日本ハオルシア協会 Official Blog

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January 2014

会報の発行について「不定期すぎて会費の納入が不安」というご意見が寄せられましたので、協会にて協議致しましたのでお知らせします。

まず、現状の内容とレベルを維持してきちんと定期的に会誌を発行するのは、現在の体制では無理だという点はご了解いただきたいと思います。

しかし定期的に発行することを優先して内容やレベルを下げて、あるいは必ずしも正確でないデータのまま(もしくはデータなし)で会誌を発行することは、おそらく殆どの会員の方は望んではいらっしゃらないでしょう。
大部分の会員の方は定期的に発行されることより、内容の充実した正確な記事を望まれているのであろうと理解しています。

かといってあまりに不定期だと、上記のようなご不安を感じられる方もいらっしゃるかと思います。
その為、協議した結果、会誌の発行と会費について次のように決定致しました。

1)年間会費 ¥5,000.-(現状と同じです)

年会費としてお支払いただいていた会費を、普通号の会誌2冊(2号)予約分として扱うことにします。
(品種名総覧や写真集などは特別号となり、この扱いに含まれません)

2)これに伴い、会誌の販売価格(購読価格)を変更します。

・1冊のみ : 1冊¥3,000.-(予約、既刊に関わらず)
・2冊以上 : 1冊¥2,500.-(同上)
・10冊以上 : 1冊¥2,000.-(バックナンバー等のまとめ買い)

3)発行が不定期なので予約で払うのは不安だと言う方は、発行後に1冊ずつご注文ください。

継続会員の方で会費切れの方は次号発行の際に会費納入の督促が1回だけ行きますので、それからお支払いいただいても結構です。
督促にもかかわらず次次号発行までに会費納入いただけなかった会員には2回目の督促は行わず、退会扱いとなります。

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次号、29号は今のところ2月末発行予定です。

会報の発行はおおむね年2冊の予定ですが、これは目安となります。
品種名総覧の場合や、これから予定されている写真集などの特別号が入ると発行スケジュールは大幅に変更される可能性が大です。


なお、編集の負担を減らすために、取材を手伝っていただける方を募集しています。
内容は各地の会員、特に新規会員の栽培場を訪問して、自慢の作品や育成途上の有望そうな新品種などの写真を撮り、紹介していただくことです。自薦他薦を問わず、ご一報いただけるとありがたいです。


(編集者註:記事容量が大きいため3つに分割しました、1/3から順番にお読みください)



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table3-blackbeardiana
(図表はクリックすると拡大します)

 まずこれらの生育地をQueenstownWhittleseaCathcartKei River流域地方に分け、それぞれにどの種が生育するかを整理しました。H. blackbeardianaはこれらほとんどの地域に生育していますが、鋸歯が多いことでH. specksiiH. aqueaH. speciosaと区別できます。H. malvinaは他のすべての種と赤い葉色で区別できます。H. streamaH. stoniiKei River流域の種ですが、Kei River周辺及びその東側(Tsomoなど)はほとんど調べられていないので、この地方にはおそらく他にも多数の種が存在しているだろうと考えられます。H. blackbeardianaとは窓の大きさや透明度、葉脈の状態などで区別されます。

 Breuerはこれらの地方の鋸歯の少ない型はほとんどをH. specksiiとしています。しかしWhittlesea地方の少鋸歯植物はQueenstown地方のものに比べより深緑色で、水羊羹様の独特の窓をしている個体が多いです。これをH. aquea n.n.(水の)としましたが、おそらく同様の窓を持つH. riponsの子孫と見られます。しかしRipon地方とWhittlesea地方とは100 kmも離れており、もしこの形質がそれぞれ独立に出現したのでなければ中間地域に未発見種があるだろうと予想されます。

 問題はH. specksiiQueenstown地方とCathcart地方(Thomas River流域)とに生育しているのですが、両地域の群落に明瞭な差はないようです。群落数が多いので両地域で遺伝子プールを共有している可能性もありますが、何か見落としている差異があるかも知れません。とりあえず同一種にしましたがもう少し調査が必要に感じます。

 なお、H. specksiiExoticaの主人、Ernst Speck氏にちなむ名前です。Breuer氏は当初H. ernstiiと言う名を考えていたのですが、私が“Ernst”Kirstenbosch植物園のErnst Jaarsveld氏と混同される危険性を指摘して、H. specksiiとなったものです。

