から9月いっぱいは高温多湿のため、雑菌の繁殖が旺盛になり、この時期に馴化を開始すると腐死の確立が非常に高くなります。秋から冬にかけて馴化を開始するのが最も安全です。

  したがって培養苗を購入する際にも、フラスコなどから出した直後と思われる苗(未馴化苗)はこの時期を避けて購入するほうが無難です。特に高額の未馴化苗をこの期間に購入するのは危険です。大金を投じて買った苗が一か月もしないうちに腐ってしまう可能性があります。大きな苗なら大丈夫というわけでもありません。大きくても活着していない苗(根毛のある新しい根が十分出ていない苗)はこの時期に買うと根が十分出る前に腐ってしまう可能性が高いです。特に斑入りは弱いですから注意してください。

  なお、寒天培地中に出た根は根毛が全くないので、通常の培養土に植えても養分を吸収できません。したがって根毛のある新しい根が出て自分で十分養分を吸収できるようになるまでは成長しません。培養中に出た根はいずれそのまま腐死しますが、新しい根が出るまで苗を用土に固定させるには役立ちます。

  馴化は通常半年から1年、完了までには2年かかります。半年たてば根毛のある新しい根が出て活着しますが、新しい根が多数出て成長を再開するには1年くらいかかります。それまでは管理に細心の注意が必要です。1年以上たてば簡単に腐ることはなくなりますが、茎などはフラスコ内で成長したものなので組織が柔らかく、一般繁殖苗よりやや弱いです。さらに1年(馴化開始から2年)たてば茎も葉も一般環境で形成されたものに置き換わりますから、通常の葉挿し苗などの繁殖苗と同じ扱いでよいです。そのような苗(馴化済苗)は培養苗かどうかにあまりこだわる必要はないでしょう。

  ただしハオルシアの場合、培養苗はおおむねウイルスフリーとなっている可能性が高く、葉挿し苗等より成長が良い場合が多いので、販売に当たっては培養苗である旨注記するほうが親切です。 そこで、どの程度馴化した苗かを表す基準を次のように整理しました。馴化のレベルを表示することは単に培養苗(Bio苗)と表示するよりはるかに親切です。培養苗を販売する際はできるだけどのレベルの馴化苗かを表示するようにしてください。

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 販売、購入いずれの場合でも少なくとも低馴化の苗、できれば高馴化レベル以上の苗が望ましいです。容器苗や未馴化の苗を購入する際は腐死のリスクを十分考慮し、特に季節を選んでください。また培養苗の輸入株の場合、もともと少ない根を検疫のためにさらに洗って送ってくるので、馴化済のものを除き、馴化レベルを1段下げて管理する必要があります。たとえば高馴化の苗は低馴化苗として、低馴化苗は未馴化苗として扱うのが妥当です。

 また培養苗にはしばしば斑入りが出現しますが、斑入り苗はそうでないもの(無地苗)よりはるかに弱いですから、斑入りの培養苗も馴化レベルを1段下げて管理する必要があります。したがって馴化完了の場合を除き、輸入の斑入り培養苗なら両方の要因を合わせて馴化レベルを2段階下げ、すべて未馴化苗として管理するのが無難です。特に斑入り培養苗の輸入小苗を夏季(5月~9月)に購入するのは、大きな腐死リスクがあることには留意してください。

培養苗の斑入りはフラスコ内での芽条分化直後にはしばしば見られますが、成長に伴って消えてしまう場合が多いです。斑が消えてしまう確率は葉挿し繁殖の斑入り苗よりかなり高いですから、小苗の培養斑入り苗を買う場合はそのリスクも十分考慮してください。

ハオルシア泥棒 捕まる

 7月5日午後9時過ぎに静岡県のハオルシア栽培家の温室に泥棒が入り、高額品ばかり約200本、1200万円相当を盗もうとした中国人、田振群容疑者(29)が捕まりました。
1200万円は申告被害額ですが、時価ではその2倍以上の価格になると思われます。


