ヤフオクなどネットオークションで個人でも簡単に植物の売買が出来るようになってきたことは、園芸文化の活発化にとって非常に画期的な出来事と言えます。今後ますますネットオークションの利用が拡大し、良い商品が手ごろな価格で入手できるように、あるいは貴重な繁殖品を適正価格で販売できるようになることを期待しています。

 ネットオークションの拡大につれ、第四種郵便の利用が広がっていますが、郵便局でもこれまであまり利用されていなかった郵便物ですので、若干のトラブルがあるようです。

 まず、郵便局窓口で、「第四種郵便の利用には認可が必要です。」と言って断られた例があるようです。これは完全に郵便局の勘違いで、通信教育や学術刊行物などは認定や指定が必要ですが、植物の種子や苗などを第四種郵便物で差し出す時は何の認定もいりません。

 次に「中身を確認できないと第四種郵便として引き受けられません。」と断られる例があります。これは郵便局によっても認定基準が違っていて、地方の郵便局で第四種郵便の扱いに慣れている局では、開口部から中の包装が見え、植物だと認定できれば引き受けるところから、東京や横浜など都市部で第四種郵便の扱いがほとんどない地域では植物体そのものが見えないとだめだという局まであります。

 内国郵便約款は郵便の取り扱いに関するもっとも基本的な規定で、第四種郵便は開封とし、開封とは「内装および外装の納入口またはこれに相当する部分の全部または大部分を開いてあるもので、郵便物の種類の認定が容易にできるもの」(10(2)) としています。つまり「郵便物の種類の認定が容易にできる」かどうかの判断が局によって違うというわけです。

 したがって確実に引き受けてもらうためには

(1)苗の大部分が露出した状態で包装し(根だけちり紙などで包み、葉などは大部分露出状態で箱の中に入れる)、開口部から葉などが見えるようにする、

(2)包装紙を透明、または半透明の包装材(通気性のある不織布の防寒材等)にし、開口部からそれが見えるようにする、

(3)封をしないで郵便局の窓口にもっていき、そこで中身を確認してもらって封をして差し出す、等の方法が考えられます。

ただし(3)の扱いは郵便約款には規定がないので、郵便局側の判断になります(約款に入れるよう要望を出してあります)


 また開口部は中身が確認できる程度となりますが、開口部が大きい場合、そこを透明テープなど内部を透視できるものでふさがないと郵送中に中身がこぼれる恐れがあります。小さな窓でもそこから植物の葉などが見えるならば、「郵便物の種類の認定が容易にできる」わけですが、窓はある程度の大きさが必要でしょう。

 

 もっとも、小さな苗なら厚さ2cm以下の丈夫な菓子箱などに入れてヤマト運輸のメール便で送った方が安くて確実です。メール便ははがき以上の大きさでA4以下のサイズなら厚さ2㎝まで160円で送れます。開封にする必要もありません。差し出したという証拠も追跡番号もありますから後で述べるトラブルの心配もありません(補償はありませんが)

 ただしメール便は厚くて重い本やカタログなどと一緒に輸送されるので、輸送中に箱がつぶれて植物が傷む恐れがあります。植物の郵送トラブルで一番多いのがこれですから、メール便などを利用する場合、植物を入れる箱はかなり丈夫なものが必要です。

 

 第四種郵便の利用でもっとも懸念されるのは利用者間のトラブルです。小規模な出品者の場合、取引相手は同じ趣味仲間で顔見知りと言う場合が多いのでしょうが、今後ハオルシア人気が高まると、知らない不特定の相手との取引も増えてくるでしょう。そのような場合、世の中善人ばかりとは限りませんから、実際は商品が届いているのに受け取ってない、として返金を迫られるケースもあり得ます。いわば一種の取り込み詐欺ですが、第四種郵便は発送の記録が残らないので高額商品の場合は特に注意が必要です。


ヤフオクで高額商品を第4種便のみで発送しているベテランさん(venustaさんやエレミヤさんではありません)にこの危険性を指摘したところ、余計な御世話だという返事がきました。いわく、

「第1にヤフオクでは評価に“悪い”が付いている人とついていない人とは明確に分かれる。一度でももめたことがある人だと他でももめごとを起こしていることが多いのですぐわかるから、そういう人は拒否をすれば良い。第2に発送は第4種便のみ、ノークレームという条件を明記してあるので、こちらがクレームをつけられることはない。第3にもし相手が詐欺ならヤフー経由で警察が動くであろうから心配はない。