 全部は載せきれませんが、いくつかを地図上に表示すると次のようになります。各系統別だと良いのですが、時間がないのでとりあえずこれで位置関係を確認してください。



table4-blackbeardiana

table6


Dr. M. Hayashi









(編集者註:記事容量が大きいため3つに分割しました、1/3から順番にお読みください)



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table2-blackbeardiana
(図表はクリックすると拡大します)

 H. specksiiは当初H. blackbeardianaが無毛か少毛になった種だと考えられていましたが、後者に比べて葉色が濃く、窓は大きくて非常に透明です。特にWhittlesea地方の群落に見られる水羊羹のような、やや濃い緑色の非常に透明な窓は特異的な特徴で、この特徴はH. calaensisH. albans n.n. (St. Alban’s)とも共通します。


 H. blackbeardianaなど、H. teneraの子孫はみな白緑色肌で窓は半透明(濁っている)なのが共通の特徴です。したがってH. specksiiはどうもTenera complex(テネラ複合群、H. teneraの子孫群)の種ではないのではないか、という疑問が生じます。

 そこでこのような特徴の窓の植物を探すと、Riponの通称H. pringleiの中にこのような特徴の大きな窓を持つ植物が多数見つかります。H. pringleiは小型のH. blackbeardianaと言った感じの種で、肌色も窓の大きさもRiponの植物とはまったく異なります。したがってRipon周辺に多数あるこれらの群落をH. ripons n.n.としてこの仲間を整理すると前の図のようになります。これらはみなH. lapisの子孫で、Zuurbergの東~北側に展開したグループですが、今回はH. blackbeardianaH. specksiiに関係するものだけ解説します。

 H. riponsZuurbergの同様な窓を持つやや小型の植物(H. nubila n.n.H. indica n.n.)が平地に展開した種と見られ、さまざまな形質の群落が数百メートル間隔で点在しています。窓は平均して大きく、白緑色から濃緑色まで多様ですが、透明感はかなり強いです。

 またMBB 6557W Ripon)はH. obtusaに非常に良く似ていますが、この番号の植物を輸入(Sheilam、おそらくBayerの実生)しても他のRipon産植物とあまり違いません。同様の例はMBB 6922H. indica, Zuurberg)でも見られ、Sheilamから輸入した植物はUpdate-1:55に掲載された様な形態の植物にはなりません。産地では厳しい環境なのでUpdate写真のように詰まった形態になるのではないかと考えています。

H. hisuiH. obtusaH. riponsが浸透交雑した種と見られ、葉色はやや薄いですが、透明感の非常に強い大きな窓を持っています。これにH. hastataが遺伝子浸透したと見られるのがH. aoebis n.n.(青恵比寿)H. rufa n.n.(赤い)で、極めて美しい植物です。ただH. aoebisH. hisuiの特異個体なのか、H. hisuiとは別の群落として存在するのか、疑問なので確認中です。

さて、問題のH. blackbeardianaH. specksiiですが、これを次の表のように整理しました。表中の数字はBreuer氏の採集番号です。私の判定ですのでBreuer氏の判定 (The Genus HaworthiaBook 2)とは若干違いますが、参考にしてください。

また、この稿の図や表に出てくる未記載種の名前は私が便宜的に付けたものです。参照した標本の多くはBreuer氏のものですから、命名権は彼にあります。したがって彼が既に別の名前を用意しているとか、私の名前が気に入らないなどの場合は今後変更されることもあります。しかしこれまでのところ、Breuer氏は多くの種で私が提案した名前を採用してくれていますので、あまり多くの変更はないだろうと楽観的に見ています。


なお、この稿中のBreuer氏の採集番号の写真は基本的にBreuer氏が撮影したものです。同氏から使用許可を得て掲載しています。



(編集者註:記事容量が大きいため3つに分割しました)



(編集者註:記事容量が大きいため3つに分割しました、1/3から順番にお読みください)


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 昨年秋にH. blackbeardianaH. specksiiとの違いについて質問があり、私も気になっていたので調べてみました。思った以上に錯綜した仲間だったので、時間がかかりましたが、以下のように整理しました。

 