  この栽培場は周囲に高いフェンスを張り巡らしてあったのですが、泥棒は2人組ではしごを用意してフェンスを乗り越えています。防犯カメラも設置してあったのですが、犯人は映像が記録されるのを承知の上で黒覆面です。防犯カメラはタイマーで夜11時ころから動体検知をするようになっていたのですが、ここでは人感センサーも設置してあったので、これが反応し、また防犯カメラも被害者の家族がたまたま見たところ人が写っていたということですぐに警察を呼びました。

  約10分後にパトカー4台が急行したところ、犯人たちは盗品を袋に詰め、はしごを上って逃げる寸前でした。警官が来たということで犯人たちは盗品を置いて逃走し、1人は捕まえましたが、捕まる際に相当抵抗したので取り押さえている間にもう一人は逃走してしまったということです。

  昨年8月以来各地で続発していた未遂を含む盗難事件の犯人はおおむね3人組でしたが、4月に鮑が捕まって以来、ほとんどの事件では2人組が犯行に及んでいます。今回も同じグループの犯行と思われます。ただし固定した3人というわけではなく、何人かの実行グループの内、都合に合わせて2人ないし3人組が組織されて犯行に及ぶようです。  これで2人捕まったわけですが1人は逃走中であり、まだまだ油断はできません。

 捕まったのはいずれも末端の実行犯であり、彼らに指示した中心人物や下見役の中国人の女、あるいは運び役の中国人、中国の裏サイトで盗品を売りさばく役、さらには彼らに情報提供している日本人の協力者など、一連の事件に関与した犯行グループの大半は温存されています。これらが残っている以上、また新たな実行犯を仕立てて、あるいは中国から呼び寄せて次の獲物を狙うでしょう。

  今回の事件と先月の東海地方での事件とに共通しているのは、いずれも防犯カメラのある温室に黒覆面で侵入し、映像が記録されるのを承知で犯行に及び、かつ防犯カメラに検知されて警官が駆けつけるまでの10分弱の間に高額品ばかりピンポイントで盗みだす、という手口です。今回はかろうじて間に合って1人は逮捕できたのですが、すこし郊外の栽培場ではパトカーが到着するまで15分以上、場所によっては30分近くかかります。

  したがって温室の中だけではなく、周囲にも監視カメラを設置して、侵入前に不審者を検知することが大切です。あるいは監視カメラではなく、ネット接続の人感センサーを周囲に設置することも有効です。人感センサーはカメラよりずっと安価ですし、解像度は低いですがカメラ付きや音声を出して「誰だ。お前は!」などと威嚇することもできる機種もあります。人感センサーはスマホで遠くからでもいつでも入り切りができるので便利です。

  短時間にピンポイントで高額品を盗みだすには、下見をしてどこの温室のどの棚に高額品が置いてあるかを事前によく調べて置く必要があります。一連の事件ではこの下見に来たと思われのが比較的若い中国人の女で、夫婦(男は日本人の夫らしい)または姉妹の2人連れで来ています。

  東海地方の先月の事件ではこの女が今年に入って被害者からネットで3回、計50万円ほどを買っており、その上でぜひ見学させてほしい、という依頼があったそうです。被害者は普段決して栽培場を見せないのですが、この時は上客であったので断り切れず、温室を見せたそうです。それからしばらくして被害にあっているのですが、おそらく初めから泥棒に入る準備としてネットで何回か落札して信用させ、その上で下見に成功したと思われます。

  したがってネット販売の上客でも見知らぬ人、特に中国人には絶対に栽培場を見せないことです。送り先として住所や名前がわかっていても本名や正しい住所とは限りません。また販売する際も栽培場が自宅近くの場合は友人や親せきの住所を借りるなどして窃盗団に栽培場の場所を知られないよう工夫をしてください。