ヤフオクは個人同士の信用取引なのでハオルシア協会がそれについて介入すべきではない。余計な御世話だ。」


 まあ、確かに余計なお世話かも知れませんが、ヤフーに限らず、オークション取引がより安全快適に行われよう注意喚起するのも協会の役割だと考えていますので、まことに老婆心ながら問題点を次に。

 まず第一に指摘しなければならないことは、商品を第四種郵便で送って相手に着かない、というトラブルの場合、評価に“悪い”を付けられる可能性があるのは出品者であり、落札者にはまったく"悪い“評価は付けられない、ということです。商品が着かないと言ってきた落札者に出品者が "悪い”評価を付けられる理由がありません。そんなことをすればそれこそ「名誉棄損」になってしまいます。したがって例え相手が不着トラブルの常習者であったとしても、その人にはまったく“悪い”評価がついていないことは大いにあり得ます。


第二に、「ノークレーム」を明記してあるからと言って不着クレームをつっぱねて済ますことは困難です。特に発送条件を第四種郵便のみ、と指示してある場合や、特定記録を付けたいという希望を断った場合などは、不着事故の際は出品者が全面的に補償しなければなりません。

したがって単に「ノークレームで、」とするのではなく、「第四種郵便で発送の場合、不着事故が起きても補償はありませんので、確実な郵送をご希望の方は特定記録(160)を、補償も付けたい方は簡易書留(+300円)を付けてください。」等と明確に表示しておけば、その選択は落札者の自己責任ですから不着の場合でも出品者は責任を問われません。

つまり私が危惧するのは単に「第四種郵便は補償がありません」とするだけでは、郵便局の制度として補償がないことを言うだけで、発送者の責任もないことにはならない、ということです。選択肢とセットでそう言えば、おそらく責任は選択した側、つまり落札者になりますので、発送側の責任は免れると見ています。法律論で面倒ですが、重要な点ではないかと考えています。

 

 

 第三に、詐欺の立証は大変難しいです。事実関係は明らかでも「だます意図はない」、「たまたま不着事故が重なった」という主張を覆すことが出来なければ立件できません。これはかなり難しいことです。相手を「だます」という意図のあったことが証明されなければ詐欺罪にはならないのです。不着クレームが多いからと言ってその人に対し警察が捜査に乗り出すことなどまずないでしょう。不着クレームをつける人は基本的にはあくまで不着事故の“被害者”なのです。

  

 と言う次第で、第四種郵便を利用する場合、一定額以上の商品を送る場合は特定記録を付けることをお勧めします。特定記録は郵便の引き受けを記録するもので、料金は一律160円です。補償は付きませんが、差し出したことは証明できるので不着事故があってもこちらの責任は問われません。つまり商品が届かないというクレームがあっても、発送したという証明があるので、後は郵便局の責任と言うことになります。もちろん返金や代品を送る必要はなく、評価に“悪い”を付けられる心配もありません。追跡番号もつきますから、相手に配達されたかどうかもネットで確認できます。

 

 特定記録は送ってもらう側(落札者)が商品が確実に届くよう依頼するものだと思っている方が多いようですが、そうではなく、反対に送る側(出品者)が確かに商品を発送したという証拠を残すためのものです。特に高額商品を発送する場合には重要になります。しかもその料金は送料の一部として落札者が負担してくれるのですから、利用しない手はありません。

 

 特定記録(書留も)は郵便局の窓口で、「特定記録を付けてください」と言えば、すぐ付けてもらえます。包装に特別な仕様はありません。簡単に利用でき、かつ確実に送れますから4種便で一定額以上の商品を送るときには積極的に利用することをお勧めします。なお定型外郵便物で送る場合も発送の記録が残りませんから、同じ理由で特定記録を付けることをお勧めします。

 ただし低額商品の場合、特定記録を付けると送料が割高になってしまうので、例えば5千円以上の商品の場合にはつける、といった基準を作ると良いかもしれません。


反対に何万円もするような高額商品の場合、特定記録では補償が付かないので、万一不着事故が起こると落札者は損害を誰にも補償してもらえないことになります(出品者は発送したことが証明されるので責任を問えない)。したがって高額商品の場合は特定記録ではなく、補償の付く書留や簡易書留(5万円以下商品の場合)の利用をお勧めします。もっとも特定記録や書留など、記録付郵便物の不着事故はめったに起こりませんが。