 まず最初に説明しておかなければならない点は、ハオルシアの花粉媒介昆虫のことです。最近この問題を現地で精力的に調べている若手研究者のGrenier氏によれば、ハオルシアの主な花粉媒介昆虫はミツバチではなく、beeflyと呼ばれているハチに良く似たハエだということです。このハエは私もハオルシアの群落で良く見かけましたし、一方でミツバチはあまり見かけませんでしたから、Grenier氏の指摘はおそらく正しいでしょう。

 ミツバチは花粉媒介昆虫の中では最も飛翔力が高く、その活動範囲は巣を中心に直径8 kmと言われています。これに対し他のアブやハエの活動範囲は直径1km以下とされています。しかし巣に戻る必要がないので、風に流されれば数kmは移動するでしょう。日本でも標識を付けた小型のチョウが10 km先で再捕獲されたという記録があるということなので、これらの小型昆虫は最大10 km程度は移動すると見て良いでしょう。

 ただしこれらの小型昆虫が10 km離れた2つのハオルシア群落の花粉を頻繁に媒介(交換)するわけではありません。あるハオルシア群落の花粉を付けた小型昆虫が風に流されて、途中他の植物のどの花にも停まらずに10 km先のハオルシア群落にその花粉を運ぶ確率は極めて低いでしょう。また仮にそのようなことがあったとしても、その程度の頻度では遺伝子の頻繁な交換、すなわち遺伝子プールがその2つの群落間にあるとは言えません。

 このような現象は浸透交雑の原因にはなりますが、種の同一性保持(遺伝子プールの共有)には役立ちません。したがってbeeflyなど、ミツバチ以外の小型昆虫が頻繁に花粉媒介できる範囲はせいぜい数kmの範囲と考えてよさそうです。

 同じことは種子散布でも言えます。ハオルシアの種子は軽いので強風に乗れば10 km以上移動すると考えられます。しかし10 km以上離れた2つの群落が遺伝子プールを共有していると言えるほど頻繁にそのような事象がおこることはないでしょう。

 つまりハオルシアの場合、途中に同種の群落がなければ、ある種の地理的な範囲(頻繁な遺伝子交換が可能な範囲)はおおむね直径数km以下と考えて良いということです。

  またもう一点、私の分類では産地間に数km以上距離があり、群落間に形態上差が認められる場合は、とりあえず別種として名前を付けると言うのが基本方針です。その後中間的群落が見つかったり近隣の種と連続的であることが分かった結果、近隣種と同一種であると訂正されることはあり得ますが、まずは名前がなければ議論に不便です。産地名と採集番号で議論するのは全く煩雑ですし、もし後に同一種だとなっても、その名前は群落を区別したり、品種名として使うことが出来ます。便利さも分類学の重要な要素です。

 さてH. blackbeardianaグループの場合、Cradockの南からAliwal NorthQueenstown北方)までおおよそ150 kmに渡り分布しており、これらの範囲すべてで数kmごとに同類の群落があるとは考えられません。そこには当然複数の遺伝子交換可能な群落の集合=種が存在すると見られます。

 一方で、この地域には質問にもあったH. blackbeardianaH. specksiiのように、形質がかなり異なった種もあり、これらが同じ系統の種なのかという疑問もありました。

 そこでこれまでH. blackbeardianaH. specksiiとされてきた群落を中心に、系統を大きく整理すると、次の図のようになります(赤字は未記載種)。まずH. teneraの系統です。




table1-blackbeardiana
(図表はクリックすると拡大します)



H. blackbeardianaH. teneraからH. pringleiH. vittataを経て内陸で大型化した種で、この仲間は軟質な葉と鋸歯、薄緑~黄緑の葉、不透明で濁った小さな窓などが共通です。窓の葉脈は表皮の延長で、ガラス質の中に沈み込みません。

 近縁の系統には、H. blackbeardianaLapis系の紫色を帯びた種群(H. sabrina n.n. Kommadaggaなど)が浸透したViolacea系があります。Cathcartの東の紫味を帯びた群落はすべてH. malvina n.n.です。しかしH. malvinaはその祖先と見られるH. violaceaCradockの南)やH. turcosaSheldonの東)からは100km以上離れており、おそらくこの間にはこの系統の未発見種が複数あると予想されます。なおH. innocens n.n.  Tafelberg, MiddelburgH. malvinaとは別方向へ分岐した種と見られます。


(編集者註:記事容量が大きいため3つに分割しました)


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