  また多くの防犯カメラでは動体検知を夜10時過ぎに設定してあるのですが、今回はその裏を狙って夜9時過ぎに犯行に及んでいます。したがってより早くの時間から動体検知を開始するか、あるいは自宅モニターに常時映像を映し出すようにするなどして、監視の隙間ができないように工夫する必要があります。


  なお、今月東海地方で起きたもう1件の盗難事件ではサボテン中心の栽培場で6棟ある温室の内、1棟の1部に畳3枚分だけのハオルシアが置いてあったのですが、ここから高額品ばかり約40本が盗まれています。他の温室は全く手を付けられていません。ハオルシアの入った温室だけが狙われており、犯人はこの温室に高額ハオルシアが置いてあることをよく知っていたわけです。

  ほぼ地元の人しか知らない方ですし、見知らぬ人はまったく入れてないということです。また高額品の中には盗難を免れたものも相当数あり、どうも一連の事件とは様子が違います。今回捕まった連中の犯行なら、監視カメラがない温室ですから、おそらく根こそぎ盗んでいくのではないかという気がします。  そうすると、一連の事件の窃盗団とは別の、模倣犯、それもこの方の温室の様子をよく知っている地元関係者の疑いが出て来ます。仲間内を疑うのは気が引けますが、地元の仲間しか知らないような栽培場でも、警戒は十分に行ってください。


ハオルシア窃盗事件 公判レポート

 先週、中島氏温室への建造物侵入、窃盗容疑で捕まった鮑容疑者の公判が静岡地裁富士支部で開かれました。傍聴席には中島氏側関係者7名、鮑側?関係者らしき人が5名、来ていました。

 鮑は犯行を否認しているので、逮捕後まだ拘留されているらしく、警官2名が裁判中ずっと左右につき添っていました。恐らく保釈されることはないと思われます。人相や頭の輪郭、体格、などは犯行時の防犯カメラ映像と矛盾しないように感じました。

 検察の冒頭陳述などによると、鮑容疑者は事件前日、自分の車で富士宮に来、ホテルに泊まったり、コンビニに立ち寄ったりしています。この点は鮑容疑者も法廷で認めています。

 しかし容疑(中島氏温室への建造物侵入と、ハオルシアの窃盗)については否認しており、無実を主張しています。一方、検察は温室内の鉢から鮑容疑者の指紋が検出されたことを証拠としていますが、この点についての認否は起訴状や証拠(甲号証)がないとわかりません。(鮑容疑者の弁護士は証拠について甲XX号証否認、というだけですので、傍聴者にはどの点を否認しているかわかりません。)

 ただし鮑容疑者は中島氏温室にそれまで来たことはないので、指紋が検出されたということは同人が犯人であることの決定的証拠だと考えられます。鮑容疑者は以前出入国管理法違反で調べられたことがあり、その時(または入国時)取られた指紋が温室内の鉢から検出された指紋と一致したということです。

 また鮑容疑者の携帯電話には抜きあげた玉扇と万象の大株が並べられている写真が残されているということです。ただし顔(窓面)は写っていないので、それが盗品であるかどうかは判らないということです。

いずれにしろ、全面否認ですので、裁判は長引きそうです。

 なお、これまでの事件では多くの場合、犯人は3人組でしたが、鮑が捕まってからは2人組が犯行を重ねています。6月には群馬での未遂事件の後、1件の大量盗難事件があり、また7月にもすでに1件の盗難事件が発生しています。いずれも東海地方でハオルシアだけが盗まれています。

 詳細は追って報告しますが、窃盗団は活動を継続していますので十分警戒してください。特に事件前に下見に来ていると思われる中国人の女には要注意です。防犯上、見知らぬ人、特に外国人には絶対温室を見せないことです。

防犯対策は二重三重に厳重にしても過ぎることはありません。
過去の記事で防犯対策を色々掲載していますので、ご自身で出来る限りの対策をお勧めします。


☆コメントは承認後に公開されます。
☆品種等の質問はハオルシア協会会員に限定します。

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