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January 2015

ハオルシア研究30号について

お待たせしておりますが、ハオルシア研究30号は現在印刷中です。校正に手間取り、印刷し直しなどがあったために皆様のお手元の届くのは2月初めの予定です。申し訳ありませんがもうしばらくお待ちください。


『ハオルシア・多肉植物フェア2015』について

3月22日(日)のKFCホールannex(東京・両国)における『ハオルシア・多肉植物フェア2015』のチラシが出来ましたのでこちらに掲載します。皆様お誘いあわせの上ご参加ください。

会場となるKFCホールは第一ホテル両国と同じビルにありますので、遠方からの参加者の方はこちらへの宿泊が便利です。部屋が既に満室に近い状態ですので、宿泊予定の方は急いで予約を入れて頂いた方が良い状況です。4日前までのキャンセルは無料ですので検討中の方も予約だけは入れておいた方が良いかと思います。

また、予約される場合、るるぶやじゃらん等では満室でも、部屋の押さえ数が多いJTBですとまだ空室がある場合がありますのでご参考に。

多数の皆様のご参加をお待ちしております。

明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

 

昨年は国際園芸学会からハオルシアの国際栽培品種登録機関に指定されるという、大きな出来事がありました。世界にはランやバラなど70余の園芸植物群について、その品種名を世界的に統一するための中心機関として国際栽培品種登録機関が指定されていますが、日本の組織がこれに指定されたのは日本では初めてです。

その組織が品種名登録活動を停止したり、解散したりしない限り、指定はほぼ半永久的ですから、これにより、今後とも日本がハオルシア園芸の世界的中心であることが確立されることになります。

 

加えて昨年は名古屋議定書が発効し(日本は批准準備中)、農園芸品種を含む遺伝資源の利用とその利用から生じる利益の配分に世界的なルールが確立されました。

ただし、その基本ルールは名古屋議定書ではなく、1993年発効の生物多様性条約(CBD)によって既に確立されています(日本初め世界193カ国が批准。ただしアメリカは未批准)。つまり名古屋議定書の批准を待たなくても、すでにCBDによって遺伝資源を勝手に使ってはいけないことが国際的に定められているわけです。

この基本ルールはまだ世界的に適用例が少なく、具体的取り扱いは今後様々な事例により確立されていくものと思われますが、基本ルールが20年以上前に確立されていることは十分認識する必要があります。

 

さて、お待たせしておりますハオルシア研究30号ですが、まもなく発行の予定です。今月半ば過ぎにはお手元に届けられると思います。品評会の優秀作品のほか、最近大人気のオブツーサ類について新しい分類や品種を紹介しています。

 

昨年のハオルシアフェアスタ(2014)で、新規に入会申し込みをされた方の内、連絡先のわからない方が数名いらっしゃいます。事務局よりまったく連絡がない方は記録漏れの可能性がありますので、至急事務局(info@haworthia.net またはFAX0533-75-6234)までご連絡ください。

 

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文章ばかりでは面白くありませんから、写真付きでニュースを一つご紹介します。


H. 'Gintsuno' D=8
 Photo_1 H. 'Gintsuno' D=8

‘銀角’(photo_)はいわゆるAstrolobaの最大型で、かつ最美種です。この植物は50年以上前に平尾博氏が南アフリカから輸入したもので、全く未繁殖であったものを林が胴切りして譲ってもらったものです。その後何人かの人の手に渡り、名前も‘銀角’(ぎんつの)と命名されて多少普及しましたが、成長は非常に遅く、胴切りしても仔は1本か2本出るだけと言う状態ですから、まだまだ希少種です。加えて近縁のマキシマグループを合わせても最美種の一つであることは間違いないので、もし今新しく新種として輸入されたなら、‘天使の涙’クラス(以上?)の価格になったであろうと推定できます。

H. hallii type KG280-69(MH81-120) D=6.5
 Photo_2 H. (Astroloba) hallii  type KG380-69 (MH81-120) D=6.5

H. hallii  Koup MH 03-307-1  D=5
 Photo_3 H. hallii Koup MH03-307-1

H. hallii  Koup
 Photo_4 H. hallii Koup

 

さてそんな大型美種ですが、これまでは産地が判らず、また世界のどこのコレクションにもない植物なので、おそらくH.Astrolobahallii の自然雑種ではないかと推定されていました。H. hallii は‘銀角’を除くといわゆるアストロロバの最大型で、ブルラータより若干大きめです。photo_2H. halliiのタイプ植物(Reineckeの)ですが、これは白肌有白点の特異個体で、タイプ産地(Koup)の一般的なH. halliiphoto_34の通りです。


H. hallii Vleiland 1
 Photo_5 H. hallii Vleiland 1

H. halliiの産地はこれまでタイプ産地(Koup)しか知られていませんでしたが、昨年初めにそこから約30km南西のVleilandで第2の産地が見つかりました(photo_)。この産地のニュースは初め、これが‘銀角’の産地かと期待されたのですが、実物や写真でそれよりかなり小さな植物のH. halliiであることが判明した次第です。


Astroloba marxii wild 1

 Photo_6 Astroloba marxii wild 1

Astroloba marxii nn
 Astroloba marxii nn

ところが昨年秋にde Vreiesから非常に大きなアストロロバが見つかったと連絡があり、写真を心待ちにしていたところ、暮れになって写真が届きました。それがphoto_67で、まぎれもなく‘銀角’と同種だと判断されます。特にphoto_7の右側の個体は青白い肌色と言い、白い大きな結節と言い、‘銀角’そっくりです。この植物はMarxによって発見されたので、現地ではAstroloba marxiiと呼ばれています。

いわゆるAstrorobaは通常、藪の中に藪の枝と絡まって生え、花だけが藪の外に出ることが多いです。枝が藪の外まで伸びると動物に食べられて芯どめされるためです。したがって特異個体があったとしてもその個体がよほど小さな株でない限り、その個体全部が掘り取られてしまうことはほとんどないと見て良いです。この産地にはいくつか白肌の別個体がありますから、‘銀角’もこれら白肌個体のうちのどれか一つである可能性が高いでしょう。

 

なお、Astrolobaを「いわゆる」と表記するのは、この仲間は明らかにMaximaグループの子孫であると見ているからです。要するにMaxima類の長茎型に過ぎないと言うわけです(H. attenuata類に対するH. coarctata-reinwardtii 類と同じ関係)。だとすると、分類群の末端グループだけを切り離して別属にするというのはまったく系統分類に反します。

花弁の先端が2唇形か放射形かは単に花弁の先端が長いかどうかの違いによるものです。Astrolobaの場合は花筒の裂開部から先が短いために2唇形になっていないと言うだけのことで、Astrolobaのその他の花の特徴はまったくMaximaグループと同じです。花の特徴であれ、栄養体の特徴であれ、単に基準を作って(選んで)区分するのではなく、そのグループがどのグループから進化してきたのか注意しないと分類を誤ることになります。


Dr. M. Hayashi



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